こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサル タントとして働く佐藤です。
トランプ政権による2021年度の予算案が発表されました。
それによると、
HUD(アメリカ合衆国住宅都市開発省)
を中心とする米国の住宅関連政府機関は今回もまた予算削減の憂き目を見ることになりそうです。
アメリカの連邦政府運営にあたり毎年の予算分配は当然ながら現職大統領の方針に大きく左右されることになります。
現トランプ大統領の政策でとりわけ予算増の対象として目立つのは
軍備増強
メキシコとの国境の壁
宇宙開発
等です。
軍備増強に関しては今さら語るまでもありませんね。
その国が国防にどれだけお金をかけているかは、その国が世界に与えるインパクトにそのまま比例する傾向があります。
米国の場合は国防にかける予算は約80兆円とダンドツの一位。
それに対して近年の中国は国防に費やす予算を毎年増やし、2019年は約20兆円でした。
中国の国防費は米国に次いで世界で2番目となっています。
日本が国防にかける予算は現在約5兆円ですから、中国はその約4倍を国防に費やしていることになります。
そうすると、アメリカとしてはとりわけ中国の動きを見て国防予算をさらに充実させなければならない事情があることは察しがつきます。
同時に注目したいのはNASAの予算が2021年には12%もの予算増が組まれていることです。
「アメリカの未来の為の予算」
と分かりやすいタイトルがつけられた今回の予算案でも「強いアメリカを再び」と主張するトランプ大統領の意向が大きく働いているようです。
その一方で、これら予算増額分を賄える税金からの歳入増がない限りは従来の予算割り当て項目から
項目そのものを削る
予算を削る
のいずれかで対応するしかありません。
結果、アメリカ不動産業界(言い換えると住宅問題)にかけられる予算は大きく削られる案となっています。
今日は、アメリカ政府による2021年度予算が不動産業界に与える数字のインパクト、また投資家にとってその予算減がどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
住宅問題への予算が削られる

連邦政府機関であるHUD(アメリカ合衆国住宅都市開発省)の役割の一つとして最も大きなものは、割り当てられた予算を米国内の住居確保が難しい人々に効率的に資金面で支援することです。
もっぱら、独立精神を期待するアメリカの風土と教育方針では博愛精神から手を差し伸べることはあっても
「差し伸べた手にいつまでも甘やかさせてはいけない」
という前提があります。
支援はするものの、そこには必ず自立を促す方針があるものです。
とりわけ今のアメリカで深刻な問題の一つは
住宅価格の上昇
賃貸価格の上昇
です。
これらの住宅価格と賃貸価格の上昇に賃金の上昇がついていけばまだ問題はないのですが、実情としては失業者は50年来の低失業率となっている一方で、インフレ率と比較して賃金が上昇しているわけではありません。
結果として衣食住という、命を長らえる上で必要不可欠な要素のひとつである「住」に関わる費用が国民にとって大きな負担になっているのです。
このことを労働者に言わせると
「生活費の中で家賃が最も大きな割合を占めており、いつも心配が拭えない」
という異口同音の意見があります。
とりわけ住に関して困窮しているのが低所得者の方々です。
所得増が家賃増に追いつかない現状では、多くの場合は賃貸物件をダウンサイジングして安い賃貸に移り住むか、最悪の場合はSection 8のような公共支援システムに頼らざるを得ません。
その支援も追いつかない証拠として、近年は各都市のダウンタウンやその郊外でホームレスの数が増えていることが社会問題になっています。
ここにきてHUDの予算が更に削られることは益々支援の範囲が限られてくることに他ならず、その結果は治安悪化の原因にもなるものです。
ちなみに前年度の予算案ではHUDの予算を16.4%カットし、約4兆4千億円にまで削減する計画でしたがこれは議会を通過はしませんでした。
今回の予算案も現時点ではあくまで案に過ぎませんが、もしも議会を通過するとなれば人々の住の確保には大きなインパクトとなりそうです。
トランプ政権が望むHUD予算の使い道

本項ではトランプ政権にケチをつける意図はありませんが、それでも事実としては「再び強いアメリカを」という方針の下では住宅にはさほど関心が向けらえていない様子。
それでも一応、トランプ政権としてはHUD予算が振り向けられる方向性は下記のように期待されているようです。
- シニア世代と障害をお持ちの市民の為に、1,200戸の新築住居を確保する為に約180億円
- ホームレス支援のプログラム、またホームレス支援の団体設立の資金に約2,800億円
- 鉛製ペイントの除去や一酸化炭素中毒被害の予防等、健康と安全への対策に約425億円(昨年より約90億円増)
- FHA(連邦政府住宅管理局)の管理システム改善やリバースモーゲージの強化に約20億円
これとは反対に見逃せないのは、「住宅投資関連プログラム」の予算は大きく削られる案になっていることです。
改築前提の物件購入
低所得者用の物件改築
これらの予算はバッサリと削除される方向で検討が進められています。
ということは自治体レベルではこれらの支援を今後も継続する為には連邦政府の支援は期待出来ず、州政府・郡・市のレベルでその負担を検討しなくてはならないということです。
結果として、
海岸沿いの都市
南部(特にテキサス州)
等の人口がどんどん増える地域では、改築資金に政府支援がなくなる問題は遠からず表面化することになるでしょう。
。。。
かくして米国政府の住宅に対する予算は削られる案となっていますが、皮肉にもこの傾向は不動産投資家にとっては有利になることもまた事実です。
全国規模の住宅不足 ⇒ 引き続き賃貸需要は続く
投資関連の政府サポートはなくなる ⇒ プロミゾリーノートのようなプライベートファンドの需要が高まる
これらの式で、アメリカ不動産市場を投資の観点からみると今後益々不動産投資対象としての手堅い市場が形成されてくることになるでしょう。
現トランプ政権の来年度予算案がどのように転ぶか、引き続き注視しておきましょう。
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