こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
Eviction moratorium(強制退去禁止)
に関して更新情報です。
つい2週間ほど前に
Eviction moratorium(強制退去禁止)が再施行
でEviction moratorium(強制退去禁止)に関する更新情報をお伝えしていました。
簡単におさらいをすると
「家賃滞納の理由がパンデミックの影響によるものであれば、オーナーはテナントを強制退去させてはならない」
これがEviction moratorium(強制退去禁止)です。
昨年のパンデミック以降にこの施策がCDC(アメリカ疾病予防管理センター)より打ち出され、全米で強制退去禁止令が出されていました。
この期間、もしも自分が所有する物件のテナントがパンデミックの影響で家賃が支払えないとなるとオーナーに家賃収入はありませんから、とりわけモーゲージ支払いを抱えるオーナーとっては苦しい状況が続いてきたわけです。
一面、この政策はパンデミック下において
「必要だったか、不要だったか」
という論点で語るのであれば私(佐藤)も
「必要だった」
とは思います。
けれどもその政策はテナント視点のみならず、もう少し物件オーナー寄りの政策が実行されてもよかったかもしれません。
幸いなことに私(佐藤)自身はその影響は受けていないものの、現状では明らかにテナントよりもオーナーの方が分が悪いからです。
例えば物件オーナーが融資を引いて投資物件を購入し、その毎月のモーゲージ返済を家賃収入から支払っていたとします。
この場合その物件に入居するテナントが
「パンデミックの影響で失業してしまいました。」
「ここから家賃支払いが出来ません」
とEviction moratorium(強制退去禁止)を行使した場合、物件オーナーはモーゲージ返済が出来ないことになります。
もちろんオーナーにとっても
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)
を行使して
「パンデミックの影響でテナントが家賃が支払えないため、モーゲージ返済が出来ません」
とモーゲージ返済支払いを保留にすることはできます。
そうすると最後にババを引く可能性が高いのはレンダー(融資の貸し手)であるともいえますが、現実にはこのことはやがて物件価格が大きく下がり始めるかもしれないリスクを含んでいます。
なぜなら、
Eviction moratorium(強制退去禁止)
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)
この2つに共通するのは
「パンデミックの影響であれば支払いは止めてよい」
というものですが、それと同時に共通するのは
「未払いの家賃/モーゲージ支払いは累積される」
というルールだからです。
滞納に対するペナルティこそ免除されますが、過去の未払い累積が免除されるわけではない以上は
「いざ失効された場合は過去の累積の支払いは困難」
であることになります。
そして失効した場合はどうなるのかといえば、結局は物件を所有する物件オーナーの方は不利なのです。
モーゲージ支払いの支援に解法を見る

失効の順番としては概ね
1.Eviction moratorium(強制退去禁止)の失効
2.Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)の失効
となるはずですが、まずはEviction moratorium(強制退去禁止)が失効したとしましょう。
この場合、物件オーナーはテナントに退去を促すことになります。
それまでにモーゲージの支払いが出来なかったオーナーは過去1年以上の返済が累積されていますが、それが支払えるのであれば遅延することなく支払っていたはずです。
すなわち物件オーナーにしてみれば支払いが出来ずにMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)を適用してきたわけですが、過去の累積が保てるのはMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)が失効する時まで。
やがてMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)が失効となった場合、多くの融資元は物件を差し押さえるはずですから、その時点で物件オーナーは所有する物件を失うことになります。
もちろん強制退去の憂き目に会うテナントにも心痛むものですが、現実には退去するテナントの多くは家族や友人を頼りに身を立て直し、やがて持ち直すパターンがほとんどです。
けれどもどこかに身を寄せる立場にない物件オーナーの場合は資産を失うことになり、相当な経済的ダメージになります。
そこで米国政府に期待したいのは
「モーゲージ支払いの免除」
です。
現在は米国政府により
「審査を経て承認される場合、滞納家賃の8割を政府が負担する」
との政策が取られており(手続きに時間がかかり、必要世帯に支援は行き渡っていない状態)、この支援により政府から8割の家賃収入を受け取って持ち直す物件オーナーもいます。
けれども役所仕事で手続きに時間がかかる以上、それよりも即効性が高いのは
「モーゲージ支払いの支援(政府が融資元を支援)」
です。
単純に言えば
家賃 > 毎月のモーゲージ返済額
となるはずですから、米国政府にとっても家賃支援よりもモーゲージ返済を支援した方が予算は低く済みます。
他にも
- 固定資産税
- 保険
- HOA
等の支払いがありますが、物件オーナーはモーゲージ返済がなくなるだけでもかなり助かるはずです。
このあたりの物件オーナーに対する支援がなかったことは残念ですが、実はこの流れの中で
Eviction moratorium(強制退去禁止)
に対して再び、米国最高裁判所の判決によりストップがかかりました。
その詳細を見ていきましょう。
明日に続けます。
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