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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
マルチファミリー物件のデュー・デリジェンスについてお伝えしています。
一棟に五世帯以上が入る物件の場合、住居用であったとしても商業物件のカテゴリーに分類されます。
そして商業物件に属する建物を精査する場合、そのポイントは
1.数字の精査
2.物件内の精査
3.外観の精査
4.政府基準の精査
5.現行の契約事項の精査
という5つのカテゴリーに絞られます。
これらのカテゴリー一つひとつを精査することで「その物件の博士」を目指し、
「この物件について知らないことは何もない」
というところまで把握しきることがキモです。
そしてこれら5つのカテゴリーの中でも最重要と言えるのはやはり
1.数字の精査
です。
物件を購入する目的は
毎月の(年間の)キャッシュフロー
期待できる減価償却
等の「数字」にあるわけですから、とりわけキャッシュフローについては対象物件が
「たった今どれだけ稼げるのか」
「将来のポテンシャルはどれくらいあるのか」
を把握することは極めて大切なのです。
そこで今日はマルチファミリー物件に対するデュー・デリジェンスシリーズの最重要事項、数字の精査からみていきましょう。
1.数字の精査
通常はマルチファミリー物件にオファーするにあたり、売り主が
Pro forma(プロフォーマ)
と呼ばれる資料を用意しています。
日本語では「仮の見積もり」「形式上の見積もり」等で訳されていますが、マルチファミリー物件の場合はニュアンスを取れば
「見込み試算表」
あるいは
「収支シュミレーション」
のようなものです。
そこには対象物件から期待できるあらゆる数字が記載されており、購入希望者はそれを見て
- 年間収入
- キャップレート
等をざっくりと見立てることが出来ることになります。
とはいえ、シュミレーションはあくまでもシュミレーションです。
このことは数字のみに限った話ではありませんが、不動産取引においては
「信用するけれども信頼はしない」
そんな姿勢が大切です。
こう書くと何となく冷たいように聞こえますが、あまり露骨な表現は避けたいものの、世の中には綺麗事では片付けられない場面にも遭遇するのも事実です。
売り主は実際は良い人かもしれません
関係する業者も特に悪意はないかもしれません
けれども最終的には責任を被るのは買い主である自分ですから、自己責任の上に
「信用はする。けれども本当かどうかは自分で確かめる。」
そんな気負いが必要だと思います。
その上でプロフォーマに出てくる数字を見ても
「あくまで参考にするけれども、自分で真偽を確かめる。」
という姿勢に終始しましょう。
ここから具体的にいきます。
✔ 収入と支出
まずは数字の精査の中でも最も重要ともいえる「収入と支出」です。
マルチファミリー物件を購入する際の成否はこの収入と支出に大きく依存してきます。
そこで収入と支出を精査するにあたり、少なくとも「過去24ヶ月間の帳簿」を入手しましょう。
この帳簿を精査する中で
・この物件の運用に必要な年間予算はいくらか
・予算が垂れ流しになっている部分はどこか
・空室率が高まる時期はいつなのか
・通常はありえない支出があるか
等の特徴を掴んでいきます。
疑問に思われる部分は一つひとつメモを取り、後から売主(ブローカー)に質問をぶつけます。
その質問の答えから証拠が必要なものは、その証拠を取り寄せるようにしましょう。
✔ 各種サービスの契約書
対象となるマルチファミリー物件は現在形で運営がなされているわけですが、その物件を運営する中で外部業者に委託している契約中のサービスは必ずあるはずです。
・物件管理会社による管理サービス
・管理会社が雇っている下請け業者
・空室を埋めるための広告サービス
・毎週のゴミ回収
等、物件運営にあたり長期契約が結ばれているサービスの契約を全て洗い出します。
厳密には売買契約期間が終了する時にはそのサービスが終了しているものは省いてもかまいませんから、目安としては
「30日以上の契約が残っているサービス」
でよいと思います。
これらはいわゆる支出の一部になるわけですから、その数字が適正かどうかをしっかりと精査する必要があります。
✔ レントロール
家賃に関する過去から現在までの記録が記載されているものをレントロールと呼びます。
このレントロールをもって
実質収入(Actual income)… 現在の家賃価格
実質見込み収入(Actual potential income)… 現在の賃貸市場家賃価格
潜在見込み収入(Future potential income)… 修繕等で見込める将来の家賃価格
の3つを調べていきます。
ここはかなり重要で
「今の家賃と現在の市場賃貸価格の差はどれくらいか」
「この部屋を修繕することで家賃は将来どれくらい上げられるか」
「共有部分のサービスを負荷することで家賃は将来どれくらい上げられるか」
を見極めることになります。
銀行のローンオフィサーも重要視する
NOI(純収益)
を改善する唯一の方法は
「出す(支出)を抑えて入る(収入)を増やす」
しかありません。
そこでレントロールを精査することは今を知るのみならず、将来の
「入るを増やす」
の可能性を見極める上で非常に重要なのです。
明日に続けます。
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