昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
本年3月に開始されたFRB(連邦準備制度理事会)による政策金利の値上げを皮切りに、アメリカ不動産市場も大きく変化し始めていますが、不動産市場の変化として最も顕著だったのは
「金利上昇による売主と買主の心理の変化」
です。
パンデミック以降は実質ゼロ金利政策に端を欲する劇的なモーゲージ金利の低下から、アメリカ不動産市場が空前の活況を呈したことは記憶に新しいところ。
この時期はパチンコでいうところの「高確」が続いていたような状態で、低金利をもって絶好のチャンスが広がっていた時期と言えます。
どこの市場もその需要を生み出すのは
「欲しい」
という人々の「心理」であり、この場合は
「この低金利を逃す手はない」
という
- 物件購入希望者
- 投資家
の心理が混ざり合い、ただでさえ枯渇する市場に人々が一斉に集まり物件価格を急激に押し上げていったのでした。
その好機は本年3月に政策金利上昇と共に幕を閉じ、
「今のタイミングを逃す手はない」
という刹那的な需要(心理)が消え始めたことになります。
そして先だってご紹介した全米各市場の
「オファー時の競争発生率の変化」
で数字を確認したとおり、金利上昇と共に
⇛ 売り手市場に大きく変化しつつある市場
⇛ まだまだ売り手が強い市場
にほぼ二分されていることが分かりました。
アメリカ不動産市場もまた地域市場の塊であり、各州各地域市場により状況は大きく異なります。
そこで市場単位によく観察してみると、一定数の
「今なお高い需要が続いている」
「金利上昇の影響がほとんど見受けられない」
という地域市場が確認出来るのです。
感触としては、近年のアメリカ不動産市場で言えば今の時期は
2006年 ~ 2007年
あたりの雰囲気を思い出させます。
もちろん
「あと時のような大暴落が起こる」
という意味ではなく、ゆっくりと着実に
「市場が変化し始めている」
「はっきりとした変化の傾向が固まるのはもう少し先」
そんな感触です。
そこで本年もすでに第3四半期の真ん中となる8月に入りましたが、統計が十分に揃っている数ヶ月前までの統計を確認することで
「アメリカ不動産市場の今」
を大局観で確認していきましょう。
モーゲージ金利の今を追う
そこでまずは本年からのアメリカ不動産市場のベクトルが変わる起爆剤となった
「モーゲージ金利の変化」
を見ていきましょう。
資料は米国の
MBA(Mortgage Bankers Association:モーゲージバンカー協会)
のホームページからそのまま
- 近年のモーゲージ金利の推移
- ここから先のモーゲージ金利変化の予想
を網羅する表を拝借します。
上記の項目で最も注目するべき
30-Year Fixed Rate Mortgage(30年固定金利)
に注目してみましょう。
ちなみに30年固定金利は米国10年国債をベンチマークとして動く傾向があり、それを意識してかMBAで出す統計も
30-Year Fixed Rate Mortgage(30年固定金利)
10-Year Treasury Yield(10年米国国債利回り)
が並べて記載されています。
そこで上記の通り、ここまでの30年固定金利の変化は
2021年第1四半期 2.9%
2021年第2四半期 3.0%
2021年第3四半期 2.9%
2021年第4四半期 3.1%
2022年第1四半期 3.8%
と進み、それ以降は
2022年第2四半期 5.1%
2022年第3四半期 5.1%
2022年第4四半期 5.0%
2023年第1四半期 5.0%
2023年第2四半期 5.0%
2023年第3四半期 4.8%
2023年第4四半期 4.8%
と進むことが予想されていました。
ここで先月7月までの実際の30年固定金利の動きをセントルイス連邦準備銀行の統計を使って答え合わせをしてみましょう。
このように、本年の30年固定金利の動きとしては6月23日に5.81%を上限として、そこから一服して金利は下がり始め7月7日の時点では5.3%です。
MBAの予想と数字は若干違うものの、
「2022年第2四半期あたりで一服する」
という傾向は当たっているようです。
MBAの予想ではこのまま進むと来年まで今のモーゲージ金利水準が続き、2023年第3四半期からは若干金利が下がってくることが予想されています。
そこで今度は大元となる
Federal Funds Effective Rate(フェデラル・ファンド実行金利)
の動きを見てみると、
このように着実に金利が引き上げられ、ここに加えて本年はあと2、3回の利上げが予定されているとのこと。
この着実な政策金利の上昇にも関わらず、モーゲージ金利そのものは7月から落ち着き始めているとは興味深い事実です。
本年はここからFRB(連邦準備制度理事会)が
「更に金利を上げる」
と断言している中、MBAが予想するように金利はほぼ今の水準で向こう約1年間は落ち着くとは本当なのでしょうか。
ここまでにMBAが予想した「傾向」は当たっていると思いますが、もしもその予想通りにここから
「モーゲージ金利そのものはこれ以上はそれほど上がらない(むしろ1年後から若干下がり始める)」
という傾向が現実のものとなる場合、必然的に見えてくる答えは
「先の不動産価格の下げ具合は限定的になり得る」
ということです。
ここから、本年までの不動産業界に関する直接的な数字を追いかけてみましょう。
明日に続けます。
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