こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
近年、アメリカでは投資家による不動産売買が非常に活発になっています。
2018年の統計によると、全米の不動産取引の実に
「11%以上が投資家による投資目的の購入」
だったそうなのです。
過去、とりわけ1990年代後半から2000年初頭にかけてアメリカでは不動産投資がかなり加熱していました。
当時は不動産価値がこのまま上がり続けると信じた人々が借金を続け、民間金融機関も頭金ゼロでも融資の門を開き、どう考えてもバランスが崩れるのは時間の問題でした。
そして不動産価格が本格的に崩れた2008年の直前には、不動産投資家による取引数は過去最高に達していました。
それでもその時の全体の不動産売買に対する投資目的の購入は5%程度。
つまり、昨年2018年の統計は2008年のあの時の倍以上に達しているのです。
そしてこれだけ不動産市場において投資家が増えてくると、平均価格以下の
$100,000〜$200,000
あたりの物件では獲得競争がかなり激しくなります。
すなわち、このあたりの価格帯は純粋に住居目的でスターター物件を求めるアメリカの
ミレニアル世代
独身
若夫婦
これらの購入層とモロに対象が重なり合います。
結果として、投資家が殺到している昨今はスターター物件を現金で購入しようとする住居目的の現地バイヤーもなかなか購入が出来ない状況になっているのです。
アメリカ不動産市場で過去最高レベルの投資目的売買が行われているのはなぜでしょうか。
今日は、今のアメリカ不動産市場を投資家の動きに合わせて俯瞰してみましょう。
フリッパーは不動産市場の回復に大貢献した

まずは少し過去を思い出してみましょう。
2007年の夏ごろからアメリカ不動産市場はその市場価格に陰りが見えてきました。
サブプライムローン問題が徐々に表面化し、それから約一年で差し押さえ物件が加速度的に増え、不動産価格の大暴落へと繋がったのです。
2008年9月にはリーマン・ブラザーズが経営破綻し、そのまま世界金融危機へと向かったことはご記憶の通りです。
この時はアメリカ政府も迅速に動き、FRBは実質ゼロ金利政策を施してまでなんとか危機を乗り越えようと試みました。
ゼロ金利とはすなわち融資を引く際の利息がゼロということですから、借金をしても元金だけを返済すればよいわけですね。
そしてこのゼロ金利政策を千載一遇の好機と見たのは誰だったでしょうか。
もちろん
「今が自宅の買い時だ!」
と動いたアメリカ市民も数多くいたことは疑いありません。
けれどもそれ以上に敏感に反応して電光石火で動いたのは、紛れもなくフリップ業者でした。
フリップ業者は
物件を安く購入する
リノベーションして価値を上げる
投資家に販売する
この式で利益を上げることを生業としています。
そうすると
物件を購入する際の融資
物件にリノベーションをかける際の融資
このどちらにおいても、借金をしたとしてもゼロ金利であれば元金返済だけで済むのです。
彼らにとってはほぼ利益が確定されたようなものであり、ゼロ金利発動と共に動かない理由は全くありませんでした。
そしてこの時は本来は商業物件の専門であるはずの
Blackstone Group LP
Starwood Capital Group
といった大手ですら、差し押さえとなった物件を相当買い込んでいます。
またこれらの大企業でなくとも、フリップを専門とする零細企業であってもここぞとばかりにかなりの差し押さえ物件を購入したのでした。
とあるスタートアップの不動産会社などその購入件数は6,000件を超え、相当な利益を出しています。
とどのつまり、あの10年前のアメリカ不動産市場の大惨事の時期に市場を回復させる大きな原動力となったのは、紛れもなくフリップ業者たちでした。
ゼロ金利以上に有利なタイミングはありませんから、迷いなく飛び込んで当然の時期だったわけです。
かくして、アメリカ不動産市場は徐々に回復に向かうことになりました。
それからも投資売買は広がり続けた

そしてフリップ業者が大量に買い付けた物件を購入したのは、他でもない不動産投資家達でした。
2008年以前からの不動産投資家
新規参入の不動産投資家
この双方がこの時期にフリップ業者が仕上げた物件を購入し続けたのです。
特にこの動きは2011年から2012年にかけて最も顕著でした。
フリップ業者はそもそも差し押さえ物件を安く購入していますから、リノベーション費用をかけても更に十分な儲けが出ていた為、購入価格も比較的安かったのです。
キャッシュフロー市場としてよくご紹介するメンフィス市場でも、$100,000以下で優良な投資物件は数多く市場に出ていました。
そしてここに興味深い事実があります。
前述のようにフリップ業者によるフリップ事業と、その仕上がった物件を購入する投資家の動きは同期間に非常に活発でしたが、アナリストの予想は
「ここから物件価格は上昇を始め、それに伴って投資売買は収束し始めるだろう」
というものでした。
実際、当時のその見解は的を得たものだったろうと思います。
ところが結果は全くの正反対でした。
フリップ業者の新規参入
フリップ業者による買い付け
投資家によるフリップ物件の購入
これらの動きは、本日まで増加し続けているのです。
結果として投資家の動きに押され、前述のようにスターター物件を現金購入したい一般市民もなかなか物件を購入出来ずにいます。
全米を通してみると、この動きが最も激しいのはミシガン州デトロイト市近郊です。
私(佐藤)はデトロイト近辺は避けておいた方がよいように思いますが、数字だけを見てこの地域に飛び込むチャレンジ精神旺盛な新規投資家はまだまだ多いようです。
昨年2018年に至ってはデトロイト市場のスターターレベルの成約物件は約40%が「投資目的」でした。
ちなみに昨年の売買で投資目的が多かったのはデトロイトに続いて二番手がフィラデルフィア、三番手がメンフィスとなっています。
そして気になる不動産投資市場が衰えない理由の一つ、これはズバリ「投資環境が整った」ことにあります。
アメリカは世界にも先駆けてオンラインで売買が完結するように法整備を整え、それに伴うシステムも十分に開発されています。
2008年までと今を比較した時に、圧倒的な違いがあるのがこの「アメリカ投資物件の買い易さ」なのです。
結果としてアメリカ国外から購入する投資家がますます増えており、実際に現地で物件を見ないまま購入するアメリカ国外からの投資家が増えているわけです。
アメリカ不動産市場に投資家がアメリカ国外から新規参入する傾向は、IT技術の進歩と共にますます加速していくものと予想されます。
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