昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先だって2022年夏のアメリカ不動産市場の様子をお伝えしました。
現在のアメリカ不動産市場を一言でいえば、物件価格に関して言えば
「下げる力が上げる力に勝り始めている状態」
と言えます。
全米平均としては
⇒ 前年比で価格は上昇
⇒ けれども上昇率は鈍化
⇒ 在庫数は増えつつある
という中にあり、経済サイクルに沿ってほぼ間違いなく全体の価格が下がる方向に向き始めているようです。
そしてアメリカ不動産市場もまた地域市場の塊であり、個別に地域市場を見てみるとキャピタルゲイン市場を中心に価格が実際に下がり始めた地域も存在する中で大きな鍵を握るのは
「Inventory(在庫)水準」
というのが前回の話でした。
不動産価格もまた需要と供給の関係で大きく動いてくる性質があり、供給要素となる在庫の増加はもしもそれを吸収する需要がないのであれば、価格は以前よりも下がってくる可能性が高くなります。
そして全米の中でもいち早く市場に出回る在庫がパンデミック以前の水準に戻ったのがサンフランシスコ市場です。
当地はパンデミック以降に物件価格が激しく急上昇してきた地域市場の1つであり、全米に先駆けて膝をつく形となりました。
ここから同市場の物件価格が上昇していくことは非常に考えにくく、このまま前年比の価格が下がり続ける中で
⇒ 2019年までの然るべき水準に落ち着くのか
⇒ 2019年以前の価格よりも更に下がっていくのか
が注目されます。
このサンフランシスコに続く地域市場は陸続と出てくる様子ですが、ここでは9月上旬時点の様子をダイジェスト的に見ていきましょう。
モーゲージ金利が最高レベルに達する
まずは気になるモーゲージ金利の動きからです。
不動産価格もまた需要と供給の関係で上下する中で需要に大きな影響を与える要素の一つがモーゲージ金利です。
モーゲージ金利が高い ⇒ 毎月の返済額が高くなる
の関係がありますから、購入者にとっては金利上昇は購入意欲を削がれることになってしまいます。
そして現在はモーゲージ金利が上昇しつつあるステージですから、この金利の動きが確実にマイナスに影響してくるわけです。
この9月上旬にはモーゲージ金利が2008年11月のレベルに並ぶ高金利となりました。
上のグラフの如く、bankrate.comによると9月9日の
30年固定金利の平均
がなんと
6.08%
と6%台に突入。
補足すると、モーゲージ金利そのものはFRB(連邦準備制度理事会)の政策金利に直接的な影響を受けることはありません。
「パウエル議長が政策金利を上昇させ続けるからモーゲージ金利が上昇する」
というわけではなく、モーゲージ金利が影響を受ける大元の力学は
「アメリカ10年債券利回り」
です。
ここではダイジェスト的に見ていきますのでアメリカ10年債券に影響されるカラクリは割愛しますが、アメリカ10年債券の動きをみると
このように上昇基調にあり、これに伴ってモーゲージ金利が上昇基調にあることになります。
検索数が減少
また別の視点で見ると、全米で不動産購入の動きが鈍化する中でそれを象徴する動いもいくつか見られます。
その一つに仮想世界で見られる様子が
「物件を検索する人々の数が減少している」
ことです。
現代は誰もが物件情報に気軽にアクセスできる為、物件探しとなると誰もがまず最初にインターネットで検索します。
ところが物件探しの検索頻度は前年に比べると明らかに減少している様子。
上のグラフは「Homes for Sale」のキーワードでの検索数の推移ですが、明らかに昨年比で減少している様子が分かります。
このような物件検索に関連するキーワードは軒並み減少しつつあり、すなわち需要の減少を示唆しているのです。
内覧希望が大幅に減少
そして仮想世界のみならず現実世界でも需要が減少している様子が見て取れますが、この動きを捉えるのに分かりやすい指標の一つが「内覧数」です。
物件を購入する場合、通常は買主の立場であればエージェントに依頼して物件の内覧を実施することになります。
この時に内覧予約を入れることになりますが、この予約には現在は「ShowingTime」のような内覧予約管理を請け負う会社のシステムが活用されています。
そこでShowingTimeの統計を見てみましょう。
上記は内覧者数の前年比の変化ですが、
2020年
2021年
2022年
の3年間の前年比を並べてみると
2020年 ⇒ パンデミック直後で急激に内覧が増えた
2021年 ⇒ やや落ち着いてきた
2022年 ⇒ 大きく下がり、夏のピークタイム終了と共に激減
という様子が見て取れます。
この9月上旬に至っては本年最初の時期と比較すると内覧数は38%も下がっており、
内覧が少ない ⇒ 購入希望者が少ない
ですから、明らかに需要そのものが減少しつつあることが分かるのです。
モーゲージ申請数も減少
最後にダイジェストとして知っておきたいのがモーゲージ申請数の減少です。
現在はモーゲージ金利は大きく上昇しつつある局面にあり、それに伴ってモーゲージ申請数は9月上旬には季節調整後で前週比で1%減少、かつ前年比の同時期と比較すると23%も申請数が減少しています。
物件購入に際しパンデミック期間は現金購入のパターンも多くありましたが(市場が活況な時には現金購入が有利)、それでもファイナンシングを実施して購入する世帯も多くありました。
多くの人々は現金購入では難しいために融資を組む必要がありますが、その申込数そのものが前年比で大きく減少しているということは、需要そのものが減少している局面にあることは間違いないのです。
。。。
ダイジェスト的にアメリカ全体で価格が下がり気味になる様子を見ていきました。
ここからは各地域市場の行く先を占う要素を見ていきましょう。
明日に続けます。
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