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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
「売りに出る家は増えないのに、家からお金だけは出ていく」
最近のアメリカ市場を眺めていると、そんな少し不思議な現象が数字にあらわれてきました。
金融データ大手のICE(インターコンチネンタル取引所)によると、2026年の最初の3か月間に、アメリカの持ち家世帯が自宅から引き出したお金は約470億ドル。
第1四半期としては2021年以来の高水準だそうです。
家を売る動きは相変わらず鈍いままなのに、家に蓄えられた資産だけが静かに動き始めている。
今日はこの「家という貯金箱」の話を考えてみたいと思います。
Home Equity(ホームエクイティ)とは何か
まずは言葉の整理から。Home Equity(ホームエクイティ:住宅純資産)とは、家の時価からローン残高を差し引いた「正味の持ち分」のことです。
たとえば時価50万ドルの家にローンが20万ドル残っているなら、エクイティは30万ドル。
ここ数年の価格上昇のおかげで、アメリカの持ち家世帯はこのエクイティを歴史的な水準までため込んできました。
けれども、家は貯金箱のように割って中身を取り出すわけにはいきません。
そこで登場するのが、「エクイティを現金化する」ための二つの方法です。
二つの引き出し方 〜 HELOCとキャッシュアウト
一つは、HELOC(Home Equity Line of Credit:住宅担保信用枠)や第二抵当ローン(Second Lien)。
今あるローンはそのままに、エクイティを担保にもう一本の借入枠を「上乗せ」する方法です。
そしてもう一つが、Cash-out Refinance(キャッシュアウト・リファイナンス:現金引き出し型の借り換え)。
既存のローンをまるごと組み直し、残高より多めに借りて差額を現金で受け取る方法です。
今回の470億ドルの内訳を見ると、HELOCなど第二抵当型が約250億ドル(およそ24万8千人)、キャッシュアウト型が約220億ドル(およそ23万4千人)。
上乗せ型がやや優勢でした。
鍵を握るのは、このブログでも何度か顔を出している「Lock-in Effect(ロックイン効果)」です。
2020年から2022年にかけての超低金利期に、3%前後でローンを組んだ世帯がアメリカには膨大に存在します。
現在の30年固定金利はおよそ6%台半ばですから、今の家を売ったり借り換えたりすればその宝物のような低金利を手放すことになってしまいます。
そうすると、答えはおのずと見えてきます。
低金利の第一ローンには指一本触れず、その上にHELOCを重ねる。
実際、第1四半期の第二抵当型の借入のおよそ3分の2は2020〜2022年にローンを組んだ世帯によるものだったといいます。
一方でキャッシュアウト・リファイナンスを選んだのは、もともとの金利が高めの世帯やまとまった資金を一度に必要とする世帯が中心とみられます。
かくして、金利の風景がそのまま借り方の選択に映し出されているわけです。
投資の目で見ると
この現象は、二つのことを教えてくれるように思います。
一つは、アメリカの家計が「売らずに使う」方向へ舵を切っていること。
低金利のローンを抱えた家ほど売りに出にくいという構造は当面続きそうであり、売り物件の少ない市場が続く背景の一つでもあります。
もう一つは、物件に育ったエクイティが「次の一手」の資金源になり得るということ。
賃貸物件を持っている場合も、育ったエクイティをHELOCで取り出して次の物件の頭金に充てるという回し方はアメリカ不動産投資の王道の一つです。
けれども貯金箱と違って、引き出したお金には利息がつきます。
HELOCは変動金利型が多く、第一ローンより高めの水準です。
「何のために引き出すのか」という問いが金利の損得よりも先に来ることは、忘れずにいたいところです。
家という資産は住まいであると同時に、静かにお金を蓄える器でもあるのです。
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