投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。
こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先日、あるピアノ調律師の方の仕事を間近で見せてもらう機会がありました。
調律というのは、音叉一本と特殊な工具を使い、88鍵それぞれの弦を少しずつ締めたり緩めたりしながら、音のバランスを整えていく作業です。
熟練した調律師になれば1時間ほどで終わるといいますが、素人目には気が遠くなるような繊細な仕事に映りました。
その方が作業の手を止めて、こんなことを言っていました。
「ピアノというのは、毎日使っていても、誰も弾かなくても、少しずつ狂っていくんです。温度が変わっても、湿度が変わっても、弦は動く。ですから調律は、一度やって終わりじゃなくて、ずっと続いていく仕事なんです」
その言葉が、しばらく頭の中に残りました。
「正確さ」は状態ではなく、習慣だ
私がその言葉に引っかかったのは、おそらく自分の仕事と重なって見えたからだと思います。
不動産の相談を受けるとき、できる限り現在の市場データを確認するようにしています。
先週の金利、今月の在庫数、直近の成約事例、住宅ローンの申請件数の変化。これらは数週間で大きく動くことがあります。
けれども、忙しさにかまけてデータの確認を怠ると、知らず知らずのうちに「少し前の市場感覚」で話してしまっている自分に気づくことがあります。
「いつの間にか、自分の音が狂っている」ということは、この仕事でも起きうる。
調律師の言葉が刺さったのは、まさにその点でした。
ピアノの弦が一夜にして大きく狂うことはないといいます。毎日少しずつ、気づかないほどの微量で、音はずれていく。
それと同じように、市場の認識も少しずつ古くなっていきます。
「アメリカの不動産は今、売り手市場だ」
という感覚が正しかった時代は確かにありました。
けれども、2024年以降、在庫は各地で積み上がり始め、買い手が複数の物件を比較しながら交渉できる地域も増えてきています。
かつての常識が、気づかないうちに「古い楽器の音」になっていることがある。
情報は腐る。 これは不動産に限った話ではありませんが、この業界では特にそれが顕著です。
では、どうすれば認識のズレを防げるのか。意識しているのは、
「定期的に一次情報に触れ直すこと」
です。
誰かが解説した記事や、加工されたレポートだけを読んでいると、元の数字から少しずつ離れていきます。
NAR(全米リアルター協会)の月次データ、Freddie Macの金利推移、Redfinの在庫レポート。
手間はかかりますが、生のデータを定期的に確認することで、「自分の楽器の音」を保つことができます。
調律師は、完成した音を聴いて満足するのではなく、次に来る狂いを見越して仕事をしています。
コンサルタントの仕事も、案外そういうものかもしれない、と最近は思うようになりました。「今の答えを出す」だけでなく、「答えが変わるタイミングを察知する」ことが、長く信頼してもらえる仕事につながっていくのではないかと。
「調律し続けること」こそが、精度を保つための唯一の方法なのだとすれば、それはひとつの謙虚さの形とも言えるのかもしれません。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。