こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
本シリーズではマクロ経済の話にやや踏み込んでいます。
私達が知りたいのは不動産市場の行く末についてであり、だからこそマクロレベルでざっくりとでもアメリカ経済の流れを掴んでおく必要があります。
余談ですが、
「将来は中国経済がアメリカ経済を上回る」
との観測はあながち外れていないようにも思いますし、グローバル経済は私達が生きている間にかなりの変化を見るのではないでしょうか。
けれども今はまだドルが基軸通貨の地位を保っていますし、その意味でも未だグローバル経済に大きな影響力をもつFED(連邦準備制度)の施策はよく観察しておく必要があると思うのです。
そこで昨日までは
1.アメリカのモーゲージ金利が上昇傾向にある
2.米国10年国債金利が上昇している証拠
3.国債金利を押さえるべくFED(連邦準備制度)が米国国債を購入
4.その資金源として各金融機関の貸し方にBank Reserves(銀行準備預金)をつける
5.金融機関は増えた資産でT-Bill(米国財務省短期証券)を購入する
という流れをお伝えしました。
TB(米国財務省短期証券)は最短の証券であり、その満期は1年未満となります。10年ものや30年ものよりは1年で満期がくる方が流動性が高い為に都合がよく、もともと市場ではT-Bill(米国財務省短期証券)の方が人気があるのです(けれども発行数が少ない)。
そこで各金融機関はBank Reserves(銀行準備預金)そのものは持ち続けていても意味がありませんから、流動性が最も高いT-Bill(米国財務省短期証券)をどんどん購入する流れが出てきます。
けれどもそこで直面するのが
「T-Bill(米国財務省短期証券)の絶対的な不足」
です。
すなわちここもまた需要と供給の関係で
1.T-Bill(米国財務省短期証券)の需要が高まる
2.T-Bill(米国財務省短期証券)の価格が上昇する
3.T-Bill(米国財務省短期証券)の金利が下がる
という現象が起こってきます。
けれどもこの動きは更にアメリカ経済を捻じ曲げていくことになるのです。
本シリーズの締めくくりとして、不動産市場に影響するモーゲージ金利の行く末をシュミレーションしていきましょう。
本日も続けます。
レポ市場について

そこでこのシナリオのままで進んでいくとT-Bill(米国財務省短期証券)の金利は下がり続けることになりますが、その勢いで進んでいくと今度は
「国債の金利がマイナス金利に変化する」
という現象が起こり得ます。
このマイナス金利は金融機関を筆頭とするT-Bill(米国財務省短期証券)を好む市場の動きで現れてきますから、そうするとFED(連邦準備制度)は今度は
「T-Bill(米国財務省短期証券)の金利を上昇させる」
というテコ入れが必要になるのです。その理由は説明するまでもありませんが、
「マイナス金利の証券を誰が購入したがるのか?」
という話だからです。
そこでFED(連邦準備制度)がここでも介入してくることになりますが、その全体像を捉える上でもう一点、レポ市場について簡単に触れておきます。
日本ではレポ取引とも訳されていますが、レポ市場は分かりやすく言えば
「最短期債権」
で、通常は一晩かそこらの瞬間風速的な借り入れと返済が行われる市場のことです。
大きく成長したノンバンクにとってレポ市場は重要な資金源となっており現代の資本主義経済ではなくてはならない市場ですが、表立ったニュースにはほとんど出てこないのでその存在はさほど知られていません。
すなわち世の多くの人々がその存在すら知らない中、毎日かなりの金額が担保債権を元に貸し借りが行われているのです。
そしてここがポイントですが、前述のように各金融機関がT-Bill(米国財務省短期証券)を購入し続けると金利が下がり、果てはマイナス金利に陥る事になりかねません。
そうすると誰もマイナス金利に手を付けようとはしませんから、今度はレポ市場に一気に需要が出てきてレポ市場の金利が破竹の勢いで上昇する危険性があるのです。
このことは決して憶測ではなく実際に2019年9月にはレポ市場の金利が一晩で急上昇し、瞬間風速的にもFED(連邦準備制度)が経済のコントロール力を完全に失う出来事がありました。
その証拠がこちら

一言で言えば、
「レポ市場の金利が急上昇すると、FED(連邦準備制度)はモーゲージ金利を含む全てのアメリカ経済の金利をコントロール出来なくなる」
ということです。
それが現実となれば、アメリカ不動産市場においてもモーゲージ金利上昇はほぼ完全にコントロール出来なくなり、先日のシュミレーションのようにモーゲージ金利が上昇した結果として購買力が著しく低くなり、不動産価格が大きく下がることになると思います。
。。。
本シリーズではマクロ経済に踏み込んでモーゲージ金利上昇のリスクをみていきました。
少なくともたった今は米国政府によるコロナウイルス対策の結果として国債の発行から
FED(連邦準備制度)が介入 ⇒ それが次の問題を生じる
FED(連邦準備制度)がさらに介入 ⇒ それが次の問題を生じる
。。。
この式が繰り返されています。
その終点がレポ市場であり、レポ市場を捻じ曲げてしまうと2019年9月に実際に起こったようにFED(連邦準備制度)がアメリカ経済のコントロールを失うことになるのです。
最後に空恐ろしいグラフをつけておきたいと思いますが、本シリーズでお伝えしたことは決して絵空事のシナリオではなく

この通り、正に本項の時点でFED(連邦準備制度)はレポ市場に大きくテコ入れしているだろうと思います。
そこで本シリーズの最初の疑問に戻り、
「モーゲージはこのまま急上昇していくのか?」
ということになると答えは恐らく「ならない」と思います。
その代わりに出てくるだろう現象は
「FED(連邦準備制度)によるレポ市場の統制」
ではないでしょうか。
一言でまとめれば、
「今回のパンデミックを機に、アメリカの自由経済はほぼ完全に失われる」
これだけは間違いないように思います。
。。。
マクロ経済視点からのモーゲージ金利への影響についてはここで話を止めておきますが、
⇛ FED(連邦準備制度)はモーゲージ金利を含むアメリカ経済のコントロールを試み続ける
⇛ 不動産価格の大暴落につながり得るレベルのモーゲージ上昇は起こさせない
⇛ けれどもレポ市場統制の向こうに、予期せぬ出来事が起こる可能性
そんな、アメリカ経済は先がかなり不透明な時期に突入したように思います。
私達はますます自己防衛力を高めて、目の前の大嵐に備えていくようにしましょう。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。