こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
年の瀬も押し詰まる中、本年の総仕上げに動いている方は多いのではないでしょうか。
今年は後にも先にも、コロナウイルスの拡大に世界中が翻弄された年となりました。
アメリカ不動産業界は前半こそロックダウンで急ブレーキがかかりましたが、その後に空前の低金利を受けてV字回復、そこから昨年を上回る実績で来年に突入しようとしています。
つい数日前に米誌で出ていた報道では
「不動産業界はコロナウイルスの中にあっても活況となる、勝ち組の業種だった」
そんな風に大きく発表されていました。
もちろん数字は嘘をつきませんし、数字上の結果だけを見れば報道のとおりと言えると思います。
前回のシリーズで全米を俯瞰したとおり、一部の都市とその郊外を中心に来年も順調に進むと予想される市場は数多くあるものです。
けれども冷や水を浴びせるつもりはないのですが、今の不動産市場の盛り上がりは明らかに腑に落ちません。
不必要に斜に構える意図もないのですが、素直に「腑に落ちない」という気持ちです。
不動産業界が盛り上がっているとはいえ、その中身はあくまでもある程度お金に余裕のある人々が低金利の今のうちに自宅購入に動いている構図でした。
すなわち、今のアメリカ不動産市場の盛り上がりの実体は格差社会の拡がりに過ぎないとみています。
アマゾンを中心とする電子取引をはじめ、コロナ特需で大きく実績を伸ばした業界もあります。
けれどもその多くはコロナウイルスの影響下にあって、「全てのニーズが自宅圏内に移った」ことによる結果です。
不動産業界の場合、「今動いた方が(低金利で)得する」という動機が主であり、生活の必需品とは意味合いが明らかに違います。
ということはコロナウイルス収束後に金利が上昇し始めると、ほぼ確実に今の勢いはなくなるだろうことが予想されます。
いずれにせよ、かくのごとくその成長が健全なのか不健全なのか掴みにくい中にあっても極力正確な実情を捉える努力がことのほか大切になりそうです。
真実を現していない報道の数字

そこで来年2021年以降のアメリカ不動産市場への影響を鑑みるに、私たちが事実を正確に捉えておかねばならない数字があります。
その一つは間違いなく「失業率(Unemployment Rate:アンエンプロイメント レート)」です。
当ブログでも不動産需要の三大要素
- 人口
- 人口動態
- 賃金・雇用機会
についてたびたび言及していますが、失業率は収入がないことを意味しますから不動産業界への影響としては
⇒ 物件を購入出来る人々の数が減る
⇒ 所有している物件のモーゲージが支払えない人々が増える
⇒ 賃貸している物件の家賃が支払えない人々が増える
等が考えられます。
すなわち失業率の増加は即、不動産市場に甚大な影響をもたらすことになるのです。
そこで年末の締めくくりに来年の不動産市場の動きを占うべく、その重要な要素の一つとして今回は失業率に注目してみましょう。
とりわけ不動産投資を実践する者にとって失業率の把握は極めて重要な意味をもちます。
前述のように失業率の高さはかなり早い段階で不動産市場に影響をもたらしてくるからです。
結果として物件に対する需要も減ることになり、かつモーゲージ・フォーベアランスの期限切れ後に物件を手放す動きが加速する場合は
需要 > 供給
この力関係は振り子が反対に振れ、
需要 < 供給
こちらに近づいていくことになります。
供給が増えてくるということは、不動産価格が下がってくるということです。
その反対に、今の時期でも
- 失業率が低い
- 人口が増え続けている
ということであれば、その地域市場では不動産価格は上向きの基調が続く見込みが高いことになります。
そうすると不動産投資家としては当然、この失業率が低い傾向にある地域に目をつけておかねばなりません。
失業率は各地域市場によって全く違いがありますから、メディアで報道される全米全体の失業率というよりも、自分が狙いを定めたい地域市場の失業率に注目する必要があるのです。

ときに、アメリカ全体としては最近の報道では
「コロナウイルス拡散直後の時期よりも、雇用が戻っている」
という論調が多くあります。
3月から失業手当の申請が一気に増えましたが、最近は全米の失業率を示す数字が順調に戻り、失業率が低くなりつつあるというのです。
けれども実際にアメリカに暮らしている人々にとってはニュースで報道される
「雇用が改善しつつある」
という話と、自分が暮らす街で実際に目にする状況とは明らかに違いがあることに気づいているはずです。
先日は経済が再開した直後に床屋にいきましたが、店員が髪を切りながら話すには
「この店舗物件のオーナーと家賃交渉を考えている。今のままではやっていけない。」
とのこと。
その後に南カリフォルニアは再び半ロックダウン状態となり、床屋を始めとするパーソナルケアは再び休業中です。
各業種も本当に息も絶え絶えにあるのが実情で、どう考えても報道される失業者に関する数字は完全に実体を現わしているようには思えませんし、報道される以上に
- 仕事を完全に失った人々
- 正規雇用からパートタイムになった人々
の数は多いはずなのです。
現在政府発信で各種メディアから発表されている数字は2020年12月の段階で
「全米の失業率は7.9%」
と報道されており実際の数にすると約1,260万人で、これがメディアに出てくる経済学者が使っている数字です。
けれども実は米国政府は失業者を6つのカテゴリーに分類しており、その中でも真ん中の基準を政府発表として使用しているのです。
ここから、アメリカの失業者数の実態により深くメス入れてみましょう。
明日に続けます。
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