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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカの住宅市場を眺めていると、数字の「結果」よりも先に、人々の「足の運び」に変化が表れることがあります。
今日取り上げたいのは、まさにその「足の運び」に関する数字です。
Redfinの最新データによれば、2026年の年明けから現時点までのHome-Touring Activity(内見活動)は、昨年同期比でわずか11%の増加にとどまっているとのこと。
昨年の同じ時期、この数字は40%の増加を記録していました。
つまり、本来なら春商戦とともに盛り上がるはずの「家を見に行く」という行為そのものが、今年は静かに沈み込んでいるわけです。
「内見」という先行指標
契約件数や成約価格といった数字は、どうしても市場の「過去」を映します。
けれども、内見の件数はこれから契約に進むかもしれない人々の「意志」を反映する、いわば先行指標(Leading Indicator)です。
「気になる物件があれば、まずは見に行ってみよう」という軽やかな一歩が、今年は踏み出されにくくなっている。
その背景には、買い手側が抱える不安が静かに横たわっています。
4月中旬時点で、30年固定のMortgage Rate(住宅ローン金利)は6.30%前後で推移していました。
2月には一時6%を割る場面もありましたが、中東情勢の緊迫化を受けて金利は再び上昇し、今はその余韻のなかにあります。
「そろそろ動こうか」
と構えていた買い手にとって、この数か月の乱高下は、決断の背中を押してくれるどころか、むしろ踵を返させる材料になってしまいました。
ご多分に漏れず、アメリカの住宅購入は「感情」と「数字」が半々で動くものです。
数字がほんの少し不利に動くだけでも、感情のほうが先に萎えてしまう。
そうすると、家を見に行くこと自体が後回しになります。
成約データにもにじむ、同じ静けさ
内見の停滞は、やがて成約の数字にも現れてきます。
4月12日までの直近4週間で、全米のPending Home Sales(成約見込み件数)は前年比4.1%の減少となり、この1年で最も大きな落ち込みを記録しました。
地域差も目を引きます。
主要50都市のうち、前年比で販売が伸びたのはわずか7都市にとどまり、それ以外は軒並み減少です。
特に落ち込みが大きかったのは、Providence(ロードアイランド州)の前年比17.5%減、Houston(テキサス州)の16.9%減、Nassau County(ニューヨーク州)の14.8%減でした。
共通するのは、ハリケーン被害の保険料高騰、産業構造の転換、あるいは高価格帯の集中といった、土地ごとの事情が折り重なっている点です。
ここで興味深いのは、買い手が離れているにもかかわらず、価格はむしろ上がっているという事実です。
住宅販売の中央値は前年比2.3%上昇し、こちらもこの1年で最大の伸びとなりました。
「買い手が減れば価格は下がる」
という教科書的な反応は、今のアメリカ住宅市場には当てはまりません。
売り手もまた、条件が整わない限りは売りに出さず、出しても値を下げない。
その結果、取引は細りつつも、価格水準だけは高いまま残るという、静かな膠着状態が広がっています。
こうした「動かない市場」は、一見するとチャンスが見えにくいように感じます。
けれども、内見件数が減り、成約までの期間が延びているということは、売り手側が徐々に柔軟になっていくことの前触れでもあります。
実際、現場で交渉をしていると、Seller Concession(売り手からの譲歩)を引き出しやすい空気が少しずつ広がってきました。
クロージング費用の一部負担、金利の買い下げ(Rate Buydown)、修繕費のクレジットなど、数年前には考えにくかった条件が話題に上るようになっています。
とどのつまり、表面の数字だけを見て「春商戦は不発」と片づけるには、市場は少し複雑です。
内見が11%しか増えていないという事実は、「静けさ」であると同時に、「交渉の余地」でもあります。
この春の足音をどう聞き取るかで、半年後に得られる成果は大きく変わってくるように思います。
焦らず、けれども機を逃さず、データの裏側にある空気まで丁寧に読み解いていきましょう。
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