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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカで家を買うとき、意外と見落とされがちなコストがあります。
Homeowners Insurance(住宅保険)の保険料です。
物件価格や金利、Property Tax(固定資産税)の話題は頻繁に上がりますが、保険料はなぜか脇役に置かれがちです。
けれども、最近の市場レポートを眺めていると、この脇役がじわりと舞台の中央に近づいてきているのを感じます。
Cotality(旧CoreLogic)の最新予測によれば、全米の平均住宅保険料は2026年に約8%、続く2027年にもさらに約8%上昇する見込みとされています。
2年間で合わせると、およそ16%の積み上がりです。
保険料は「月々の返済」に含まれている
アメリカの住宅購入において、保険料は抽象的な話ではありません。
Mortgage Rate(住宅ローン金利)で借り入れを行う場合、月々の支払いは元本と金利だけでは構成されません。Property Tax と Homeowners Insurance を合わせた「PITI(Principal / Interest / Taxes / Insurance)」という概念で計算されるのが通例です。
つまり保険料は、月々のキャッシュアウトに直接乗ってくるコストなのです。
金利や物件価格は交渉の余地もありますが、保険料は地域のリスクと保険会社の採算に基づいて算定されるため、買い手側が選べる幅はそれほど広くありません。
そうすると、保険料の上昇は「気づかぬうちに利回りを削り取る要因」として静かに積み上がっていくことになります。
興味深いのは、この上昇が全米で均等に起きているわけではないという点です。
カリフォルニア州では、2026年の保険料上昇率が約16%に達すると予測されています。
2025年初頭のロサンゼルス周辺における山火事以降、州の最終引受人にあたるFAIR Planは契約件数を大きく伸ばし、現在は45万件を超える規模に達しています。
最後の受け皿が急激に膨らんでいる状況は、民間保険市場の縮小を映しているとも言えます。
一方、フロリダ州では少し違う風景が広がっています。
長年、保険料高騰の代名詞だった同州で、州営のCitizens Property Insuranceが2026年の保険料について2.6%の引き下げを申請するという動きが出てきました。
契約件数も、ピーク時の140万件から40万件以下まで縮小しています。
とはいえ、「絶対額で見ればフロリダは依然として全米最高水準」という事実は変わりません。
年間平均保険料は8,500ドル近くまで上昇しており、全米平均のおよそ2倍超の水準にあります。
投資物件の利回りを見るときの視点
ここからが、アメリカの投資物件を検討する場合に大事な話です。
表面利回りだけを眺めていると、保険料のじわじわとした上昇は数字に現れにくいものです。
けれどもNOI(Net Operating Income:純営業収益)まで計算に入れていけば、年間運営費に占める保険料の比率は決して無視できません。
物件価格がおよそ30万ドル〜40万ドル帯の一戸建てで、年間保険料が2,000〜3,000ドル前後というのが、現在の一般的な水準です。
これが毎年8%上がっていくと、5年後には当初の1.5倍近くに達する計算になります。
「家賃の上昇で吸収できるのでは」という見方もできるでしょう。
けれども賃料は地域のマーケットと入居者の支払い余力に縛られます。
コスト側が先に上がり、収益側があとから追いつくという順序になれば、キャッシュフローは数年間にわたって薄くなる可能性が残ります。
こうした話を聞くと、「では保険料の上がる州は避けるべきか」という結論に飛びつきたくなるものです。
けれども、実態はもう少し複雑です。
カリフォルニアやフロリダには、保険料のリスクを上回るほどの人口流入や賃料上昇の余地を抱えるエリアもあります。
同じ州内でも、沿岸部と内陸部でリスクプロファイルは全く異なります。
逆に、Sun Belt(南部の成長州)の中にも、近年の自然災害リスクが上昇しているエリアでは、保険料の伸びが物件ROIを想定以上に圧迫し始めている事例が見られるようになりました。
大事なのは、物件を選ぶ前にProperty TaxとHomeowners Insuranceを合わせた保有コストの5年見通しを、物件ごとに試算しておくことです。
不動産の話題は、どうしても「いくらで買って、いくらで売れるか」という華やかな部分に目が行きがちです。
けれども、実際に保有期間中のキャッシュフローを左右するのは、こうした地味な運営費の積み上がりであることが多いものです。
8% + 8%という数字は、あくまで現時点での予測のひとつにすぎません。
実際には来年の天候次第でさらに大きく動く可能性もありますし、逆に落ち着きを取り戻す地域もあるでしょう。
それでも、この水準の上昇が当面続くと想定して運営計画を立てておくほうが、慌てずに済むように思います。
物件を検討するときは、購入価格や金利だけでなく、保険料と固定資産税の見通しも並べて眺めていきましょう。
表には出にくい数字にこそ、投資判断のヒントが隠れているように思います。
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