こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産市場の今についてお伝えしています。
パンデミック以降、実に3年3カ月ぶりにFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを実施しました。
事実上、パンデミック直後に実施されたゼロ金利政策は解除されたことになります。
ここからはインフレの推移を観察しながら追加利上げの幅とタイミングが計られることになりますが、投資家にとっては歴史的な低金利の時期は一旦終わり金利が上昇基調となることは避けられません。
ただし上昇基調とはいえ歴史的に見ればまだ低金利のレベルにありますから、少なくとも現在の金利では大きく購買意欲が失われることはなさそうです。
言い換えると、ここから夏のピークタイムに向けて益々
「駆け込み需要」
なるものが本格化するでしょうし、本年は金利上昇と共に年末に向けて
「物件価格の上昇率がパンデミック以前のそれに戻る」
という結果に落ち着くのではないでしょうか。
そしてたった今のアメリカ不動産市場を俯瞰すると、ここには
⇒ 金利上昇による駆け込み需要
⇒ ピークタイムに向けての需要の盛り上がり
⇒ 圧倒的な供給不足
という3つの強力なベクトルが働いています。
これらの要素が折り重なって、物件価格は未だに上昇傾向にあるわけです。
ただし、このペースのままでは
「高値が高値を叩く」
レベルにどんどん近づくことになり、その亀裂は「Affordability(値ごろ感)」の側面から入ってくる可能性が高いと見ています。
とどのつまり
「流石にここまで高くなると無理」
「買いたくても買えない」
と感じる人々の絶対数が多くなり、果ては良くて高止まり、或いは価格が下がることも予想されるわけです。
それでも
「2007年から2012年までのレベルで暴落する」
「下がった価格は永久に戻らない」
というシナリオは描きにくいと思いますが、乱気流の中を飛ぶ飛行機の如く一時的にも上から「ガツン」と叩かれるような衝撃は起こり得るように思います。
そこでより具体的に今のアメリカ不動産市場の「Affordability(値ごろ感)」について掘り下げ、グラフと数字をもってその全容を捉えていきましょう。
全容を俯瞰することでここからのアメリカ不動産市場の行く先を見立て、先に備えた戦略を練る一助となれば幸いです。
供給不足の実態は

最初に捉えておきたいのは、
⇒ 金利上昇による駆け込み需要
⇒ ピークタイムに向けての需要の盛り上がり
⇒ 圧倒的な供給不足
という3つの力学の中で一番最後の
「圧倒的な供給不足」
です。
まずはここを統計を使って別の角度から見てみましょう。
下記のグラフを見てください。

このグラフは
「月単位の物件在庫期間」
を示しています。
左の縦軸に
3 ~ 13
までの数字が縦に並んでいますが、これは「ヶ月」の意で、
3カ月 ~ 13カ月
の意味です。
これは何の期間かといえば、
「仮に市場のFor Sale物件がここからは一つも増えない場合、現在市場に出ているFor Sale物件が売り切れるまでの期間」
です。
縦軸の数字が3であれば
「3カ月で在庫はゼロになる」
であり、数字が13であれば
「13カ月で在庫はゼロになる」
ことになります。
そこで注目しておきたいのが、上のグラフ内に縦長の丸印をつけた3つのポイントです。
これら過去に起こった事実から
「供給過剰が急激に進む後には、景気後退が起こる」
「景気後退に伴い、供給数は急激に減少する」
という傾向が読み取れます。
簡単にいえば、少なくとも過去に起こった事実としては
「不動産市場の供給過剰は景気後退の兆候」
だった、ということです。
それではたった今はどうかと言えば、本年1月の時点でも在庫は「6.1カ月」と極めて低い水準にあります(上のグラフの横赤線)。
2020年初頭の数カ月はパンデミックの影響により不動産業界も大打撃を受け、売買そのものが難しくなる中で市場に出される在庫数は必然的に大幅に減少しました。
今はパンデミック時の最悪のタイミングは抜けているものの、歴史的には
在庫期間が短い = 供給が少ない
という時期にあることは間違いありません。
少なくとも過去からの蓋然性を捉えるのであれば、
「過剰な供給数にはまだしばらくは達しない」
という傾向が伺え、
「現在も未だに圧倒的な供給不足の状態にある」
ことは、このグラフからも疑いようのない事実です。
ここがアメリカ不動産市場の圧倒的な供給不足の一つの証拠であると同時に、結果として
「アメリカ不動産の物件価格は上昇基調がもうしばらく続く」
という見立てが立つことになります。
特に近々物件売却を検討されている方々は、上のブラフは自分が物件を市場に出すタイミングを推し量るのに使えると思います。
過去の例をあげると、2008年12月あたりまで在庫数は増え続けていたことが分かります。
ところが2008年を境としてその後には在庫数は一気に減り、すなわち
「リーマンショック以降の不動産価格暴落の深刻さを見て、物件を売りに出す予定だった人々も動きを控えた」
ことがはっきりとグラフに出ているのです。
このように大衆が
「今は物件を売りに出すのはまずい!」
と判断すると、予想以上の規模とスピードで物件に出てくる在庫の絶対数は少なくなってきます。
それでは
「じゃあ、在庫が少ないのなら高く売れるのか」
といえばそうではなく、この場合は
「買い手も減り価格は買い叩かれる、買い手市場に変化する」
ということが言えるのです。
そして今はこの在庫がようやくパンデミック以前の上昇基調に戻ってきたばかり。
そうすると、今しばらくは
需要 > 供給
この力関係が続き、結果として価格は上昇し続ける可能性が高いことなります。
このあたりをアメリカ政府の統計資料を使って、もう少しクローズアップしていきましょう。
明日に続けます。