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アメリカ住宅市場は「遠く」「遅く」買う時代へ

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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。

今日は、NAR(全米不動産協会)の最新レポートから見えてくる

「いまのアメリカ人は何を優先して家を買っているのか」

について触れておきたいと思います。

かつて不動産の王道といえば「location, location, location」でした。

その中でも「職場への近さ」は絶対条件だったはずですが、いま、その常識が大きく揺らいでいます。

NARの最新データによると、仕事に近いことを重視した買い手はなんと31%にまで低下しています。

10年前は52%だったので、まさに半減です。

これは単なる働き方の変化だけでは説明できません。

そこには、アメリカの住宅市場が高齢化し、ライフスタイル優先へと変化している深い背景があると考えられています。

購入者の年齢

まず、買い手の年齢が過去最高に上がっています。

買い手の中央値は59歳。

初めて家を買う人でも40歳。

1980年代は20代後半が普通だったことを考えると、まさに「遅咲きの住宅購入」が当たり前になりました。 

年齢が上がるほど、手元の資金力は増えます。

長年の価格上昇で築いたエクイティ、そしてまとまった頭金。

現金購入が30%、頭金23%というデータはその象徴です。

資金に余裕があるからこそ、

「職場が近いよりも、家族や友人に近いほうがいい」

「自然豊かな場所で暮らしたい」

という選択がしやすくなるわけです。

子供世帯の激減

また、家に子どもがいる世帯が激減しています。

18歳未満の子どもを持つ買い手はわずか24%。

10年前は35%でした。

出生率の低下、子育て費用の高騰、結婚の遅れ。

こうした社会的背景が、住宅の選び方に直結しています。

マルチジェネレーションの増加

その一方、マルチジェネレーション(多世代同居)は14%に増えました。

介護のためが41%、生活費の節約が29%。

アメリカでも日本と同じように、家族の形が変わっていることがよく分かります。

売り手の高齢化

さらに、売り手も高齢化しています。

平均11年住んでから売却するというデータは、かつての5年で住み替え文化とはまったく違う流れです。

長く住み、売るときはエクイティを大きく抱えた状態。

だからこそ、「もっと新しい家に」「もう少し広い家に」というアップグレードがしやすい。

実際、50%の売り手はより新しい家に買い替え、3分の1はサイズアップしています。

。。。

結果として、市場は現金やエクイティのある世代に有利に働き、若い世代は依然として参入しづらい状況が続きます。

これがNARが指摘する二つの世界です。

すでに家を持つ人たちと、まだ持てない若い世代の格差が広がるという構図。

ただしここに希望の光もありし、初めて家を買った人の34%が「non-White」と回答しました。

一方、リピート購入者で非白人の割合はわずか15%。

つまり、住宅市場の多様性は新規参入層から進んでいる、という前向きなデータも出ています。

こうしたNAR 2025のレポート全体を一言でまとめるなら、「成熟した市場」です。

買い手は年齢が高く、家族構成は多様化し、人生のタイミングよりもライフスタイルを軸にした選び方へ。

従来の「スターターホーム → ファミリーホーム → ダウンサイジング」という一本道ではなくなり、買い手ごとに物語がまったく異なります。

不動産投資家として大切なのは、この変化をしっかりと読み取ることです。

顧客の人生の段階を読むのではなく、「その人がどんな暮らしを望んでいるのか」を深く理解すること。

ここが、これからの投資家に求められる新しい資質になります。

そして、政策面では大きな課題も残ります。

平均40歳で初めて家を買うという社会は、資産形成のスタートが10年遅れる社会です。

その影響は、一世代先まで長く響きます。

アメリカの住宅政策は、まさに転換期を迎えているわけです。

このように見ていくと、アメリカの不動産市場は遠くへ買う時代、遅く買う時代に突入しました。

職場の近さだけでは語れない、まったく新しい住宅選びの潮流がここからさらに進んでいきそうです。

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