昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日まではアメリカ不動産の価値を違った視点から考察してみました。
論議するまでもなく、間違いないのは
「米国不動産はドル(或いは日本円)に対して強い保障になり続ける可能性が高い」
ということです。
とりわけ融資を組んで不動産事業に取り組む場合は
でお伝えしたように
インフレに触れようが
デフレに触れようが
有利なポジションになることは理論上は間違いありません。
そして同時に、不動産市場はもとよりアメリカ経済(或いは世界経済)そのものが乱気流の中にある昨今において完璧な予言は不可能にせよ、先がどのような状況になり得るかを見立てておくことは大切です。
そこで夏本番に入り始める2021年6月のタイミングで「アメリカ不動産市場の少し未来」を俯瞰してみましょう。
押さえておきたいポイントは
- Eviction Moratorium(強制退去禁止)の終了
- 金利上昇の可能性
- 物件価格が下がる可能性
の3点です。
Eviction Moratorium(強制退去禁止)が間もなく終了
昨年のパンデミック以降、CARES ACT(ケアーズ法)が制定された中で不動産業界にとって大きな注目を集めた一つが
Eviction Moratorium(強制退去禁止)
でした。
通常、アメリカ不動産では賃貸物件において家賃支払いが不履行となった場合は即「30日前通知」を送ることが許されています。
家賃が支払えなかったテナントに対して即日退去を促すことはできませんが、30日前通知を
「〇月度分から家賃支払いが行われていません」
「賃貸契約に基づき、ペナルティを含めて〇月〇日までに$〇〇〇〇のお支払いが必要となります」
「期日までに支払われない場合、強制退去の手続きに入ります」
というような趣旨で送り、その事前通知をもっても家賃支払いが不履行となる場合は法廷を通して然るべき措置をとることが許されていたのです。
けれどもEviction Moratorium(強制退去禁止)とはその言葉のまま、
「テナントが家賃不履行に陥っても強制退去を促してはいけない」
という政府命令により家賃滞納がパンデミックによる影響である場合、オーナーは通常の手続きを踏むことが出来ない法律です。
この点はパンデミック直後に
このように一気に失業率が増加した結果、毎月の給料が入らなくなり家賃滞納を余儀なくされた人々がいたことも事実であり
⇛ 収入が見込めない中に相当数の世帯が家を追い出されては大混乱が起こる(治安悪化にも通じる)
⇛ コロナウイルスの拡散を抑制する意味でも強制退去は禁ずるべき
等の理由から、家賃滞納が昨年以来に許されてきたわけです。
このような一時的な措置は必要であったと思いますが、それと同時に見逃せないことがあります。
それは、家賃収入が入らない家主の中には物件を手放さざるを得なくなった人々もいるということです。
この点は
⇛ 物件を所有している
⇛ ローンが残っているけれどもパンデミックの影響で返済ができない
という場合、Eviction Moratorium(強制退去禁止)とは別に
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス:差し押さえ権利行使の差し控え)
がありました。
すなわち
「融資元に対してモーゲージが支払えない場合でも、融資元は物件を差し押さえてはならない」
というこちらもCARES ACT(ケアーズ法)に基づく措置です。
そうすると
「家賃収入がなかったとしても家主は家を取られることはなかったのでは?」
「なぜ物件を手放す必要があったのか」
という話になりますが、ここには
「住宅ローンの支払いは待ってもらえても、固定資産税の支払いは待ってもらえない」
等の事情がありました。
この点は厳密には規定がCounty(郡)ごとに違いますが、それなりの高額物件をニューヨーク等のキャピタルゲイン市場で所有していた場合は固定資産税は相当な額に及びますから、家賃収入が入らないのであればゼロ収入は家主のお財布をもろに直撃することになります。
それが為に米国内では昨年以来、
「テナントは居座れるのに、家主はその物件を手放さざるを得ない」
という状況が各地で見られていたのでした。
けれどもそのEviction Moratorium(強制退去禁止)が今月30日に期限切れを迎えることになります。
さらなる延長はあり得るのか
そこで本項の2021年6月の時点で、家賃を滞納しているアメリカ人の数は約1,100万人にも及びます。
厳密には市場ごとに状況は違いますが、家賃滞納が続いていながらもEviction Moratorium(強制退去禁止)の為に居座ることが出来ている人々の割合が最も多いのは
フロリダ州
アリゾナ州
ジョージア州
アラバマ州
サウスカロライナ州
でこれらの州では20%超え、すなわち5件に1件以上は家賃滞納が続いているのです。
そうするともしもこのままバイデン政権により強制退去禁止の延長がなされないとすれば、7月以降には30日前通知が上記の州を中心に全米各地で飛び回ることになり、相当数の賃貸生活者が通知を受け取るはずです。
そして早ければ本年8月以降に強制退去の措置が実行され、その退去総数は膨大なものになることが予想されます。
中にはテナントの退去のみならず、
「固定資産税は支払えても毎月のモーゲージ返済が出来なかったが、けれどもMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)の為に物件を手放さずに済んできた」
というオーナーにとっては
⇒ いち早く新しくテナントを入れて支払いを軌道に戻す
⇒ 諦めて物件を手放す
の選択を迫られることになります。
結果として、上記の州を中心にそれなりに物件供給数は増えてくることも予想されるのです。
目下、今の時点では本年中盤のアメリカ不動産市場の動きとして今月30日が期限となる
Eviction Moratorium(強制退去禁止)の終了
に注目しておきましょう。
明日に続けます。
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