こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
今月3月10日、アメリカ国会でコロナウイルスの追加対策として
$1.9 trillion($1=100円で190兆円)
という天文学的な予算を伴う追加対策法案が可決しました。
まるで漫画!FED(連邦準備制度)のバランスシートが異常値に
こちらでもお伝えしたとおりですが、昨年のパンデミック以降、夢か現実か分からないような異常値を私たちは目にしています。
正真正銘アメリカ史でかつてないレベルの異常値ですし、今回の可決を見ても案の定、本年中にFED(連邦準備制度)の資産は1,000兆円を超えてくると思います。
現実には、米国はいくら借金を積み上げたところで国そのものが潰れることはありません(この点は日本も同じ)。
また平等にモノをいうのであれば、1971年のあの時にニクソン大統領がドルとゴールドの交換を停止するしか選択肢がなかったように、今もまたバイデン政権はかくのごとき追加支援を実施せざるを得ない状況です。
けれども空恐ろしいのは、このまま進む先にはFED(連邦準備制度)すらコントロールできない不測の事態がその副作用として起こってくる可能性ではないでしょうか。
そして不動産業界もアメリカ経済の中核の一つである以上、殊の外このような施策の影響を受けることになります。
昨日までにお伝えしたのは
「本年に入ってからモーゲージ金利がジワリジワリ上昇し始めている」
その結果として
「2月下旬にはモーゲージ申し込み数が11%下がった(金利上昇はその一因となった)」
ということでした。
この兆候は決して軽視出来るものではなく、たった今のベクトルが指す将来に何が起こり得るのか、そのシュミレーションをもって斜に構えることは極めて大切です。
ポイントをついていえば、私たちが今の段階でしっかりと押さえておくべきは
「モーゲージ金利の動きとその要因」
に他なりません。
モーゲージ金利は不動産需要の増減に大きく影響し、ひいては物件価格にほぼ直撃する影響を与えることになるからです。
そこでここ数週間の金利の動きを踏まえ、少し先に考えられる可能性を検証しておきましょう。
エコノミックブームが起こっている

少し先を占うにあたり、たった今の現状をおさらいしておきます。
冒頭にもお伝えしたことですが、米国政府からアメリカ国民(と有資格居住者)に対して昨年のパンデミック以降に繰り返し
Stimulus Check(スティミュラス・チェック:景気刺激政策としての現金支給)
が実施されています。
初回:$1,200
2回目:$600
に続いて、この3月には
3回目:$1,400
が実施されることが決定しました。
ちなみに、これらの支給金は「世帯ごとではなく一人当たり」の金額です(子供はまたさらに別)。
この現金支給を受け取る条件に入っている夫婦世帯であれば、2人合わせて昨年は$3,600と本年は早速$2,800で合計$6,400の臨時収入が入ったことになります。
そしてこの現金支給は家計簿では間違いなく
「世帯の収入増」
です。
そしてそのの一方で見逃せないのは、
Eviction Moratorium(エヴィクション・モラトリアム)...テナントの強制退去禁止
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)...物件差し押さえの禁止
これら双方は未だに継続しており、この法案にあやかっている世帯は家賃支払いやモーゲージ支払いはないわけですから、家計簿としては
「世帯の支出減」
になるわけです。
そうすると合わせてこれらの世帯では
「収入が増え、支出が減少している」
ことになりますから数字上の個人所得が改善しているのです。
事実、政府統計では2021年1月単体で全米個人所得が10%増となる1954.7ビリオンも上昇しており、にわかエコノミックブームが起こっています。
けれども実体経済では

かくして数字上はにわか好景気の様相を呈していますが、それでは実際にアメリカ国民の生活が豊かになったのかといえば答えは正反対です。
州毎の方針によるロックダウンを始めとしてたった今も経済活動が大きく制限されている地域がほとんどであり、このような政府によるロックダウン施策の中で昨年のパンデミック以降から本日までに10万以上の中小企業が
「一時的にビジネスを停止する」
↓
「いや、これほど経済再開の目途が立たないようでは続けられない」
↓
「やはり限界だ」
という流れで完全にあきらめ、二度と市場に戻ってこない結果となっています。
この傾向は日本でも同じだと思いますが、スモールビジネスを中心に次々と完全閉店するビジネスが増えているのです。
結果としてアメリカの実体経済では製品とサービスが激減しており、市場にモノとサービスが出回りにくい状況になっています。
国の繁栄は紙幣の流通からくるのではなく、人々の日常生活に必要なモノとサービスが出回ることで豊かさを享受できるものです。
けれども今のアメリカ経済にあるのは
数字は上向く(エコノミックブーム)
けれども
実体経済ではモノとサービスが激減
という、数字と現実が完全に分離した状態。
こうなると、そこに現れてくる現実は誰の目にも明らかで
「モノやサービスの価格が上昇する」
という現象が起こりつつあるのです。
この点、日頃は日常生活に必要な
- 食品
- モノ
- サービス
に対しては比較的その価格に鈍感な私(佐藤)ですら、
「あ、これは値上がっている」
「あ、このパンはサイズがかなり小さくなっている」
という具合に物価の高騰に気づいています。
そしてこのような日常生活で実感する急激なインフレと同時に、市場が見せるあらゆる数字が「近い将来はさらに物価は上昇していくだろう」ことを伝えているのです。
明日に続けます。
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