こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先日こちらでもお伝えしましたが、(アメリカから見て)海外からの不動産投資に大きく急ブレーキがかかっています。
この時の項では
中国マネー
ラテンアメリカマネー
の二つに注目しましたが、
アメリカ国内の購入者
アメリカ国外からの購入者
この大まかに分けた2つのセグメントを見る時に、米国にとって外貨となるアメリカ国外からの購入者が全体的に減っているのです。
正確には近年は「激減」と言ってもよいレベル。
具体的な数字で見ていく、2018年4月から2019年3月の取引規模は約7兆8千億円でした。8兆円に届くほどの規模です。。
ところが一見凄まじく見えるこの取引、実際には前年から36%も下回っているのです。
そしてその前年、すなわち2年前は約15兆3千億円だったことを考えると取引額は約半分に激減していることが分かります。
一体何が原因でアメリカ不動産市場に外資が入らなくなっているのでしょうか。
今日は、今のアメリカ不動産市場に見られる外資流入の減速について傾向を押さえておきましょう。
外資を減速させる複数の理由

まず各国からのお金がアメリカ不動産市場に入りにくくなっている現状についてですが、これには複数の理由があります。
政治絡みの話になってしまいますが、近年の
移民政策
関税政策
この2つは確実に海外投資家を敬遠させる原因になっています。
とりわけ近年は米国と中国の関係がかなり目立ってきましたね。
そして中国のみならず、アメリカは他国とも関税でかなり揉めたことはご記憶のとおりです。
それと同時にアメリカ国内の税法改正も大いに影響しています。
現在はモーゲージの利息と固定資産税の控除に限度額が設定されてしまい、この点もアメリカ不動産の魅力を落とす要因になっているわけです。
このことを物件数で見てみると、売れた中古物件数は
2017年4月 〜 2018年3月:約266,800件
2018年4月 〜 2019年3月:約183,100件
と1年間で約83,700件の減少です。
その購入平均価格は$280,600と、全米平均の$259,600をやや上となりました。
また購入目的は、約半数となる47%が「自分の住居目的」です。
このように海外からの不動産購入者数が減る中で、先日お伝えしたような大都市のラグジュアリーホームにも陰りが見えているわけです。
そしてこの点はお伝えしたとおりですが、ハイエンド物件は引き続き供給が過剰となり、取引の契約期間も長くなる傾向にあり、結果として価格も落ちてきています。
外資の減速に影響を受けている不動産市場

今度は、このような外資の影響により最も影響を受けている不動産市場を網羅してみましょう。
フロリダ州
まずはフロリダですが、こちらは先日お伝えしたとおりです。
マイアミを中心に風光明媚な観光地にラグジュアリーホームを買い占めるミリオネアが少し前までは数多くいましたが、今は一斉に引いている状態です。
ラテンアメリカマネーの中でも特に多かったのは
ベネズエラ
ブラジル
といった国の富裕層です。
現在は各国の経済情勢と比例してこれらラテンアメリカからの外資は引き上げてしまい、ほぼその面影はありません。
カリフォルニア州
そして次に来るのが人気のカリフォルニア州です。
アメリカ不動産市場における外資の実に12%はこのカリフォルニアに落とされています。
先のフロリダ州と合わせ、このカリフォルニア州もキャピタルゲイン市場であることは共通しています。
テキサス州
その次にくるのがテキサス州です。
テキサス州はとりわけ外資の中でも
インド
メキシコ
といった国々から人気があるようです。
アリゾナ州
そして4番手はアリゾナ州で5%。
ニュージャージー州
5番手はニュージャージー州で4%。この地域とは特にイギリスからの外資が入ってくる傾向があるようです。
結果としてこれらの地域は外資が入りにくくなっている関係上、比較的ラグジュアリーホーム市場は買い手市場になりつつあります。
実際、8ミリオン以上の物件では10〜15%のディスカウントは普通に行われているようです。
出身国

このまま外国人購入者の出身国も見ておきましょう。
中国
まず一番手にあげられるのはご存知のとおり中国です。
中国は過去7年間、最も米国の不動産市場に外資を送り続けた国でした。
この中国マネーは
2018年4月 〜 2019年3月
の期間中に約1兆3千4百億円も入り続けましたが、実際には前年度同時期と比較すると56%の下げとなっています。
この理由は以前もお伝えした通りで、中国経済がスローになりつつある事実、そしてそれ以上に大きい影響は中国当局による規制が厳しくなり、国外に元を送金しにくくなっていることです。
カナダ
中国に続くのはカナダです。
カナダからは同時期に約8千億円の外資がアメリカ不動産市場に流れ込み、物件購入数としては中国人とほぼ変わらない件数で中古物件を購入しています。
中国よりもカナダの方が購入する物件価格は安いということですね。
そしてカナダ人の場合、比較的現金で購入する割合が高いのが特徴的です。
インド
3番手はインドで、約6千9百億円の外資が米国中古物件市場に流れています。
イギリス
そして4番手はイギリスで、約3千8百億円。
メキシコ
5番手はメキシコで、約2千3百億円です。
。。。
日本の場合は上位5番手にも入っていないことが分かりますね。
さしあたり、過去10年間のアメリカ不動産市場に一番影響を与え続けてきたのは中国マネーであったことが分かります。
その中国マネーが大きく失速し、全体的に大きな影響を及ぼしているわけです。
昨日お伝えしたように今のアメリカ不動産は新築市場が鈍り出し、このままでは物件価格の上昇率が再び上がるのを懸念するところ。
ともするとこの外資の減速そのものが緩衝材となり、よい意味で物件価格の安定に貢献することも考えられなくはありません。
その答えは近い将来、見えてくるはずです。
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