昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先日失効となった
Eviction moratorium(エビクション・モラトリアム:強制退去禁止令)
に引き続き、
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス:差し押さえ権利行使の差し控え)
の現状についてお伝えしています。
上記2つを比較した時に
「市場の物件供給数が増える」
という意味ではごく直接的な影響をもたらすのはこの
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)の失効
の方になります。
債務不履行が発生する場合、
1.モーゲージの返済が出来ない
2.融資元が物件を差し押さえる
3.融資元により市場に出される(売却して元金を清算)
というのが従来の流れでしたが、昨年のパンデミック以降は
「パンデミックによる影響でモーゲージ支払いが出来ないのであれば、物件を差し押さえてはならない」
とする法令が出されていました。
この法令が
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス:差し押さえ権利行使の差し控え)
と呼ばれ、現在のアメリカ不動産市場の中には
「モーゲージ・フォーベアランスのおかげで物件に暮らし続けている(所有し続けている)」
という物件オーナーが増えています。
そこでおさらいすると、最新の情報では
このとおり、債務不履行とは見なされていないながらも「30日以上滞納」している物件、もしくは差し押さえ状態にある物件は246万戸以上となっています。
全体としては不履行件数は減少しつつあるものの、厳密にはFHAローンに限っては反対に「不履行件数が増えている」のです。
本日も続けます。
FHAローンを軸にリスクを俯瞰
数字を含めて見ていきましょう。
本年5月の時点で政府支援によるFHAローンの数は全米で約760万件ありました。
この中で14.7%にあたる約110万件がその5月には債務不履行状態にあり、この割合は着実に増加していました。
また昨日は債務不履行の中でも2つの定義をお伝えしましたが、より厳密に5 月度の割合をいえば
FHAローンの債務不履行割合
Delinquency(債務不履行:30日以内) … 4.2%
Serious delinquency(深刻な債務不履行:90日以上) … 10.5%
となっており、90日以上の滞納という深刻な状態にある債務不履行件数の割合が多いことが分かります。
過去3カ月以上支払えていないだけでもモーゲージ・フォーベアランスの失効後に返済はほぼ不可能なはずですから、これらの物件は高い確率で市場に出てくることが予想されます。
ちなみにモーゲージ・フォーベアランスを適用させた場合は
「申し込み受領日から数えて6カ月~18カ月」
の間は延長が可能です。
そうすると一番最初のモーゲージ・フォーベアランスは2020年3月下旬でしたから、単純に考えて
2021年9月下旬以降
から、モーゲージ・フォーベアランスの失効による差し押さえ件数が増えてくるものと予想されます。
これらの前提を踏まえて考察すると、
「FHAローンが多い地域では物件供給数の増加割合が高く、伴って2021年9月以降に物件価格が下がってくる可能性が高い」
となるわけです。
そこでFHAローンの割合を含めた上で、全米各都市の中でもリスクが高い地域の上位10都市を並べてみます。
都市圏名 | 債務不履行 30日以内 | 深刻な債務不履行 90日以上 | FHAローン |
ジョージア州アトランタ、サンディ・スプリングス、アルファレッタ地区 | 17.40% | 12.80% | 21% |
テキサス州ヒューストン、ウッドランズ、シュガーランド地区 | 18.80% | 13.80% | 19.30% |
イリノイ州シカゴ、ナパービル、エバンストン地区 | 19.10% | 14.60% | 14.20% |
テキサス州ダラス、プレイノ、アーヴィング地区 | 15.80% | 11.10% | 14.80% |
ウェストバージニア州ワシントン、アーリントン、アレクサンドリア、D.C.、バージニア、メリーランド地区 | 18.80% | 14.50% | 13.70% |
メリーランド州バルチモア、コロンビア、トウソン地区 | 17.30% | 12.80% | 19.40% |
カリフォルニア州リバーサイド、サンバルディーノ、オンタリオ地区 | 14.30% | 10.50% | 20.60% |
テキサス州サンアントニオ、ニューブラウンフェルズ地区 | 16% | 11.10% | 19.30% |
テキサス州フォートワース、アーリントン、グレープバイン地区 | 15.70% | 11% | 18.30% |
ペンシルベニア州フィラデルフィア地区 | 17.50% | 11.90% | 17.60% |
上記の比較表では一番右側の列にFHAローンの割合も合わせて記載しています。
通常の見方でいけば注意したいのは
Serious delinquency(深刻な債務不履行:90日以上)
の割合ですが、ここではもう一歩踏み込んでFHAローンの割合も併せて見ていくことでより正確にリスクを把握してみましょう。
明日に続けます。
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