昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
本年も11月に入り、アメリカ不動産の年間サイクルの中では市場が一番冷え込む
12月 〜 2月
に向かい始めています。
詳細は地域市場によって違いがあるものの、毎年11月には市場全体として動きが鈍くなる傾向が顕著になる時期です。
とはいえ、近年のアメリカ不動産は歴史的に見る年間サイクルとは違う動きを見せてきました。
⇒ 真冬なのに物件が飛ぶように売れる
⇒ 1月でも2月でも売り手市場の様子が変わらない
そんな異常値を見せていたのです。
その一番の理由は
- 歴史的な低金利が続いていたこと
- 枯渇気味の供給により少ない物件に複数のオファーが入る傾向にあったこと
です。
⇒ 低金利が後押しする超需要
⇒ 枯渇気味の供給
これらの極端な正反対のベクトルが折り重なり、結果として
⇒ 物件価格の急上昇
⇒ 真冬シーズンの繁盛
を創り出していたのでした。
その意味では昨年の冬まで、通年の不動産サイクルとは違う特異な需要と供給が異次元のサイクルを生み出していたことになります。
それが本年はここまでの金利上昇によりすっかり不動産市場が冷え込み、昨年とは打って変わって通常の年間サイクルにほぼ戻った様子。
「売れる物件は売れる」
ということに変わりはないものの、それでも昨年までは
「市場に出せばすぐに売れる」
という状況だったものが、売り手側もなかなか苦戦する状況に変化しつつあります。
いわゆる、今のアメリカ不動産市場は「買い手市場」へとすっかり変化しているのです。
シニア世代はどう動くか
そこで本年の不動産市場は伝統的な通年の動きに戻り動きが鈍くなりつつあるわけですが、正確には需要が失われたわけではありません。
本当の意味で需要が失われるのは
「その地域市場の人口が減少していく時」
ですが、概ね米国全体として人口増加が続いている傾向は変わらず、強い不動産需要はそこにあるのです。
たった今は
「旺盛な需要はあるけれども、動くに動けない状況にある」
というだけで、隠れ需要そのものは変わりません。
このような背景を受けてアメリカ不動産市場全体としては物件価格が下る地域も見え始めているわけですが、そうは言っても今のところ
「大暴落が起こる」
と断定できる強い説得力のある要素は見えていません。
不動産市場以外の金融市場から影響を受けることはあったとしても、不動産市場内部には大暴落を引き起こす要素は今のところ見えないのです。
ただし、やや無理矢理にでもアメリカ不動産市場内の不安要素を引き出してみるとすれば、それは
「シニア世代の売却動向」
になるだろうと思います。
世代別に見る時、米国でもまた物件を所有する割合は年齢に比例していきます。
シニア世代の方が若い世代よりも物件所有率は高く、このことはつまり
「不動産市場はシニア世代の動向に影響され得る」
ということです。
そこで今のアメリカのシニア世代に何ら問題はないのかといえば、たった今は大きな問題はないものの内蔵する近い将来の不安要素はあります。
それは何かといえば、米国版の年金問題です。
アメリカの場合はそもそもが老後に向けた積立て/資産運用は個人に委ねられています。
1980年代から
「将来は国が準備する年金だけでは十分ではありません」
「自分でしっかりと将来の老後資金をご用意ください」
そんな風に米国市民に明確に伝え、同時に401Kを代表とする積立制度を充実させることで米国市民が老後に備える後ろ盾を続けてきたのです。
ところがここに来て、資産運用の要とも言える株式市場に大きな不安要素が見えています。
株価の乱高下を繰り返す中、401Kで運用中の資産が大きく目減りしてしまったシニアが数多くいるのです。
株式市場の今後は実に不透明で、2008年と同等もしくはそれ以上の大暴落と混乱が起こり得ると説く識者が多いことは周知のとおり。
それが実現するか否かというよりも風船が膨らみ続けてきたことは事実でしょうし、
「起こるのか」
というよりも
「いつなのか」
という議論の方が正しいのかもしれません。
所有物件で老後資金を確保
そうすると、もしもこのまま401Kの資産が大きく目減りしたシニア世代にはどのような選択肢があるのでしょうか。
「モーゲージはすでに支払いを完了しており問題はない」
という人々は良いものの、
「モーゲージ支払いはまだまだ続く」
というシニアにとっては大きな不安が残ります。
すなわち
「老後資金が不足するのは確実」
ということであれば、
⇛ 一度はリタイアしたものの、仕事に戻る
⇛ 仕事はせずにリタイア生活を続ける
の選択肢しかない中で、喜んで前者を選ぶシニアもいるかもしれませんが
「今から働くのには体がついていかない」
「健康上の理由で働きたくとも働けない」
というシニア世代も少なくはないはず。
そうすると、これらの
⇛ 働きたくない
⇛ 働きたくとも働けない
という人々が選べる選択肢は1つ、
「自宅を売却して生活資金を確保する」
ことだけです。
厳密には自宅を売却せずとも、シニアが自宅に暮らしながら自宅を担保に毎月お金を引き出す
Reverse Mortgage(リバースモーゲージ)
という手段もあります。
この場合は融資元に毎月返済するのではなく、反対に融資元から毎月お金をもらえるわけですからある意味年金代わりに使うこともできます。
けれどもReverse Mortgage(リバースモーゲージ)が可能なのは
- モーゲージをすでに完済している場合
- 元金残高が非常に少ない場合
のどちらかであり、実情としては多くのシニア世代はReverse Mortgage(リバースモーゲージ)を実行したくともできないのです。
ここから、シニア世代が内包する不動産市場へのインパクトをもう少し深く見ていきましょう。
明日に続けます。
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