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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
ピーター・ドラッカーの著作の中に、こんな主旨の言葉があります。
「深刻な過ちは、間違った答えを出すことによって起こるのではない。本当に危険なのは、間違った問いを立てることだ。」
経営学の文脈で語られることの多い言葉ですが、これを不動産のコンサルティング現場に置き換えてみると、驚くほどそのまま当てはまります。
クライアントとの最初の面談で、こんな言葉から始まることがよくあります。
「利回りが一番いい物件を探したいんです。」
「今、どの市場が熱いですか?」
どれもごもっともな問いです。
けれどもこうした問いに、すぐに答えを返すことが本当に誠実なコンサルティングかどうか、長年考えてきました。
「問い」の背後にあるもの
先日、東海岸のある都市への投資を検討しているクライアントと話す機会がありました。
「キャップレートが高い物件を教えてほしい」というのが、最初のご要望でした。
Cap Rate(キャップレート)とは、物件の純収益を価格で割ったもので、収益性を測る基本的な指標です。
確かに重要な数字ではあります。
けれども面談を進めていくうちに、話は少しずつ違う方向に動いていきました。
数字の話が一段落したころ、その方がふとこう言ったのです。
「実は最近、子供が生まれたんです。」
それが、すべての出発点でした。
老後のための資産形成、子供の教育費、何かあったときの備え。
「高いキャップレートを探してほしい」という問いの背後には、「家族の将来を守りたい」という、はるかに深い動機が眠っていたのです。
問いを変えると、評価軸が変わる
最初の問いにそのまま答えるなら、Cap Rateが6%や7%を超える物件を並べればいいでしょう。
けれども本当の問いに答えるなら、話が変わります。
キャップレートが高い物件は、多くの場合、それなりのリスクを抱えています。
エリアの成長性が低い、管理の手がかかる、入居者の入れ替わりが多い。
長期的な資産の安定と家族の安心を求めているなら、むしろキャップレートは控えめでも、立地が堅固で需要が安定しているマーケットの物件のほうが、目的に沿っている場合が多い。
「利回り最大化」と「資産の安定」は、似て見えて、実は違う方向を向いていることがあります。
ドラッカーの言葉を借りれば、キャップレートの高低という「答え」を議論する前に、「何のための投資なのか」という「問い」を正確に立てなければ、どれほど精緻な分析をしても、本質から外れた結論に向かってしまうのです。
コンサルタントの仕事は、「問いを立てる」こと
この仕事を続けていて気づいたことがあります。
クライアントが持ち込む「問い」の多くは、実は表層の問いです。
「どの物件を買えばいいか」という問いの下には、「何を実現したいのか」という問いがある。
「今が買い時か」という問いの下には、「自分にとって、いつが正しいタイミングか」という問いがある。
コンサルタントの役割は、答えを提供することだけではありません。
むしろクライアント自身が本当に立てるべき問いを、一緒に見つけていくことが、仕事の核心だと思っています。
表層の問いに答えることは、技術があれば誰でもできます。
けれども「正しい問いを立てる」ことは、その人を深く知り、時間をかけて信頼を積み上げた先にしか、できません。
今のアメリカ不動産市場は、さまざまな不確実性を抱えています。
金利の動向、供給の偏り、経済のゆくえ。
そういう時期に限って、「今が買い時か」「どのマーケットが上がるか」という問いが増えます。
それは当然のことだと思います。
けれども不確実な時代に本当に問うべきことは、「市場がどう動くか」ではなく、「自分は何を望んでいて、何があれば満足できるのか」だと思うのです。
市場の方向は誰にも正確にはわかりません。
けれども自分自身の目的と条件を明確にしている人は、どんな市場でも動けるものです。
「問い」を変えると、見える景色が変わります。
ご多分に漏れず、私自身もこのことを、失敗を重ねながら学んできました。
とどのつまり、「良い問いを立てることが良い仕事の始まり」なのだと、今は思っています。
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