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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
「毎月のモーゲージ支払いはいくらですか」
と尋ねられたとき、多くの方が答えるのは
「元本と利息(Principal and Interest)」
の合計です。
30年固定で6.5%、借入額が30万ドルなら、月々のP&Iは約1,896ドル。
これが「モーゲージ支払い」の正体だと、長らく考えられてきました。
けれども、実際に銀行口座から引き落とされる金額は、もっと大きいのが常です。
アメリカの住宅支払いには、P&Iのほかに「エスクロー(Escrow)」と呼ばれる部分があります。
これは毎月の支払いに組み込まれる、固定資産税(Property Tax)と住宅保険(Homeowners Insurance)のための積立です。
銀行が12ヶ月分を預かり、税金や保険の請求書が届いたときに代わりに支払う仕組みになっています。
業界では「PITIA」という略称が使われます。
Principal(元本)、Interest(利息)、Tax(税金)、Insurance(保険)、そしてAssociation(管理費)の頭文字をとったものです。
投資としての不動産を考えるとき、本当に意味を持つのはこの「PITIA」全体の数字であり、P&Iだけを見ていても実態は掴めません。
そしてこの「エスクロー部分」が、ここ数年で静かに、けれども確実に膨らんできました。
Bankrate(バンクレート)が4月に公表したデータによると、2020年から2025年までの5年間で、全米の平均エスクローコストは約45%上昇しています。
中でもフロリダ州では、同じ期間に70%の上昇を記録しました。
あるフロリダの家主の住宅保険料は、年間2,400ドルから4,100ドルへと71%跳ね上がったそうです。
さらに注目すべきは、住宅保険料が、今や典型的な月々の支払い全体の9%を占めるまでになっているという点です。
これは記録が残る中で最も高い水準です。
「固定金利で借りておけば、支払いはずっと一定」。
そう思って2020年に物件を買った方にとって、この5年の変化は予想外の重さとして、のしかかっているはずです。
モーゲージ金利は固定でも、エスクローは毎年見直されます。
税務当局が資産評価を引き上げれば、固定資産税は上がります。
保険会社が気候リスクや再保険コストを理由に値上げすれば、保険料も上がります。
そうすると月々の「本当の支払い」は、知らないうちに数百ドル単位で膨らんでいるわけです。
投資家の視点からこの動きを見ると、一つの示唆があります。
キャッシュフロー計算を、もう一度点検する必要があるということです。
賃料収入からP&Iだけを差し引いて「これだけ残る」と安心していると、実際の手取りは想定より薄くなっていることがあります。
特にフロリダ、テキサス、カリフォルニアといった自然災害リスクの高い州では、この影響が顕著です。
これから物件を買うときに、一つお勧めしたいことがあります。
購入前に、物件の「過去3年間の固定資産税の推移」と「保険料の変動履歴」を必ず確認してみてください。
売買契約書に添付されるSeller’s Disclosure(売主開示書類)には、直近の税金や保険料の情報が記載されていることが多く見られます。
また、その州・郡の保険市場の状況も一度は調べてみる価値があります。
「来年、8%から15%の値上げが予想される」と言われる地域もあります。
エスクローの動きは派手ではありません。
ニュースの見出しになることも、ほとんどありません。
けれども、固定金利の裏側で静かに進行するこの上昇は、長期保有の投資収益を最も確実に削っていく要素の一つになっています。
物件を検討するときは、P&Iではなく「PITIA」で見る。
このひと手間が、5年後10年後の景色を大きく変えていくように思います。
表には出にくい数字ですが、一緒に丁寧に見ていきましょう。
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