昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日からアメリカのプライベートローンについてお伝えしています。
サブプライムローン問題に端を欲する世界金融危機以降、アメリカの不動産金融業界は一様にその融資審査基準が厳しくなりました。
とはいえ融資審査基準のハードルが高くなったものの、その審査基準をクリアする人々も同時に増えたわけではありません。
結果として融資を受けれずに住宅を購入できない人々が増えてきたのが、過去10年のアメリカ不動産市場の流れです。
今現在は全米の不動産価値(価格)は2007年時点の水準、もしくはそれ以上にまで戻り、完全に復活して現在も不動産価値は全米で上がり続けている昨今です。
とはいえ、そんな上り調子の不動産市場にあっても10年前と違うのは、各商業銀行はお財布のひもを固くしたままという事実です。
ここにプライベートレンダー達が大きく台頭してきた理由があります。
今日も続けます。
政府監視のあまいプライベートローン業界
昨日、プライベートローンはブラインドスポット・マーケット(穴場市場)とお伝えしました。
とはいえ全くの野放しというわけではなく、そこには一定の規則があり、それは主に州法で定められています。
事実、プライベートローンはあくまで個人の貸し借りとはいえ、プライベートレンディングを実行する上では資格が必要と定められているのです。
けれども資格を得るには、例えばカリフォルニア州であれば
「$25,000の自己資本を維持すること」
「$25,000の住宅ローン保証保険を保持すること」
という、プライベートレンディングを行う個人投資家達にとっては極めてハードルの低い条件しかありません。
ちなみに、この$25,000という金額はFDIC(Federal Deposit Insurance Corporation:連邦預金保険公社)が定める、
「$25,000までの普通預金・当座預金を補償する」
という預金保険にその基準を合わせていると思います。
アメリカで全国展開する商業銀行はこのFDICに加盟することが義務付けられており、あなたの口座を持つ銀行が破綻した場合でも$25,000までは保証されるのです。
この同じ原理を、カリフォルニア州ではプライベートレンダーにも課しているのでないでしょうか。
そしてプライベートローンがブラインドスポット・マーケット(穴場市場)というのはこの参入の低さのみならず、政府への報告体系にもあります。
現在の規定では、
「数件の投資案件であれば、政府に報告義務はない」
となっているのです。
ということは、極端に言えば1億の単位でプライベートレンダーが貸し出して、その1つの案件で年間1千万以上の利息を稼いだとしても政府に取引報告の義務はないわけです(カリフォルニア州の融資額上限は$2,500,000までと定められています)。
その為、多くのプライベートレンダーたちは低空飛行で投資案件を極小に抑えながら、より高いLTV(Loan To Value Ratio:負債の割合)、より高い金利で高利貸しを行うのです。
クレメンス氏の場合
そこでプライベートローンに関してよりイメージし易いように、昨日冒頭でご紹介したマイク・クレメンス氏のケースでみていきましょう。
クレメンス氏はもともとマサチューセッツ州ボストン市の生まれで、当地で住宅ローン銀行に勤めていました。
1962年にカリフォルニア州に引っ越し、1981年に不動産投資を本格的に開始しています。
不動産価値の上がり易いカリフォルニア州で「安く買って高く売る」を繰り返し、その個人資産を増やしてきました。
ところが、1994年にカリフォルニアで発生したマグニチュード6.7の大地震の余波で所有する不動産価値が急落、所有する不動産物件のうち47軒がマイナスに転じます。
けれども幸運だったのは、それから不動産価値は順調に戻り2005年から2006年の間に11軒のみを残して大半を黒字で売り抜けることに成功、2008年の金融危機の難を逃れたのです。
クレメンス氏のようにカリフォルニア州で不動産ブームの波に乗って資産を形成し、しかも金融危機の直前に大半を売り抜けるというのはそうあるケースではありません。
市場を長年見続ける洞察力もさることながら、クレメンス氏は運も味方につけているといわざるを得ない見事さです。
そしてここからクレメンス氏は、金融危機以降の不動産金融業界の様子を見て「プライベートレンダー」として動き始めています。
同氏の案件リストを少し覗いてみると、、
融資額:$685,000
金利:10.5%
LTV(負債の割合):70%
融資額:$360,000
金利:8.5%
LTV(負債の割合):53%
商業銀行の金利2~3倍という凄さ。。
プライムローン審査基準に満たない人々に融資するわけですから、リスクが高いのは事実です。
各融資は対象の物件が担保に入れられる、いわゆる物件価値で保証がされた融資ではあるものの、いざ債務不履行が発生して差し押さえる場合には手続きに時間がかかります。
その意味では正にハイリスク・ハイリターンの世界なのです。
クレメンス氏の場合はこのリスクを少しでも軽減するべく、独自の審査基準を設けています。
物件の状態や物件の近所の様子、はたまた場合によっては、面談を行って人を見て融資可否を決めているのです。
当然ながら、クレメンス氏に依頼するのは大概がクレジット履歴に傷のある人々です。
けれども膨大な数をこなしてきたクレメンス氏に言わせると、
「書類は如何でも、その人を見れば融資するべきか分かる」
のだそう。
長年の経験に裏打ちされた自信が、クレメンス氏のプライベートローンビジネスを今でも拡大しつつあります。
明日に続けます。
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