こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサル タントとして働く佐藤です。
昨日から
Capitalization Rate(キャピタリゼーション・レート:キャップレート)
についてお伝えしています。
キャップレートは本来、投資対象の商業物件を吟味する際に使われる指標です。
キャップレート = 年間純利益 / 現在の市場価値
この公式においてあなたが商業物件を購入した金額が$1,000,000であり、当時の見込み年間家賃収入$90,000に対して見込み年間諸経費が$20,000であれば、そのキャップレートは
キャップレート =($90,000 - $20,000) / $1,000,000 = 7%
となります。
そしてその後に実際に運用を開始し、年間家賃収入と年間諸経費が実際にそのままの数字で推移したとします。
けれども3年後、家賃収入と諸経費はそのままで物件価値だけが$1,200,000に上昇したとするとキャップレートは
キャップレート =($90,000 - $20,000) / $1,200,000 = 5.8%
に下がってしまいます。
このようにキャップレートはあくまでも「その時点の市場価値」で計算することが鉄則です。
そして話はここからですが、「キャプレートは高い方がいい」という誤認がそれなりに広くありますが、これは真実とは違います。
その理由の一つは昨日お伝えした通り、「キャップレートは同じ市場の類似物件の比較においてのみ有効に働く」という、いわばナマモノの情報でしかありません。
キャップレートはそれら購入検討物件と比較対象物件の間でのみ意味を成す数値であり、市場と物件の状態でもキャップレートは変化することから
「キャップレートはこの範囲の数値が適正」
という定義そのものが存在し得ないのです。
そして二つ目に、現実には「キャップレートは高い方がリスクが大きい」という事実があります。
今日は、キャップレートとリスクの関係について理解を深めてみましょう。
高すぎるキャップレートには注意

「キャップレートは高い方がリスクが大きい」
という見方について、分かりやすく実例でいきましょう。
例えば
面積
築年
間取り
が全く同じ、二つの商業物件が隣接していたとします。
更に比較条件を同じにするべく、この二つの商業物件にはそれぞれ同業種が入居することになったとします。
その業種は郵便・運送を手掛ける
USPS(アメリカ合衆国郵便公社)
FedEx(フェデックス・コーポレーション)
としましょう。
この場合、キャップレートが高いのはどちらになると予想出来ますでしょうか。
株式投資をされている方々はすぐにピンとこられると思いますが、上記の二つでキャップレートが高い傾向があるのは後者のFedExです。
すなわちこの二者の違いは
公的機関
民間企業
であり、得てして企業努力が果敢に行われるのは後者である傾向があります。
競合他社(FedExの場合は対UPS)としのぎを削って「出すを抑えて入るを増やす」というシンプルな原理に果敢に挑戦し、支出減と収入増を心がけていくわけです。
結果として公的機関と民間企業の純利益を比較すると、後者に軍配が上がる傾向にあり
キャップレート = 純利益 / 物件市場価値
の公式でいくと、当然上記の比較ではFedExのキャプレートが高くなる傾向にあるのです。
ところがです。それならばキャプレートは高ければ良いのかというと、、
これは誰にでも想像に容易いと思いますが、公的機関と民間企業でリスクが高いのは後者です。
前者の公的機関は国(ひいては国民の税金に)に守られていますが、民間企業の場合は稼ぎがあっても同時に守ってくれる後ろ盾の資金や政策などはありませんから、リスクが高くなります。
そうすると、この例では比較的安定して安心なのはキャップレートが低いUSPS(アメリカ合衆国郵便公社)だということになります。
そして実際に、上記の二者でどちらが同じ商業物件に長期間留まる可能性が高いかといえば、 安定している USPS(アメリカ合衆国郵便公社)でしょう。
そうすると投資家としては、 USPS(アメリカ合衆国郵便公社)に入居してもらう方がより安全なのです。
かくして、キャップレートが高ければよいという論は成り立たないことになります。
住居物件の場合は

そこでこのキャプレートは高い方がいいという考えが正しくない事実は、住居用物件投資への考え方にもそのまま適用できます。
住居用投資物件を判断するときに使われる指標に「実質利回り」がありますね。
にわかキャップレートと実質利回りは
キャップレート = 純利益 / 物件市場価値
実質利回り = 純利益 / 物件購入価格
と公式が似ていることからキャップレートと実質利回りは同義に捉えられることがありますが、厳密にはこの二つには明確な違いがあります。
実質利回りの分母はあくまでも自分自身が実際に購入した際の物件価格ですから、その後の運用期間中もこの分母は変わるべきではありません。
もちろんキャップレートと同様にその物件を購入するにあたり将来の収益を予想する上では有効ですし、私(佐藤)も投資家の皆様にプロジェクションをお見せする際には表面利回り・実質利回りの数字は並べてお見せしています。
そして物件を購入してから運用開始後に物件そのものの価値に上げ下げが発生するものの、少なくとも購入価格に対する年間利回りを見立てる分にはそれなりに役に立つものです。
例えば$200,000の物件に対して
年間家賃収入:$18,000
年間諸経費:$4,000
だとすると、実質利回りは
($18,000 - $4,000) / $200,000 = 7%
となります。
そうするとこの場合も
$200,000 × 8% = $16,000
$200,000 × 9% = $18,000
と実質利回りの割合が高ければ高いほど年間純利益は多いことになりますから、「キャプレートは高い方がいい」と思いがちになってしまうものです。
けれども現実の不動産投資の世界ではそんなことはありません。
やはり商業物件で使用されるキャップレートの概念と同様に、「 実質利回りは高い方がリスクが高い」という側面があるのです。
明日は住居用物件の実質利回りとリスクの関係について、より深く見ていきましょう。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。