昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
キャピタルゲイン課税の増税案についてお伝えしています。
バイデン政権による
「$1.8 trillion American Families Plan」
を背景にテコ入れされるだろう税法改正案ですが、その法案の中で不動産業界に大きく影響するだろうと予想されるのが
キャピタルゲイン課税に対する増税
1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)制度の部分的終了
Stepped-Up Basis(ステップドアップ ベイシス)制度の部分的終了
の3点です。
厳密には「キャピタルゲイン課税の増税」という前提があることで
⇒ 1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)改正
⇒ Stepped-Up Basis(ステップドアップ ベイシス)改正
の2つにハイブリッド効果が出てくることになります。
バイデン政権が対象とするのは
「納税者の0.3%(超富裕層のレベル)」
とのことですが、よく見ると今回の法案では結構な割合で中間層にも影響が及びそうです。
というよりも実は蓋を開けると
「超富裕層にはほとんど影響はなく、実際は中間層ばかりが増税の結果となる」
ようにすら思え、一言でいえば「格差社会の更なる拡がり」を誘発してしまうのではないでしょうか(佐藤の個人的な予想です)。
私(佐藤)自身は共和党と民主党のどちらにも肩入れせず国の行く先を見守るだけの立場ですが、事程左様に政府がテコ入れをする場合は
「Unintended consequence(予期しない結果)」
がもたらされることは、どの国事情でも同じなのかもしれません。
本日も続けます。
キャピタルゲイン課税の詳細を見る
昨日は
Tax bracket(タックスブラケット)
と呼ばれるアメリカ版の累進課税を表で見ていきました。
ここでキャピタルゲイン課税に特化した税率の変化を見てみましょう。
アメリカのキャピタルゲイン課税率は
Long term(ロングターム:長期)1年以上保有
Short term(ショートターム:短期)1年未満保有
の2種類があることをお伝えしましたが、今回の改正法案の影響が最も大きいのは資産を1年以上保有する場合の
Long term(ロングターム:長期)
の方です。
現在のLong term(ロングターム:長期)では
$445,850以上
のキャピタルゲインに対し、キャピタルゲイン課税率は20%となっています。
ここでLong term(ロングターム:長期)のキャピタルゲイン対する課税率の表を並べてみます。
上の表が2021年度で、下の表が2020年度の分です。
2021年度キャピタルゲイン課税率
税率 | 独身 | 世帯共同申告 | 世帯別申告 | 世帯主 |
10% | $0 – $9,950 | $0 – $19,900 | $0 – $9,950 | $0 – $14,200 |
12% | $9,951– $40,525 | $19,901 – $81,050 | $9,951 – $40,525 | $14,201 – $54,200 |
22% | $40,526 – $86,375 | $81,051 – $172,750 | $40,526 – $86,375 | $54,201 – $86,350 |
24% | $86,376 – $164,925 | $171,751 – $329,850 | $86,376 – $164,925 | $86,351 – $164,900 |
32% | $164,926 – $209,425 | $329,851 – $418,850 | $164,926 – $209,425 | $164,901 – $209,400 |
35% | $209,426 – $523,600 | $418,851 – $628,300 | $209,426 – $314,150 | $209,401 – $523,600 |
37% | $523,601+ | $628,301+ | $314,151+ | $523,601+ |
2020年度キャピタルゲイン課税率
税率 | 独身 | 世帯共同申告 | 世帯別申告 | 世帯主 |
10% | $0 – $9,875 | $0 – $19,750 | $0 – $9,875 | $0 – $14,100 |
12% | $9,876– $40,125 | $19,751 – $80,250 | $9,876 – $40,125 | $14,101 – $53,700 |
22% | $40,126 – $85,525 | $80,251 – $171,050 | $40,126 – $85,525 | $53,701 – $85,500 |
24% | $85,526 – $163,300 | $171,051 – $326,600 | $85,526 – $163,300 | $85,501 – $163,300 |
32% | $163,301 – $207,350 | $326,601 – $414,700 | $163,301 – $207,350 | $163,301 – $207,350 |
35% | $207,351 – $518,400 | $414,701 – $622,050 | $207,351 – $311,025 | $207,351 – $518,400 |
37% | $518,401+ | $622,051+ | $311,026+ | $518,401+ |
2020年度と比較すると2021年度はわずかながら累進の基準が緩くなっていることが分かります。
そして今回の法案の場合、
「Long term(ロングターム:長期)の1ミリオン以上は通常の利益として計上する」
と定められており、この場合は高収益を実現している投資家には39.6%もの課税がなされることになります。
予想されるトレンド
そこでキャピタルゲイン課税を避ける上で、ここからどのようなトレンドが起こってくるのでしょうか。
可能性としては次の3つのトレンドが考えられます。
1.分散して売却する
単年に大きなキャピタルゲインが発生してしまう大きな税率が課せられることになります。
そこであり得るシナリオとしては
「Long term(ロングターム:長期)の中でも低い税率で済むように、時間をかけて資産を整理する」
という手法が起こるのではないでしょうか。
不動産という箱モノ資産であったとしてもこの点は変わらず、段階的に手放す手法も出てくるかもしれません。
2.リタイアメントプランで運用する
IRAや401(k)プラン等はリタイアメントプランとしてアメリカでは多くの個人が活用しています。
この中で資産を運用する場合は
非課税
あるいは
税金の繰り延べ
が実現できるため、このプランで保有したままの売却であればキャピタルゲイン課税の支払いは発生しません。
その為、今回の税制改正が実現する場合はリタイアメントプランの中での運用が増加するのではないでしょうか。
ただし、リタイアメントプランの場合は将来そのリタイアメントアカウントからお金を引き出すときには通常の所得税がかかってきます。
リタイアメントプランの利点はあくまでも繰り延べであり、将来の累進課税率に応じて税金を納める必要が出てくるわけです。
余談ですが、これが理由でリタイアメントプランは使わずに自分基金のみで老後に向けた資産運用を進める人々も多いのです。
3.リタイヤメント後に売却
そして最も主流になるだろうと予想されるトレンドはこの
「リタイヤメント後に売却する」
というパターンです。
詳細は割愛しますが、
- リタイア後はそもそも所得が少ない
- シニアプランの税制優遇が多い
等から、これらの要素を加味すると老後に売却した方がキャピタルゲイン課税率は随分と低い割合に抑えられる可能性があります。
それならば急いで売りに出すことはせず、自分がシニア世代になってからの売却がよいとホールドを続ける人々が多く出てくるのではないでしょうか。
実際にはその時のキャピタルゲイン課税率がどの程度になっているかは不確かですが、少なくとも本年2021年は
- 滑り込みで売却を急ぐ投資家
- 売りを急がずシニアになるまで物件をホールドする投資家
この二手に大きく分かれ、同時に前述のようなトレンドが起こってくるものと予想します。
明日に続けます。
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