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「値下げ」が当たり前になった春の市場

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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。

アメリカでは春が住宅売買のピークシーズンです。

花が咲き始めると同時に、For Saleの看板もあちこちに立ち始める。

2026年の春も、その点は例年と変わりません。

けれども今年の春には、ここ数年とは明らかに違う空気が流れています。

それは、「売り手は出てきているのに、買い手がなかなか動かない」という構図です。

数字を見てみましょう。

2026年3月中旬時点で、新規売出し物件数(New Listings)は前年比で約10%増えています。

売りたい人は確実に増えている。

そして市場全体のActive Inventory(売出し中の物件数)も前年比で約5.6%増加しています。

ところが、これらの物件がすぐに売れているかというと、そうではありません。

在庫が増えている理由は、新しい売り手が大量に現れたからではなく、出した物件がなかなか売れずに市場に滞留しているからなのです。

ここに、今の市場を象徴するキーワードがあります。

Price Reduction(価格引き下げ)です。

多くの市場で、売り手が当初の売出し価格を途中で下げるケースが目立つようになっています。

Redfin社は2026年の住宅市場を「The Great Housing Reset(住宅市場の大リセット)」と呼んでいます。

パンデミック期に急騰した価格、それを追いかけるように上昇した金利、そして身動きが取れなくなった売り手と買い手。

その膠着状態が、ようやく動き始めたという見方です。

現在のモーゲージ金利は30年固定で約6.2%前後。

昨年の春が6.8%近辺だったことを考えると、半年で約0.6ポイント下がった計算になります。

とはいえ、この水準でAffordability(住宅取得のしやすさ)が劇的に改善したかというと、そこまでではありません。

中古住宅の中央値は約41万9,000ドル。

金利が多少下がっても、価格自体が高止まりしているため、月々の支払いはまだ重い。

そうすると買い手は慎重にならざるを得ず、売り手はPrice Reductionで歩み寄るしかなくなります。

ここで投資の視点から考えてみます。

実は、こういう「売り手が焦り始めた局面」こそ、交渉力を持つ買い手にとっては好機になり得ます。

Seller Concession(売り手からの譲歩)を引き出しやすくなるのも、こうした時期の特徴です。

クロージングコストの一部負担を求めたり、修繕費用の交渉をしたり。

2021年から2022年にかけての過熱期には考えられなかったことが、今は普通にテーブルの上に乗る。

全米200の主要市場のうち、66の市場ではパンデミック前(2019年)の在庫水準を超えたという分析もあります。

特に南部やマウンテンウエスト地域、いわゆるパンデミック期の「ブームタウン」でその傾向が顕著です。

フロリダ、テキサス、アリゾナといった州では、供給が需要を上回り始めています。

けれども注意も必要です。

Price Reductionが増えているからといって、「暴落の始まり」と読むのは早計です。

全米の住宅価格は前年比でほぼ横ばいであり、下落しているわけではありません。

値下げが増えているのは、売り手の「期待値」が市場の現実に追いついていなかったことの修正にすぎません。

いわば、パンデミック以降のPrice Correctionが静かに進んでいるのです。

J.P. Morgan Global Researchも2026年の住宅価格上昇率をほぼ0%と予測しています。

「上がりもしないし、大きくは下がりもしない」

という踊り場のような時期。

こういう局面では、マクロの数字に一喜一憂するよりも、個別の物件レベルで「この売り手は本当に売りたいのか」を見極める力が求められます。

Days on Market(市場滞在日数)が長い物件、Price Reductionを複数回行っている物件。

そうしたシグナルを丁寧に読み取ることが、この春の市場では特に大切になるように思います。

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