こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日からアメリカ不動産のWholesale(卸売り)についてお伝えしています。
Aさん ... 法人・個人の不動産オーナー
Bさん ... Aから買い付ける業者(ほとんどは不動産業者)
Cさん ... 法人・個人
この三者において
① BさんがAさんから安く買いつける
② Bさんが価格を上乗せしてCさんに購入権を転売する
この流れをWholesale(卸売り)といいます。
Aさんから買い付けたBさんは購入契約が開始されたらすぐに契約中の物件を価格を上乗せしてMLSに掲載し、物件購入を希望するCさんが現れたら現在進行形の
「AからBさんに譲渡される予定の売買契約書」
をCさんに譲渡するのです。
この行為は違法ではないか?との疑問が出てきますが、この「不動産購入権の譲渡」そのものは合法です。
この不動産購入権を譲渡する流れを専門用語で「Assignment(アサイメント)」といいます。
ここで抑えるべきポイントは
Wholesale(卸売り):アメリカ不動産法の定義にあるわけではなく「鞘のみを抜く転売手法」以外の何でもない
Assignment(アサイメント):不動産購入権を譲渡する、法律上許された正当な手続き
です。
つまり、Wholesale(卸売り)と呼ばれる販促手法ではBさんは最初からAさんの物件を購入するつもりは毛頭なく、合法であるAssignment(アサイメント)の手続きを利用して、価格を上乗せして購入権を譲渡することで鞘を抜いて儲けるわけです。
このWholesale(卸売り)に派生するAssignment(アサイメント)方式による購入は素人には分かりにくい要素が数多くありますから、もしもあなたが上記のCさんの立場であれば、このWholesale(卸売り)を熟知している不動産エージェントに支援を依頼することは必須になってきます。
本日も続けます。
Bさんの買い付け価格はいくらだったのか?
そこでまずWholesale(卸売り)の場合に注意しなくてはならないのは、
「そもそもBさんはAさんからいくらで買い付けたのか?」
です。
Wholesale(卸売り)目的の販売でもMLSには「Wholesale(卸売り)ですよ」とは記載されていませんし、MLS上にある価格はBさんがすでに上乗せした価格。
元々AさんがBさんにいくらで売却する予定で(Cさんに譲渡されることになる)契約が進められているのかは、まずはオファーをしてみないと分かりません。
ただしここで安心してよいのは、オファーしたとしても「Cさんはオファーしただけであり、譲渡契約にはまだ署名していない」ということです。
不動産取引のルールとして、手続きとしてはAさんの物件を購入する購入権がBさんからCさんに「Assignment(アサイメント)」として譲渡されることになりますが、この時に登場するのが
「Agreement to Assign(譲渡同意書)」
という、通常は見ない付属的な書類です(名称は多少違う場合があります)。
すなわち、Cさんが引き継ぐことになるのは「AさんがBさんに譲渡するという売買契約書一式」なわけですが、「この売買契約を私は丸ごと引き継ぎます」という趣旨のAgreement to Assign(譲渡同意書)に署名する必要があるのです。
そのオファー後に渡されるAgreement to Assign(譲渡同意書)とその関連書類には「AさんはBさんにいくらで譲渡する予定だったのか(BさんがAさんからいくらで買い付けたか)」の答えが書いてあります。
そこで
AさんからBさんへの譲渡額:X
Cさんがオファーした購入希望額:Y
としましょう。
CさんはMLSに出されていた物件の価格に対し自分が納得した価格Yでオファーをするわけですが、Agreement to Assign(譲渡同意書)はオファーした後に始めて登場しますから、価格Xを事前に知ることは出来ません。
結果として、
Z = Y - X
という、Cさんのオファーした価格YからBさんが買い付けた価格Xを差し引いたZが、「Assignment Fee(譲渡額)」としてBさんのポッケに入ることになるのです。
例えばMLSに「$250,000」として出ていた物件が、オファーを入れた後で送られてくるAssignment(アサイメント)を見ると元々の売買価格が「$200,000」となっていた場合、差額の
$50,000($250,000 - $200,000)
がAssignment Fee(譲渡手数料)として、Bさんのポッケに入ることになります。
*注意1:悪徳不動産業者の場合、そもそも取引がAssignment(アサイメント)を使ったWholesale(卸売り)形式であることや、オファー後に元々の価格が記載されている書類を見せてこない場合もあります。
*注意2:Assignment(アサイメント)であることは事前に知らされるべきであり、また売買契約を引き継ぐ以上は元々の価格は開示される義務があります。
これがWholesale(卸売り)の手法であり、Bさんは最初からこの鞘抜きが目的でAさんの物件を買い付けていることになります。
そしてこのWholesale(卸売り)という転売形態には賛否両論あります。
転売行為だけで鞘を抜く行為に批判もある一方で、そのAssignment Fee(譲渡手数料)が適切なものであれば、「ディール物件を譲ってくれる謝礼として納得できる」という意見もあるわけです。
いずれにせよ、MLSを見るだけではそれがWholesale(卸売り)なのかどうかは分かりませんから、最初の段階では
1.売主(実際には現在進行形の契約の買主)はオファー前にWholesale(卸売り)である事実をバイヤーエージェントに開示しているか
2.Assignment Fee(譲渡手数料)が法外でないか
はチェックするようにしましょう。
明日に続けます。
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