こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日からカリフォルニア州のforeclosure(フォークロージャー:差し押さえ)パターンについてお伝えしています。
カリフォルニア州は全米で最も早い段階で不動産法が整備されてきた経緯があります。
シリコンバレーのような最先端テクノロジー開発が活発な地域が多いカリフォルニア州ですが、不動産取引についても先進技術が積極的に開発されてきたのです。
そして現在のカリフォルニアではモーゲージで融資が行われる場合、その借入証書の形態はほとんどが「Trust Deed」となっています。
Trust Deedが好まれる理由はその条項に「power-of-sale clause」が含まれているから。
仮に債務不履行が発生した場合、この「power-of-sale clause」を行使することで債権者は裁判所手続きを介さず、すぐに差し押さえ物件を市場に売りに出すことが出来るのです。
このことをNonjudicial foreclosure(裁判所を通さない差し押さえ)といいます。
これに対し、「power-of-sale clause」のオプションがなく裁判所手続きを介する差し押さえをJudicial foreclosureといいます。
ちなみに、
Nonjudicial foreclosure
Judicial foreclosure
この二つの間にあるもう一つの違いは「Deficiency Judgmentがあるかないか」です。
Deficiency Judgmentとは
「差し押さえ物件の売却額が元金残高に達しない場合、その不足額を請求できる」
という権利で、
Nonjudicial foreclosure ⇒ Deficiency Judgmentなし
Judicial foreclosure ⇒ Deficiency Judgmentあり
となります。
とどのつまり、Nonjudicial foreclosureは裁判所を通さずに手っ取り早く差し押さえ物件を売却処理できる代わりに売却額が未返済額に達しない場合でも不足額を請求することは出来ないのです。
それでもカリフォルニア州では
・手っ取り早く処理が出来る
・結果的に、Deficiency Judgmentがなくとも損失額は少ない可能性が高い
の二点から「power-of-sale clause」を行使出来るNonjudicial foreclosureの方が好まれています。
カリフォルニア州の差し押さえ手続きの流れ
そこでカリフォルニア州ではそもそもJudicial foreclosure形式の差し押さえはほとんどないのですが、カリフォルニア州でJudicial foreclosureとなる場合の流れは一応押さえておきましょう。
1.債権者からの連絡

モーゲージ支払いが遅延した場合、まず最初に債権者は債務者に連絡を取ることが法律上定められています。
この段階では最悪のケース(物件が差し押さえられてしまう事態)を避けるべく、債権者と債務者の間で話し合いをもつわけです。
そしてこの時に債権者から債務者には「二回目の話し合いを持つ権利がある」ことを伝えることが法律で定められており、その二度目の話し合いは一回目の話し合いから14日以内に行われる必要があります。
やや前後しますが、最初の話し合い後から30日間は債権者は差し押さえ手続きを開始することは出来ないルールになっており、その間に債務者の希望に応じて二度目の話し合いがもてるのです。
またこの話し合いは債務者本人が債権者と対峙する必要はなく、有資格カウンセラーや不動産弁護士に代理で対応頂くことも可能とされています。
2.差し押さえ物件として申請

そして話し合いの結果でも残念ながら解決策が見えてこない場合、債権者は最初のミーティングから30日以降に管轄郡の役所に物件を差し押さえ物件として申請することが出来ます。
このことを「Notice of Default:債務不履行通知」といい、債権者はこのNotice of Defaultのコピーを申請日から10日以内にCertified Mail(配送完了後に配送と受取完了のハガキを返送してもらえるサービス付き郵便)形式で債務者に郵送する義務があります。
そして債務者はこのNotice of Defaultのコピーに記載されているNotice of Default申請日から90日間は「遅延している金額を支払うことで差し押さえを取り下げる為の猶予」が与えられるのです。
<参考>
この「2」までの段階で本格的に差し押さえ手続きが開始されることになりますが、Notice of Default申請の通知を受け取った後で債務者は注意しなければならないことがあります。
何かといえば、Notice of Defaultは公に晒される情報ですから直後にあらゆる業者から
「現在の差し押さえ状況はこうやって回避できます!」
という趣旨の広告がどんどん届くようになるのです。
そこにはまことしやかな救済策が書き並べられていますが、十中八九「詐欺」です(申し込んでお金を支払っても何の救済策も行われない)。
家を失うかもしれない窮地を更に追い込むかのように騙そうとする輩が多い事実には本当に辟易させられるものですが、もしもあなたの周りにNotice of Defaultを受け取った親族がいたとして、
「あの後別の会社から手紙が届いて、自分の差し押さえ状況を回避させてくれるみたい」
などという方があれば、迷うことなくその申し込みは止めて差し上げてください。
差し押さえ物件に対する第三者の救済策が本物だった事例は聞いたことがありません。
明日に続けます。
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