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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
この一年あまり、住宅購入の相談を受けるたびに判で押したように交わされてきた言葉があります。
「もう少し待てば、金利は下がりますよね」。
多くの人が利下げ(Rate Cut・政策金利の引き下げ)という追い風を待ちながら、購入のタイミングをはかってきました。
けれどもこの六月、その前提そのものが静かに書き換えられようとしています。
今日は、報じられたいくつかの数字を並べながら、「金利はそろそろ下がる」という物語の中身を、もう一度ほどいてみましょう。
まず起きた出来事は、見出しとしてはとても地味なものでした。
六月の連邦公開市場委員会(FOMC・米連邦公開市場委員会)で、中央銀行は政策金利(Federal Funds Rate・政策金利)を据え置いたのです。
金利が「動かなかった」だけですから、それ自体は静かな出来事です。
けれども市場が強く反応したのは金利の水準ではなく、そこに添えられた「言葉の調子」のほうでした。
会合のあと、政策当局者の多くが年内に必要になるのは利下げではなく、むしろ追加の利上げ(Rate Hike・政策金利の引き上げ)かもしれない、という見方を示したのです。
「次に動くなら下げる方向だ」と思われていた針が、「上げる方向かもしれない」と逆を向き始めたわけです。
この転換の背景にあるのは、しつこく高止まりする物価です。
五月の消費者物価指数(CPI・消費者物価指数)は、前年比でおよそ4.2%の上昇となりました。
これは3年あまりのなかで最も速い物価上昇のペースで、中央銀行が掲げる「2%」という目標からは、まだ遠く離れた場所にあります。
物価がここまで高いままでは、金利を下げる理由を当局はなかなか見つけられません。
そしてもう一つ、足元では中東情勢をめぐる緊張が原油価格を大きく揺らしました。
エネルギーの値段が跳ねれば、それはめぐりめぐって物価をさらに押し上げかねません。
こうした連想から、投資家たちは「年内の利下げ」という期待を、少しずつ手放し始めました。
その心理は、長期金利(10-year Treasury Yield・10年国債利回り)にそのまま表れています。
住宅ローン金利がいわば手本にしているこの10年国債の利回りは、六月に入って4.5%前後まで上昇しました。
結果として、30年固定の住宅ローン金利は6%台の半ばから後半に貼りついたまま動かない状態が続いています。
ここまでをひとつなぎにすると、こういう絵が浮かびます。
物価が下がらない、だから利下げが遠のく、だから長期金利が下がらない、そして住宅ローン金利も下がらない。
「もうすぐ下がる」という物語は、その入り口にあたる物価の段階ですでにつまずいているのです。
では、この景色を日本から眺める立場として、どう受け止めればよいのでしょうか。
いちばん避けたいのは、「下がってから動く」という一手に、すべてを賭けてしまうことだと考えています。
天気予報を信じて傘を持たずに出かけたら、その予報自体が昼過ぎに書き換えられていた。
いまの金利は、それに近い状況にあります。
予報は、外れることがあります。
そして金利の予報は、地政学やエネルギー価格といった誰にも読み切れない要素で、簡単に向きを変えます。
だからこそ、判断の軸を「金利が下がるかどうか」だけに置かないことが大切になります。
たとえば、いま6%台後半の金利で買ったとしても将来ほんとうに金利が下がった局面で借り換え(Refinance・借り換え)という選択肢は残されています。
「高い金利で買って、安い金利に乗り換える」という順番は、決して不自然なものではありません。
逆に、物件そのものの価値やその家が生む家賃の見通しは金利の予報よりもずっと自分の手で確かめられる部分です。
読み切れない金利を待ち続けるより、確かめられる物件の中身に時間を使うほうが、最後には確かな足場になると考えています。
「もうすぐ下がる」という言葉は、これからも繰り返し聞こえてくると思います。
その声に背中を押されるのでもせかされるのでもなく、いまそこにある数字をそのまま見つめるところから始めていきましょう。
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