昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨年末に、久しぶりに全米不動産協会が提供するクラスを受講しました。
Ethics(倫理)
という、倫理規定に関するクラスです。
不動産業界に限ったことではありませんが、米国ではおよそ定期的にライセンス更新が必要となる専門職に関しては
CE(Continued Education:継続学習)
と呼ばれる継続学習クラスを定期的に受講し、過去の知識を陳腐化させないと同時に記憶を蘇らせ、かつ新しく定められた規定についてはその最新情報を学ぶように教育システムが組まれてます。
私(佐藤)が知る限りこの継続学習制度は医者・弁護士・会計士といった各専門職も同じで、それらの業種では
「一定期間ごとに継続学習を履行し、試験をパスしないとライセンスが維持できない」
という仕組みになっているのです。
例えばテキサス州の不動産仲介資格の場合は
- Sales Agent(セールスエージェント)
- Broker(ブローカー)
の2種類があり、全員が最初はSales Agent(セールスエージェント)のレベルからスタートします。
Sales Agent(セールスエージェント)の資格をもって経験を積んだ後にBroker(ブローカー)資格を取得するかは本人次第。
Sales Agent(セールスエージェント)のままで年間に億単位のコミッションを稼ぐツワモノは普通にいますし、
Broker(ブローカー)= 実力がある
とは限りません。
けれども、そんなSales Agent(セールスエージェント)資格でも一度取得すればその後は半永久的に資格を保てるかといえばそんなことはなく、テキサス州の場合は
「Sales Agent(セールスエージェント)のライセンスを保つ為には2年ごとに更新が必要」
「更新の条件はCE(継続学習)を受講して試験をパスすること」
と定められています。
この継続学習と試験の合格なしにはラインセンスを維持することは出来ませんから、Sales Agent(セールスエージェント)たちは(ライセンス更新を望むのならば)確実に
⇒ 求められるCE(継続学習)の習得
⇒ 更新された法律等の把握
を行う必要があります。
このあたりはよく出来た仕組みで、
「何年も前の古い知識のままで半永久的に有資格者として活動する」
ことは出来ないようになっているわけです。
Ethics(倫理)を見直す
そこで冒頭のように年末に必須科目であったEthics(倫理)のクラスを取りましたが、その中で最も強調されているのはやはり
「Seek the client's best interest(クライアント利益を至上とすること)」
という概念です。
不動産取引そのものは米国史の初めからありますが、当時のそれはいわゆる「ぼったくり」が横行する業界でした。
米国はイギリスからアメリカに移住した人々を中心につくられてきた国ですが、当時はヨーロッパの不動産業者が
「アメリカという新大陸の開拓に商機を見出す」
という気負いで、こぞって土地の開発が始まりました。
けれどもヨーロッパ諸国の法律がアメリカ大陸という発見されて間もない土地に適用されるはずもなく、またヨーロッパ諸国ですら不動産法が完璧に整備されている状態ではなかったはずですから、新しく発見された土地で
「規律ある不動産売買取引を行う」
ということ自体が無理があったかもしれません。
結果として当時のアメリカでは
「でたらめな建物をでたらめに売る」
ことは横行し、かつ
「買主は詳細を知らないまま、ババを掴まされる」
という倫理観の「り」の字もない状態が長年放置されていたのです。
そこでようやくEthics(倫理)なるものが法律として米国で導入されたのが1913年ですが、その時も不動産取引にはまともな法律が機能しておらずにカオスの状態。
それから100年たった近年までにようやく取引環境が整備され、今では「取引システム」そのものは世界の不動産取引の中でもかなり安心して売買取引が出来るレベルに仕上がっていると思います。
ただし、システムそのものはかなり洗練されてきたとはいえ、いつの時代でもそのシステムに魂を吹き込むのは「人」です。
いくらシステムが洗練されていたとしても、そのシステムを使って案内する人々の倫理観がキチンとしていなければ取引は全うに成立しません。
反対に言えば、高い倫理観を持つ不動産業者に出会えたとすれば、取引中に何らかのトラブルがあったとしても最後まで寄り添って面倒を見てくれるはずです。
そうするとやはり、不動産仲介に関わる人々のライセンス規約の中で最も大切なのはEthics(倫理)なように思います。
有資格者が最も守るべき相手は
ちなみに年末のEthics(倫理)に関するクラスの最後の試験で私(佐藤)がうっかり間違ってしまった箇所がありました。
それは
「有資格者に求められる、自分のクライアントへの姿勢で最も大切なものは何か?」
という質問で四択の答えがあったのですが、二択は論外として残りどちらかに違いない、という二択に
「Fairness and Honesty(公平性と誠実さ)」
「Honesty(誠実さ)」
とあり、私(佐藤)は前者のFairness(公平性)を含む
「Fairness and Honesty(公平性と誠実さ)」
を選んでしまったのです。
それは間違いで、答えは「Honesty(誠実さ)」のみ。
ここは答えを見て
「あっ、そうだった」
と思い出したのですが、不動産売買取引には
売主
買主
の2者がいます。
この時にお互いの利益は基本的に
売主「少しでも高く売りたい」
買主「少しでも安く買いたい」
と相反するはずですから、この両者を平等に扱えるはずがないわけです。
そうすると自分がリスティングエージェントとして売主側に立つのなら売主の利益至上に、反対にバイヤーエージェントとして買主側につくなら買主の利益至上に動く必要が出てきます。
両者に平等な姿勢は不可能ですから、自分が雇われる側に対して「Honesty(誠実さ)」が求められるわけです。
不動産を購入するとは、恐らく世の中のほとんどの人々にとっては「人生で最も高い買い物」になるはずです。
だからこそ取引に携わる者には高い倫理観が求められるでしょうし、どこまでもクライアント利益を追求して、どんな場面でもクライアントに対する「Honesty(誠実さ)」が求められることになります。
世界中の誰もが参入しやすいアメリカ不動産市場だからこそ水先案内人として倫理観を年々高めていく必要がある、そんな風に改めて倫理を見直した年末でした。
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