こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサル タントとして働く佐藤です。
頻度の高いご質問の一つに「家賃の値上げについて」があります。
賃貸契約を何年間結ぶかは法律で定められているわけではありませんので、何年間契約を結ぶかは
オーナー
テナント
この両者の交渉次第になりますが、通常は住居用の賃貸物件であれば賃貸契約は1年間です。
ちなみに商業物件の場合は複数年結ぶパターンが主流となっています。
そもそも商業物件にオフィス・店舗を出すということはビジネス目的で入居するはずであり、ビジネス目的で入居する以上は利益を上げ続けながら事業を存続させる前提があります。
事業が拡大して大きな商業スペースに引っ越すパターンはあり得るものの、1年単位でコロコロとオフィス・店舗を代えることは事業主にとっても利点が多くありません。
結果として、商業物件は暗黙の了解で数年単位(標準は3年間)での契約が主流となっているのです。
これに対し、住居用物件の場合は引っ越しの頻度がそれなりに高くなります。
平均的なアメリカ人は人生で最低4回以上は引っ越しをすると言われており、日本のように「先祖由来の土地を守る」的な概念はほとんど見受けられません。
土地に執着することなく、あくまでも自分の生活の利便性を主体に合理的に判断して躊躇なく引っ越しを繰り返していくのです。
そうするといつ状況が変化して引越しを余儀なくされるか分からない多くのアメリカ人にとっては、長年の契約に縛られるよりも年間更新で契約しておきたいわけです。
そこであなたがアメリカに賃貸物件を所有している場合、賃貸契約が前述のような年間契約ベースであれば1年に1度は
更新
もしくは
退去(ターンオーバー期間)
のいずれかは必ず発生することになります。
願わくば、オーナーとしては良質なテナントから安定した家賃収入を頂き続けたいもの。
そうすると、契約期間終了前にテナントには値上げ分を含めた翌年の家賃について提案することになりますが、実際にはいくらぐらいの値上げで提案するべきなのでしょうか。
今日は、住居用物件の家賃値上げについて考えてみましょう。
市場賃貸価格の変化に合わせる

住居用物件の家賃を値上げする際の最も無難な目安は、その物件が立地する地域市場の賃貸価格の変動に合わせることです。
改めて背景を考えると、不動産賃貸においてもまた需要と供給の概念がそのまま当てはまることになります。
需要が多いのに供給が少ない → 値段は上がる
需要が少ないのに供給が多い → 値段は下がる
この二つで考えた時に、今のアメリカ賃貸市場はほとんどの地域で前者の状況にあります。
アメリカの多くの地域が
・人口は増加傾向
・けれども住宅の供給が間に合わない
の式で需要に対して供給が追いついていないわけですから既存賃貸物件の価値は上がり、それに伴い家賃は上昇することになるのです。
それでは
「いくらぐらい家賃は値上げされるべきか?」
となると、一番無難な方法はその地域市場の賃貸上昇率に合わせることです。
家賃上昇率には州毎に(地域市場毎に)上限が定められていますが、いずれにせよ
地域市場の賃貸上昇率 〜 上昇率上限
の範囲で言えば、一番無難なのは上記範囲の最小値で地域の賃貸上昇率に合わせることです。
その理由は、最終的には賃料についてもオーナーとテナント双方の交渉となる中で地域市場の動きに合わせる方がテナントにとっても
論理
感情
の双方で、最も無難に腑に落ちる傾向があるからです。
テナントにしてみれば市場の上昇率と同じであれば文句の言いようがありませんし、感情的な摩擦はほぼなく「致し方ない」と受け入れざるを得ないことになります。
安定した家賃収入を入れ続けたいのであれば

とはいえ、このアメリカ不動産市場の「賃料は年々上昇し続けるもの」という現状をうまく取り入れればより安定した家賃収入を得られることにもなります。
その代表的なテクニックが
「今回は1年更新ではなく3年更新でいかがでしょうか。その代わり賃料は値上げさせず、据え置きでよいです」
あるいは契約年数すら縛らずに
「今回の更新時は値上げはなしにしましょう。家賃は本年のままで良いです。」
と値上げはしないことです。
テナントの気持ちになってみると
→ 来年以降の家賃は高くなる
→ 家賃は据え置きのまま
このどちらを好むか、答えは火を見るよりも明らかです。
「値上げは大好きです。ぜひお願いします!」
などと家賃上昇を乞い願うテナントはまずいないでしょう。
自分が暮らす地域市場の家賃がどんどん上昇する中、オーナーから
「来年一年も値上げせず、同じ家賃でもいいですよ」
と提案されたらいかがでしょうか。
事実、物件オーナーの中には全く家賃を値上げせずに10年単位でテナントを住まわせ続けさせる人々もいます。
この場合、当然ながら時が経てば経つほどその物件の家賃は周りの市場賃貸価格と比較すると乖離が大きく出てくるのです。
そうすると大概のテナントは
「
ここを出ると、どこに引っ越しても一気に高い家賃を支払う必要が出てくる。
それならこの賃料でこのまま出来る限り暮らしたい。。
」
このような心理パターンになってくるものです。
・そもそも引っ越しは億劫
・家賃は(市場賃貸価格と比べて)安い方がよい
⇒ それなら動きたくない
このような考えるのは人の心情ですね。
実際に現在のアメリカ賃貸市場ではこのパターンは決して珍しくなく、キャピタルゲイン市場であれば近所の同じ間取りの物件で家賃に$1,000以上の差が出ているパターンもあります。
こうなると、テナントとしてはよほどの理由がない限りはまず出ていこうとは思わないものです。
その結果としてオーナーは安定した家賃収入を得られることになります。
けれどもこの家賃据え置きのパターンをとる場合、オーナーとしては「運営コスト」にはよく気を使う必要があります。
代表的なものは
固定資産税
保険料
修繕費用準備金
の3つです。
オーナーが家賃を上げようが据え置きにしようが、固定資産税は高い確率で毎年上昇していきます。
同様に保険料も多少の値上がりは発生して然るべきですし、また修繕費用も物件の古さに応じてそれなりに見積もっておく必要があります。
家賃収入が同じなのであればこれらの値上がりはそのままオーナーの負担となるわけですから、キャッシュフローが下がってくることは避けられません。
家賃が上昇せざるを得ない理由は需要の増加のみならず、オーナー負担となる運営費の上昇にも理由があるわけです。
最終的にはオーナー自身の
「どのくらいの利益を残したいのか」
というキャッシュフローの数字に帰結しますから、オーナーとしてはこのあたりのバランスを考えつつ、家賃上昇についてはよく検討する必要があります。
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