こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
全米で共通に認識されるアメリカ不動産の権利についてシリーズでお伝えさせて頂いています。
アメリカ不動産の複数による所有形態には
Tenancy in common(テナンシー イン コモン:共有不動産権)
Joint tenancy(ジョイント テナンシー:合有不動産権)
Tenancy by the entirety(テナンシー バイ エンタイヤリー:連帯不動産権)
Community property(コミュニティ プロパティー:夫婦共有財産)
の4つがあります。
今日はこの中のJoint tenancy(ジョイント テナンシー:合有不動産権)についてです。
Joint tenancy(ジョイント テナンシー:合有不動産権)
アメリカの多くの州では結婚しているしていないに関わらず、二名もしくはそれ以上の人数でJoint tenancy(ジョイント テナンシー:合有不動産権)という形態で不動産を所有することが許されています。
このJoint tenancy(ジョイント テナンシー)の際立った特徴は、the right of survivorship(ザ ライト オブ サバイバーシップ:生存者への譲渡の権利)がついていることです。survivorとは生き残る、生存するというニュアンスの言葉ですが、つまり所有者の誰かが亡くなって自分が生き残った場合、生き残った自分は亡くなった方の所有を無条件で譲渡してもらえるのです。言葉尻としては生き残った者勝ちのようなイメージもありますが、それをthe right of survivorship(ザ ライト オブ サバイバーシップ)といいます。
最初からJoint tenancy(ジョイント テナンシー)で所有することの利点は、the right of survivorship(ザ ライト オブ サバイバーシップ)を施行して権利を譲渡してもらう場合、裁判所を通す必要がないとうこと。前述のTenancy in common(テナンシー イン コモン)の場合は譲渡手続きに裁判所を通す必要があり、通常は一度裁判所を通してしまうとその手続きに恐ろしく時間がかかってしまうものなのです。
それとは対象的にJoint tenancy(ジョイント テナンシー)の場合は裁判所を通す必要はなく、三名の中で一名が亡くなったのであれば生き残っている二名が二分の一ずつ権利を自動的に所有することになります。厳密には亡くなった方の死亡証明を登録しておく必要はありますが、必要な公的手続きはそれくらいのものです。
そしてこのJoint tenancy(ジョイント テナンシー)の場合は所有者が亡くなるごとに生き残った者で等分に所有権を譲渡されることになりますが、最後の二人が一人になった時、この最後の一人の所有形態はOwnership in severalty(オーナーシップ イン セベラルティ:単独所有権)に変化し、全ての権利を一人で所有することとなります。
Joint tenancy(ジョイント テナンシー)であることの四つの条件
Joint tenancy(ジョイント テナンシー)の最もよい点は前述のように誰かが亡くなった時に裁判所を通すことなく、自動的に亡くなった方の権利を生き残った所有者間で等分に分割して譲渡してもらえることですが、Joint tenancy(ジョイント テナンシー)を構成するにはきちっとその詳細がDeed(ディード)の中で謳われているか、遺書に明記するか、あるいは書面の生前贈与で明確にしてある必要があります。
そしてJoint tenancy(ジョイント テナンシー)として成り立つ為の条件は四つ、
● Unity of Possession(ユニティー オブ ポゼッション):
全ての所有者が分割不可の優先権を有していること
● Unity of interest(ユニティー オブ インテレスト):
全ての所有者が平等な所有権を有していること
● Unity of time(ユニティー オブ タイム):
全ての所有者がそれらの権利を同時に獲得していること
● Unity of title(ユニティー オブ タイトル):
全ての所有者が同じ書面上で権利を獲得していること
になります。
例えば四人で所有しようと役所にDeed(ディード)提出する場合、一人だけが遅れて一週間後に別の書類で登録するということは無効です。あくまで同じ時に同じ書類でJoint tenancy(ジョイント テナンシー)としての権利を登録する必要があります。
Joint tenancy(ジョイント テナンシー)が成立しなくなる時
このJoint tenancy(ジョイント テナンシー)を成立させ続けるには前述の四つの条件を保つ必要がありますが、逆にいうとこの四つの要素の一つでも崩れた時、Joint tenancy(ジョイント テナンシー)は成立しなくなります。
例えば三人でtenancy(ジョイント テナンシー)を構成していたとします。その中の一人が「自分の権利を売却したい!」という場合はどうなるのでしょうか。この場合、州法で禁止されていない限りその売却希望者は自分の権利を他人に売却、あるいは親族に贈与することは可能なのです。
ところが同時に、自分の権利を自分の手から離した瞬感に四つの要素の中の
● Unity of time(ユニティー オブ タイム):時間共有
● Unity of title(ユニティー オブ タイトル):書類共有
この二つを破ってしまうことになりますから、そのJoint tenancy(ジョイント テナンシー)の概念は残された二人の間だけのものとなります。
そして売却した一人の次の所有者はJoint tenancy(ジョイント テナンシー)に必要な要素を当然満たすことが出来ませんから、その新しい所有者はTenancy in common(テナンシー イン コモン)として前オーナーの割合を引き継ぐことになるのです。つまり、一つの不動産に対して最初の二人のJoint tenancy(ジョイント テナンシー)と新しい一人のTenancy in common(テナンシー イン コモン)という、二つの権利形態が共存する結果となります。
所有者間が法廷で争う場合の解決方法
ここまでは誰か所有者が亡くなった場合、売却された場合、あるいは相続された場合でお伝えしましたが、Tenancy in common(テナンシー イン コモン)であれJoint tenancy(ジョイント テナンシー)であれ二人もしくはそれ以上の所有者間で一つの不動産資産に対し争いが起こった場合はどうなうのでしょうか?
示談で解決しない場合は法廷に持ち込まれることになりますが、この場合に裁判所側が見るのは「対象不動産資産は、その市場価値を失うことなく物理的に分割することが出来るか?」という部分です。
もし「市場価値を失うことなく分割は不可」と判断された場合。。なんと裁判所はその不動産資産の売却を命じるのです。売却して資産整理した後の現金をかつての所有者間で所有割合に沿って分かち合うことで解決を図ります。この裁判プロセスを
Partition Suit(パーティション スーツ:分割訴訟)
と呼びます。なんとも強引な終わり方ですが、合理的であるのも確かなのです。
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