昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサル タントとして働く佐藤です。
過去の項で何度か南カリフォルニアの山火事について触れています。
2017年
2018年
2019年
と、近年南カリフォルニアでは毎年山火事が発生し、多くの家屋が一部もしくは全焼の憂き目に合っています。
これらの地域では建物の再建が今でも継続されており、現場には多くの建築業者が集められ、これを起因としてそれでなくても慢性的な住宅不足が続いている南カリフォルニアでは更に住宅不足が深刻となっています。
同時に、この再建計画から派生しているのは労働力の高騰化です。
腕の良い業者は急を要する山火事後の再建に駆り出されています。
この結果、建築業者の価格は高騰。
街で確保できる労働力は以前よりも少なく、安かろう良かろうではない業者に対して良質な業者並の賃金を支払う状況になっているのです。
山火事から波及的に起こっている労働力の問題は今しばらく続きそうです。
そしてここに、建設現場の再建以前の問題が発生してきています。
住宅を所有するオーナーにとっては欠かせない、「火災保険」の問題です。
今日は、南カリフォルニアの山火事が発生した地域で起こっている火災保険の問題について焦点を当てていきましょう。
高騰化する火災保険
2017年から立て続けに発生している火災保険ですが、結論から言えば2017年と2018年の2年間だけでも保険会社が負担した補償額はなんと約2兆5千億万円に登っています。
天文学的とはまでは言わずとも、相当な補償額です。
被害に合われた方々は災難で本当にお気の毒ですが、保険会社にとってもまた予想もしない多額の補償に立ちいかなくなっています。
結果として必然的に起こってくるのが
・補償基準の厳格化
・保険価格の高騰化
の2つです。
そして実情を言えば、南カリフォルニアの多くの保険会社では保険契約の契約更新で
「次回の契約からは火災補償は含まれません」
という、火災に対する補償そのものを拒否する保険会社が続発しています。
保険会社の事情を考えると火災補償そのものを補償内容から外す、という選択肢も理解出来なくはありません。
例えば昨年2019年も南カリフォルニアで山火事が発生し、この時はかの有名なロサンゼルス空港最寄りのポールゲティ美術館のすぐそばまで火の手が回ってきていました。
美術品こそ影響はありませんでしたが、その周囲にはロサンゼルスダウンタウンを含めて民家が数多くあります。
この傾向が毎年続くようでは、保険会社としては火災保険そのものを打ち切る判断も致し方ないと思うのです。
物件が売れにくい
そして問題はここからですが、とりわけ山火事が発生した地域では想定通り「物件が売れにくい」という状況が発生してきています。
これはハリケーンに伴う洪水被害の場合もそうですが、一度でも大規模な自然災害が発生した地域では物件価値は大きく下がる傾向にあります。
これは「自然災害は同じ場所で再発する可能性が高い」という理解で人々が災害が発生した地域を避ける傾向がある為です。
事実山火事や洪水の類は同じ場所で定期的に発生する傾向があり、「洪水指定市域」や「土地陥没の可能性がある地域」なるものが存在します。
この為、私もクライアントの方々が持ってこられた物件をスクリーニングする際には必ず洪水指定の地域に入っていないかはチェックします。
「この物件は安い!」
と喜んで持ってこられても、実はその一帯は過去に洪水被害が発生した為に安くなっているとはよくあることだからです。
必然、2017年から引き続いている南カリフォルニアの山火事が発生した地域(その周辺地域も含め)では同様の現象が起こっています。
「この物件はかなり安いですよ。けれども山火事の頻度は高いのでその点は了承しておいてください。」
このように伝えられる物件を迷いなく購入する人はそういるものではありません。
仮に新築で内装が自分好みに100%合致していたとしても、リスクを考えると積極的に購入出来ないのが人の心情というものです。
そしてこれに追い打ちをかけるのが火災保険です。
前述のとおり多くの保険会社がこれら山火事の危険性がある地域での保険契約の補償内容から火災補償を抜く動きが始まっています。
或いは火災補償そのものは引き続き契約内容の一部として残されたとしても、その保険料が2016年までの価格から激しく高騰しているのです。
そしてここに、大きな矛盾が生じてきています。
山火事の傾向が続いている地域では、その購入条件として買主が
「火災保険加入必須」
を求められるパターンが多く出てきているのです。
この地域を担当するケラー・ウィリアムズに所属するリアルターの話ですが、彼女の場合は2018年は9億円超えの売上を立てたものの、2019年の実績は4.9億円にまで大きく下がってしまいました。
購入希望者が火災保険を用意出来ない取引が続出した為です。
実際のところ火災保険を準備する場合、値上がった火災保険はどれくらいの相場になっているのでしょうか。
明日は、南カリフォルニアの火災保険事情について数字で見ていきましょう。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。