こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサル タントとして働く佐藤です。
投資対象となる商業不動産物件の取引で使われる指標に
Capitalization Rate(キャピタリゼーション・レート:キャップレート)
と呼ばれるものがあります。
詳細は上記のリンク先のとおりですが、商業物件の場合はその投資に対する収益性を計る上で
Capitalization Rate = Net Operating Income / Current Market Value
キャップレート = 年間純利益 / 現在の市場価値
このような公式が用いられます。
例えば下記のような商業物件があったとします。
現在の市場価値:$1,000,000
年間家賃収入:$90,000
年間諸経費:$20,000
これを公式にあてはめると
キャップレート =($90,000 - $20,000) / $1,000,000 = 7%
ですから、その商業物件は
「キャップレートが7%だ」
と言えることになります。
ポイントは上記公式で割り算の分母となる「 現在の市場価値」です。
事実、商業物件もまたその価値は月日を経るごとに上下します。
テキサス州ダラス市のような上がり調子の市場では商業物件価値も上昇し続けるでしょうし、ビジネス街としての絶頂期をとっくに過ぎて閑散とした地域が広がる都市では商業物件の価値も下がっていきます。
そうするとその物件を購入した時の購入価格ではなく、あくまでも「その時の市場価値」がキャップレート公式の分母に置かれるべきなのです。
すなわち、キャップレートの本来の性質としては
「今の価値をみて、間近の将来の投資成績を計る指標」
と言えます。
そこでもう少し具体的に掘り下げると、同地域に存在する類似の商業物件であればそこにかかる諸経費はほぼ同じになります。
そうすると上記の例でキャップレートは7%ですから、同地域の同種類の商業物件の市場価値が$1,500,000だとすると年間純利益は
$105,000 = $1,500,000 × 7%
との予想が成り立つわけです。
キャップレートの高低に良し悪しはない

そこで本題はここからですが、不動投資の世界でそれなりの頻度で聞かれるのが
「キャプレートは高い方がいい」
という説です。
その物件の市場価値にキャップレートを掛ければ年間純利益が出てくるわけですから、例えば市場価値$1,000,000であれば年間純利益は
7% = $70,000 (1,000,000 × 7%)
8% = $80,000 (1,000,000 × 8%)
9% = $90,000 (1,000,000 × 9%)
と、キャップレートが高ければ高いほど年間純利益は大きくなります。
そうすると数字だけを見ると「キャプレートは高い方がいい」という言葉は信じてしまいたくなるものです。
ところが現実にはこの認識は間違いで、キャプレートには「このあたりの割合が良い」という明確な定義はありません。
その理由は、キャプレートはそれぞれの市場で数字が変わり、また物件状態によっても数字に違いが出るからです。
市場の違い
不動産市場とは地域市場の塊ですが、さほど離れていない地域に
市場A
市場B
の二つの市場があったとしましょう。
距離そのものはそれほど離れていないにせよ、これらの地域では
人件費
材料費
固定資産税率
等に違いがあるとします。
そうすると市場Aでは年間諸経費は$20,000だったとしても、市場Bでは年間諸経費が$25,000である場合があります。
結果としてこの場合は同種かつ同じ市場価値の商業物件であったとしてもキャプレートは市場Bが悪くなるはずです。
ところが、現実の世界では市場Bの方が体力のある企業が揃っている傾向があります。
どういうことかと言えば、諸経費がかかるということは
人件費が高い
材料費が高い
固定資産税高い
すなわちこれは「市場のランクが高い」ことを意味しています。
そうすると長く居座る企業が多い可能性も高く、また稼ぎのいい企業が集まる傾向も市場Bの方が高いはずなのです。
物件状態の違い
そしてキャップレートによって良し悪しが語れないもう一つの理由は、物件の状態の違いです。
このことは言い換えると経年劣化の違いともいえるかもしれません。
経年劣化が進むということは修繕頻度が高くなり、維持費にそれだけコストがかかってしまうことになります。
そうすると同種の物件であったとしても築60年の商業物件の場合はそれだけ維持費がかかってくるはずです。
けれども、この物件が人気市場に立地しているのなら(マンハッタンとか)家賃は相当に高額なはず。
そうするといよいよもってキャップレートがどの按配にあれば投資効率が最も良いのかは不明確になります。
結局のところキャップレートは
「同じ市場の類似物件の比較において有効に働く」
というものであり、それ以上でもそれ以下でもなく、「この数字ならリターンがいい」ということはないのです。
。。。
とは言うものの、実は投資家としては知っておいた方がよい別の事実があります。
それは、
「キャップレートは高い方がリスクが大きい」
という投資経験のあるものにしか見えてこない事実です。
明日は、キャップレートとリスクの関係について見ていきましょう。
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