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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
投資用の物件を一つ売って、その資金で次の物件へ移りたい。
そう考えたとき、多くの方がまず気にするのは「売った瞬間に、利益へ税金がかかってしまうのではないか」という点です。
アメリカには、この税金を今は払わずに次へ繰り延べられる仕組みがあります。
1031交換(1031 Exchange・税の繰り延べ交換)と呼ばれる、投資用不動産を売って別の投資用不動産へ乗り換えるための制度です。
名前こそ難しく聞こえますが、やっていることは「利益を現金に換えて手元に置くのではなく、そのまま次の不動産へ走らせる」という一点に尽きます。
今日は、この制度を一本のリレー競走になぞらえながら、売却から再取得までの時間の流れを追ってみましょう。
触れてはいけない「バトン」
リレーで最初に覚える約束事は、走者がバトンを地面に置いてはいけない、ということです。
1031交換にも、これとよく似た約束事があります。
売却で得たお金を自分の口座でいったん受け取ってしまうと、その時点で交換は成立しなくなります。
専門的には「建設的受領(Constructive Receipt・実際に手にしたとみなされること)」と呼ばれ、売却代金に一度でも手が届いた瞬間、税の繰り延べは消えてしまいます。
ですから売却代金は、売り手本人ではなく中立の第三者があいだで預かります。
この役目を担うのが適格仲介者(Qualified Intermediary・QI)で、いわばバトンを受け渡すための中継地点です。
お金は売り手の手を一度も経由せず、QIを通って次の物件へと渡っていきます。
走り出してからの「45日」
バトンを渡す相手は、走りながら探すわけにはいきません。
1031交換では、最初の関門が売却の日から数えて45日後にやってきます。
売却から45日以内に、次に買う候補の物件を書面で特定しておかなければならないのです。
これが「識別期間(Identification Period)」と呼ばれる、最初の45日間です。
口頭で「あのあたりを買うつもり」では足りず、署名した書類でQIへ届け出る必要があります。
そうすると、売ってから候補を探し始めるのでは45日はあまりにも短いことに気づきます。
多くの投資家が、売りに出す前から次の候補を見定めておくのは、このためです。
渡しきるまでの「180日」
候補を定めたら、次はその物件をほんとうに取得するまでの期限が控えています。
売却の日から180日以内に、特定した物件の購入を完了させなければなりません。
45日の識別期間も、この180日のなかに含まれています。
つまり候補を絞り込む45日を引けば、残りは135日ほど。
この区間が、バトンを次の走者へ確実に手渡すための、最後の直線です。
一日でも過ぎれば交換は不成立となり、繰り延べたはずの税が現実のものとして戻ってきます。
カレンダーに、もう一本の線を引く
ここで見落とされがちな点があります。
180日という期限は、いつでも満額もらえるとは限りません。
確定申告の提出期限が先に来る場合には、その日が交換の締め切りになってしまうのです。
年の後半に物件を売った投資家が申告の延長手続き(Extension)をとっておくのは、この180日を最後まで使い切るためです。
けれども延長を忘れてしまうと、本来あるはずの日数が申告期限の都合で削られてしまいます。
カレンダーには売却日からの45日と180日に加えて、もう一本申告期限という線を引いておきたいところです。
繰り延べは、消滅ではない
最後に、一つだけ性格をはっきりさせておきましょう。
1031交換が与えてくれるのは税の「免除」ではなく、あくまで「繰り延べ」です。
売って買ってを重ねるあいだ利益は次の物件へと乗り継がれ、課税はそのつど先送りされていきます。
けれども乗り継ぎをやめて現金に換えたとき、それまで先送りしてきた分が改めて顔を出します。
言い換えれば、この制度は走り続けるかぎりバトンを落とさずにいられる仕組みであって、走るのをやめた瞬間に精算が始まる、ということです。
とはいえ、その先送りのあいだに資金をまるごと次へ投じられる効果は長い目で見れば決して小さくありません。
45日と180日という二つの時計を、売る前から意識しておく。
そんな段取りから、次の一手を一緒に組み立てていきましょう。
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