昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)
についてお伝えしています。
モーゲージ・フォーベアランス
は
「差し押さえ権利の差し控え」
という意味ですが、これにより家を失わずに済んでいる人々が増えつつあります。
ケアーズ法が制定された3月27日以降、それまでにもモーゲージ・フォーベアランスで免責期間にあったモーゲージを含めた件数の推移は
5月までに400万件を突破
6月までに470万件を突破
と5月までに一気にフォーベアランスが増えた後、6月からやや勢いが緩んでいることが分かります。
実際のところ、モーゲージ・フォーベアランスを申請する人々の中には
「支払いはまだ大丈夫だとは思うけど、もしも支払いを落としたときのために申請しておこう」
という人々も多く、認可されても行使しなかった人々がいたことも事実です。
けれどもそんな「認可されたけれども今までどおり支払った」という人々の数は承認者数のうち
4月 … 44%
だったものが
5月 … 22%
と一気に半分に下がり、5月からはモーゲージ・フォーベアランスを認可後に実際に行使した人々はほぼ8割になっています。
この傾向はその後にどのように進んでいったのでしょうか。
この点についてはモーゲージ・フォーベアランスに関する6月以降の動きを見ると
人々の心理的な側面
今後に予想されるモーゲージの動き
が垣間見えてきます。
今日も続けます。
モーゲージ保有者に見られる2つのグループ
4月と5月まで一気に増え続けたモーゲージ・フォーベアランスの申請数ですが、実は6月からは申請数が下がる傾向に入りました。
数字だけで見れば、
「モーゲージ・フォーベアランス申請数は5月がピークだった」
といえるのです。
自分が住を失うかどうかの話ですからモタモタするわけにはいかず、自分に必要と思われる人々は5月までにはほぼ一斉に動いたことになります。
その後に7月28日の時点ではフォーベアランス申請者は
全体のモーゲージの7.7%
となりましたが、厳密に言えばこの数は前の週より17,000件ほど少ない数です。
フォーベアランス申請者そのものは毎週徐々に減っており、結果として8月上旬の時点ではフォーべランスの数は410万件にまで下がっています。
ここまでで分かるのは
- モーゲージ・フォーベアランスの認可数は5月までに470万件一気に増えた
- そこから支払いが再び出来るようになったモーゲージ件数が60万件ほど
- 8月の時点でモーゲージ・フォーベアランス認可数は410万件
ということです。
ただし、ここで読み取っておきたいのはモーゲージ・フォーベアランス申請者には
連邦政府保証付きのモーゲージ
連邦政府保証がないモーゲージ
の2つのグループに別れます。
ケアーズ法が直接的に保護するのは前者であることはお伝えした通りなのですが、その申請数の内訳を見ると7月の時点までで
連邦政府保証付きのモーゲージ ⇛ 申請者が増加
連邦政府保証がないモーゲージ ⇛ 申請者が減少
という見逃せない事実があります。
数字でいえば7月末の時点では前週よりも17,000件ほど少なくなったものの、その反対に連邦政府保証付きのモーゲージは18,000件ほど増えているのです。
ということは7月末だけを見れば連邦政府保証がないモーゲージの方は35,000件ほど減少している一方で、連邦政府保証付きのモーゲージは申請者が増加し続けている計算になります。
ここに
連邦政府保証付きのモーゲージ
連邦政府保証がないモーゲージ
というアメリカモーゲージの2つのグループの明暗がはっきりと見えるのです。
明暗を分ける理由
連邦政府保証付きのモーゲージが未だ申請件数が増加する一方で、連邦政府保証がないモーゲージだけが申請件数が減少している原因はなんでしょうか。
この2つの違いを理解する上では、連邦政府保証付きのモーゲージの性質を理解しておく必要があります。
例えば連邦政府保証付きのモーゲージであれば
FHAローン … 初めて自分の住宅を購入する個人に提供される政府保証。頭金は3.5%という低さでも融資が可能。
VAローン … 退役軍人用のローンプログラム。頭金がゼロでも融資を受けることが出来る。
という特徴があります。
どちらにも共通するのは
「低い(或いはゼロの)自己資金でモーゲージを組める」
という点です。
すなわち、米国政府による
「少しでも多くのアメリカ市民に住宅購入の機会を与えたい」
という方針から政府保証をつけて住宅普及を目指しているわけですから、その条件は必然的に通常のモーゲージプログラムよりも甘いものになります。
けれども安い自己資金でモーゲージを組めるとはいえ、
「金利が極端に安くなる」
わけでもなければ
「過去の滞納分が免除免除される」
わけでもありません。
そしてこれらのモーゲージを組む人々は多くの場合、経済的な余裕がないからこそこれらのプログラムを活用するわけです。
ということは、審査基準の厳しい通常のモーゲージと比べると
「連邦政府保証付きのモーゲージは、経済が落ち込むと債務不履行が発生する可能性が高い」
ということが言えると思います。
結果として前述の
「連邦政府保証がないモーゲージによる申請件数が減少している一方で、連邦政府保証付きのモーゲージは未だに申請件数が増加している。」
このことはある意味、必然かもしれないのです。
そしてまずは来る9月、210万件のモーゲージがモーゲージ・フォーベアランスの期限となります。
それまでに売り主は滞納分を工面できない場合、
- リファイナンスする
- 売却出来るうちに売却して賃貸物件に引っ越す
このどちらかを判断せねばならないことになります。
俗に不動産業界で言われる
「債務不履行を避けんとする努力は経済にとって活力になる一面もある」
とはこの意味であり、この局面が軟着陸の展開を迎えることを祈るばかりです。
9月からの市場の動きについて、より注意深く観察していきましょう。
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