こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
一昨日から、今のアメリカ不動産市場で
「高額な物件価格地帯ながらも、穴場の賃貸市場」
についてお伝えしています。
今のアメリカでは全米で物件価格と同時に家賃も上昇しつつありますが、市場物件価格は暴落することはあっても市場家賃価格が暴落することはありません。
その理由は、市場家賃価格は別の原因と連動しているからです。
一言でいえば家賃はインフレと密接な関係があるのですが、すなわち市場家賃価格そのものは上がり続けるという前提があるのです。
そしてそんな売り手市場の中にあり、かつ市場家賃価格が上昇し続ける中にあっても、スポッと抜けるように家賃が安い隠れ賃貸市場がアメリカに点在しています。
本日も続けます。
テキサス州ヒューストン市(ワンベットルーム中間賃貸価格:$1,300)
穴場市場:フェアーバンクス/ノースウェスト・クロッシング(Fairbanks/Northwest Crossing)
ジップコード(郵便番号):77040
ワンベットルーム中間賃貸価格:$733
家賃世帯割合:47.2%
テキサス州ヒューストン市の近年の物件価格上昇ぶりはご存じの通りです。
生活費そのものは未だ安いものの、ヒューストン市の管轄郡となるハリス郡の固定資産税率は全米で最も高く、不動産投資においても高い固定資産税が悩みの種となっています。
固定資産税そのものは税率が一定であっても市場評価額を元に算出されますので、物件価値が上がるということは年々固定資産税も上昇するわけです。
そのような状況ですから、物件価値の上昇と共に強気に上昇してくる市場家賃の上昇を背景に、ヒューストン市で賃貸暮らしをしていた人々が郊外に移り住む傾向が見え始めています。
具体的には、ヒューストン市は中心のダウンタウンを取り囲むようにフリーウェイが整えられているのですが、このフリーウェイの内側と外側では物件価格や賃貸価格が大きく変わってくるのです。
結果としてフリーウェイで出来る環状線の外側に人々が流れ、ヒューストンダウンタウンから車で約20分郊外に出たフェアーバンクスやノースウェスト・クロッシングといった地域もそんな郊外の一つになります。
とはいえ、ダウンタウンから車で約20分であれば距離的には全く悪くありません。
私(佐藤)がヒューストン滞在時に暮らす場所は渋滞なしでもダウンタウンから30分はかかりますので、フェアーバンクスやノースウェスト・クロッシングはダウンタウンにかなり近いイメージです。
またここはダウンタウンから北西に伸びるフリーウェイ290沿いに位置し、移動はことのほか便利な地域です。
そして、ここの1ベットルームの家賃はなんと$700前後。
2ベットルームでも$900と$1,000を切りますから、ヒューストンダウンタウンの間近にしてこれだけ家賃が安いとかなり有利です。
実際にはこの辺りの地域は3~4ベッドルームの一戸建て住宅が主流ではあるのですが、その中にあるアパート物件こそ知る人ぞ知る、格安の賃貸物件なのです。
またこの近辺でアパートを賃貸する層は「短期間の滞在」を目的とする若者が多く、事実、このレベルであれば入居時でも最初の資金をヒューストンダウンタウンのそれと比べて20%程度は節約出来ますから、ヒューストンダウンタウンに通う学生を中心に人気がある隠れスポットなのです。
ペンシルベニア州フィラデルフィア市(ワンベットルーム中間賃貸価格:$1,490)
穴場市場:ホルムスバーグ(Holmesburg)
ジップコード(郵便番号):19136
ワンベットルーム中間賃貸価格:$750
家賃世帯割合:38.8%
フィラデルフィア市は東海岸の中でも長年、家賃が高額なボストンやニューヨークと比べて安い賃貸市場として知られていました。
両市では暮らせないとする層がフィラデルフィアに腰を据えるパターンもあったわけです。
ところが、このフィラデルフィア市でも近年は市場家賃価格の上昇が甚だしくなっています。
昨年2017年だけでも、同市の中間賃貸価格は1ベッドルームでも$1,490、2ベットルームで$1,700と、前年から8%も急激に上昇しているのです。
この流れを受けて、同市で暮らしていた人々がホルムスバーグやメイフェアーといった同市の家賃平均の半分で済む街に引っ越す傾向が見受けられます。
またこの地域は住民間のつながりも深く、建物もブロック型の並び物件が多いのが特徴です。
賃貸として一番人気は3~4ベッドルームの物件で、1,000スクエアーフィートの広さで家賃は$1,300と手ごろになっています。
通勤時間もダウンタウンまで20分と程ちかく、ダウンタウンへの通勤にはほどよい距離なのです。
ワシントンD.C.(ワンベットルーム中間賃貸価格:$2,140)
穴場市場:ミシガンパーク/ブルックアイランド(Michigan Park/Brookland)
ジップコード(郵便番号):20017
ワンベットルーム中間賃貸価格:$1,620
家賃世帯割合:44.2%
ワシントンD.C.の中心から東北側に位置する、比較的裕福な層が流れ始めたのがミシガンパークやブルックアイランドといった地域で、この近辺は未だに家賃市場は安めです。
とはいえ、この低い家賃は「今だけの話で、長くはもたない」とも言われており、ワシントンD.C.近郊の家賃が安い最後の砦ともいえる賃貸市場になっています。
とりわけこの界隈は家賃の安さに魅かれ、2011年から若手の専門職系や大学生が多く暮らすようになってきた背景があります。
その典型的な例は、第二次世界大戦直後に出戻りのベテラン(退役軍人)用に建設された古い3~4ベッドルームの一軒家を若い世代がグループで賃貸し、大勢で暮らして家賃を出し合う形態です。
賃貸価格は$2,700~$3,500と高めではあるものの、それを割勘や部屋の面積率で共に支払い、1人あたりの支出を$1,000以下に抑えるパターンが見受けられます。
そのような中、近年はこの地区に新しい開発業者の参入も顕著化しており、例えば2013年にブルックアイランドに建設されたモンローストリートマーケットというアパートなどは、最新設備が導入されたスタジオでも$1,800、2ベッドルームになると$3,600と割高です。
またこの地域の生活費は現在はそれなりの安めではあるものの、物件の建設費はコストがかかる土地柄であることから、家賃は必然高めになっています。
ちなみにこの近辺ではワシントンD.C.の真ん中のように交通機関が充実しているわけではありませんので、大抵の人々は車での通勤・通学です。
このワシントンD.C.近郊の安い賃貸市場最後の砦は、賃貸が安いという理由がなくなれば街の若者人口も少なくなるかもしれません。
アメリカの物件価格が高い地域に隠れる穴場賃貸市場について、明日以降にもう少し続けます。
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