昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先日3月31日にバイデン政権より法人税値上げの法案が提出されました。
アメリカ合衆国の法人税については近年まで35%だったものが、元トランプ大統領就任後の2017年に大型減税として21%にまで引き下げられていた経緯があります。
この4年前の大型減税を見直し、ちょうど真ん中の数字をとって
「法人税を21%から28%まで引き上げる」
というのが今回の法案です。
増税のきっかけになった理由の一つは、昨年のパンデミック以降に行われている各種救済政策に伴う借金の膨大な膨れ上がりではないでしょうか。
いずれにせよアメリカの借金は永遠に最期の日まで増え続けると思いますが、つい先日はバイデン政権発進直後に1.9トリリオン($1=100円換算で190兆円)の救済プランが決定されたばかりです。
アメリカ合衆国の赤字は天文学的な数字になっており、これを補う為に法人税の値上げを行うことで向こう10年で今回のパンデミックに関わる大幅な支出を補填するのだとか。
このような大胆な法人税の増額そのものは90年代のクリントン政権以来の30年ぶりとなり、民主党政権下で増税が行われてきた中で今回再び民主党バイデン政権下で大きく梃入れをしていくことになりますが、今回は法人税のみならず
⇨ 年収$400,000以上の個人に対する増税
⇨ 年間$1,000,000以上の所得がある個人にはキャピタルゲイン課税に増税
等の案も検討されています。
数字を見て分かるとおり、このレベルの収入が得られる個人は確実に超富裕層であり、
「我々は富裕層に対し増税を試みている」
「私たちは大衆の味方だ」
そんなメッセージの代名詞に聞こえるくらい、超富裕層を目の敵にしたかのような提案であることが分かります。
ただし茶番に聞こえるのは、仮に可決したとしてもこれら法案の効果はほとんどないのではないでしょうか。
莫大な財産を相続した人々は別として、少なくともゼロ発進のたたき上げで$400,000以上の年間所得がある人々はほぼ間違いなく「合法に節税する方法」を熟知しているからです。
言い換えると、これらの人々は節税の仕方を知っているからこそ財産を増やすことが出来たと言えます。
特に年収が$400,000を超える人々の中で不動産を資産形成のポートフォリアに組み込んでいない個人は極めて少ないものです。
トランプ前大統領とその嫁婿のジャレッド氏はメディアから税金を納めていないことを再三叩かれていましたが、不動産業を営む両名が税金を支払っていないのは極めて当たり前のことと言えます。
私(佐藤)自身は両氏に対し何ら肩入れする理由はありませんが、槍玉にあげるアメリカの各種報道は肝心な点を伝えていませんでした。
それは、両氏の節税は
「アメリカ政府そのものが望んでいる」
という事実です。
不動産に対するアメリカ政府の本音
例えば前述のバイデン政権の提案を考えてみましょう。
「年間$1,000,000以上の所得がある個人にはキャピタルゲイン課税に増税」
私たちは、少なくとも不動産投資の分野であればこのキャピタルゲイン増税がほぼ意味がないことであり、政府による茶番(本当に税金を増やそうと考えてはいない)であることを知っています。
このレベルの所得にある人々はまずキャピタルゲイン課税を支払うことはほとんどありません。
十中八九、ほとんどの投資家は「1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)」を使って物件を交換し続けていくでしょうし、税金の繰延べは死ぬまで続けていくはずです。
物件を交換し続けていく以上は生涯に渡りキャピタルゲイン課税を支払うことはなく、その繰延分は墓場まで持っていくことになります。
とどのつまり、このキャピタルゲイン課税を避けられる1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)は
「倫理的に憚られる法の抜け穴」
なのかと言えば決してそんなことはなく、米国政府により定められた税法に従ったものです。
倫理的に憚られるというのであれば、なぜ米国政府は1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)という仕掛けを定めたのかという話。
ちなみに佐藤は公認会計士の資格を有しない為に深い言及は控えますが、不動産投資からの所得はパッシブインカムと呼ばれ、パッシブインカムを得る過程での損失はパッシブインカムにぶつけることが可能とされています。
その損失は通常の修繕費のみならず
- 固定資産税
- モーゲージ返済額内の利息分
- 減価償却
- コストセグリゲーション
等が全て「支出」として計上され、パッシブインカムにぶつけられることなり、多くの場合は課税対象所得が残ることになりません。
それは
支払うべき税金が手元に残る ⇒ 手元に残るキャッシュが更なるリターン
の式で、大袈裟ではなく不動産投資のまつわる税法はあたかも税金を収める必要がないかのように設計がなされているのです。
そして極め付けは、不動産運用のマイナスをパッシブインカム以外にもぶつけることは税法に則って可能であり、
「米国政府は不動産投資家から税金を多く取ろうとは考えていない」
「米国政府はわざと税法の抜け道と呼ばれる手法を残している」
これが真実です。
その理由は
「不動産業界が経済をどんどん回してくれないと困る」
「どんどんこの国の住環境を拡充してほしい」
という点につきます。
不動産業界を元気にさせ続け、また十分に住を提供する為には投資家に元気に動き続けてもらわねばならず、結果として投資家が元気に動いてくれる税法は残すようになっているのです。
結果として今回のバイデン政権による増税が実現したとしてもその影響を受ける個人は極めて限定的になるでしょうし、今回の発表も政治的パフォーマンスの一つに終わるように思います。
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