こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
Land Trust(ランド・トラスト)
について、たまに聞く誤認についてお伝えします。
Land Trust(ランド・トラスト)そのものの性質を一言でいえば、
「プライバシーを保つ」
為のトラスト名義です。
物件をLand Trust(ランド・トラスト)名義で所有することでWarranty Deed(ワランティ・ディード)の上にバイヤーの名前は記載されず、また公の記録のどこにも名前は出てこない為に
「この物件の所有者として自分の名前を世に晒したくない」
と希望する方はこのLand Trust(ランド・トラスト)の使用が有効ということになります。
一面、アメリカの不動産が世界中から信頼されている理由は「ガラス張りの取引」にあります。
法人名義であれ個人名義であれ、通常は物件を購入する時にはクロージングの際に発行されるWarranty Deed(ワランティ・ディード)上に
Grantor(グランター:不動産権を譲渡する側、売主)
Grantee(グランティー:不動産権を譲渡される側、買主)
の双方の名義が記載されることなりますが、Land Trust(ランド・トラスト)名義で購入する際は買主の個人情報は公に一切出てこないことになります。
不動産権そのものは通常はその地域市場を包括するCounty(カウンティ:郡)の役所で登記されることになり、大抵はインターネット上からでもこの役所のデータベースにアクセスすることで、世界中の誰でも
「この物件の持ち主は誰か」
という個人情報を確認することが出来ます。
ここまでの情報に行き着くには無料の場合と有料の場合がありますが、多くの場合は無料で相当なレベルまで調べることが出来るものです。
けれどもあえて自分の個人情報を世間に晒したくない場合はこのLand Trust(ランド・トラスト)を使うことでプライバシーを保つことが出来ることになります。
Land Trust(ランド・トラスト)の役割はそれ以上でもそれ以下でもなく、
⇒ Land Trust(ランド・トラスト)に対しては何物も訴訟を起こすことはできない
⇒ Land Trust(ランド・トラスト)を使う場合は自動的に税金の繰り延べが続く
これは事実無根だろうと思います。
昨日の話から、本日も続けます。
Land Trust(ランド・トラスト)は法のシールド(盾)ならず

かくして、Cさん夫妻はLand Trust(ランド・トラスト)名義で購入した物件のテナントから訴訟を起こされました。
Cさんが合点がいかなかったのは、Trust(ランド・トラスト)名義で所有する場合は訴訟を起こされる可能性はゼロとE弁護士のセミナーで理解していたからでした。
ところが訴訟を起こされたと伝えてくれたE弁護士から聞いたのは
「訴訟されることはない、などと言った覚えはない」
という正反対の答え。
Cさん夫妻は憤慨し話が違うと抗議しますが、Cさん夫妻とE弁護士の主張は食い違ったままでした。
そこでE弁護士は
「まあ、いずれにせよ今回の怪我についてはあなたの保険がカバーしてくれるでしょうから保険会社に電話してみませんか。」
そう促すとCさんは真っ青になりました。
実はLand Trust(ランド・トラスト)名義で購入すれば訴訟が発生する可能性はゼロと思い込んでいたCさんは、保険に加入していなかったのです。
この物件の場合、保険料は年間に$2,000にもなります。
どうせLand Trust(ランド・トラスト)名義の場合は訴訟起こされないのならと年間$2,000もする保険の購入は止め、その代わりにE弁護士に毎年$500を支払うことを保険代わりと考えていたのでした。
結果、保険がかかっていない為にCさん夫妻が賠償命令に対する全額を個人が負担することになります。
そしてE弁護士が別の話をした時、事は一層深刻であることが分かりました。
E弁護士が続けて
「いずれにせよ別に弁護士を立てて訴訟に備える必要がありますね。」
とCさんに伝えたところ
「弁護士ならすでに雇っている」
とのこと。

聞くと、Cさんは数ヶ月前の交通事故で相手側から訴訟を起こされているというのです。
この場合も同様で、敗訴すれば最悪の場合Cさんの物件にも影響を及ぼすことになり得ます。
そこでE弁護士が
「その交通事故相手との裁判では、裁判所には物件を所有していることを伝えましたか?」
と聞くと、
「Land Trust(ランド・トラスト)だからプライバシーは保たれるんだろ?もちろん言わなかったよ。」
とのこと。
セミナー主催者のE弁護士は事の深刻さに気づき、
「それは違う。正直に物件を所有していることを宣誓しないと大変なペナルティの憂き目に会いますよ。」
と伝えたところ、
「セミナーの話と全く違うじゃないか!」
とCさんは再び激怒。もはや取り付く島もない結果になったのです。
。。。
ここまで実例に多少の脚色を加えてお伝えしましたが、かくしてLand Trust(ランド・トラスト)は
⇒ 資産を守るシールド(盾)にはなり得ない
⇒ 保険の代わりにはならない
⇒ 個人が訴訟を起こされた場合、Land Trust(ランド・トラスト)名義の物件も賠償責任を果たす上での資産対象となる
というのが私(佐藤)の理解です。
もしもLand Trust(ランド・トラスト)名義について間違った解釈で誘われたとしても、「プライバシーを保てる」以外の役割はほぼないと考えておく必要があります。
またそれ以前に、このような詐欺まがいの話に引っかかってしまうのは騙す方が悪いのはもちろんのこと、話に乗る方にも
「もっともっとお金を稼ぎたい」
という行き過ぎた欲があるから、誠しやかな話につい乗ってしまうものです。
やはり不動産投資に取り組む上での姿勢は
1.資産形成の全ての行為は法律の則って行う
2.支払うべき税金は喜んで支払う(そもそも先進国の恩恵を受けていることに感謝)
3.実践しながら資産形成の学びを深め続けていく
であることが最善であるように思います。
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