こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
「先手必勝」
とは商売でも全く同じことが言えると思います。
その反対例として分かりやすいのは「トレンドに乗る行為」ですが、例えば株価がどんどん下がっている時には
「株価の底で購入したい」
「けれどもいつまで落ち続けるのか分からない」
そんな不確かさで行動できない人がほとんどです。
アメリカ不動産でも全く同じことが言え、前回の2008年から本格化した大暴落の際には
「物件価格の底で購入したい」
「けれどもいつまで落ち続けるのか分からない」
そんな不透明な最中で、とりわけ不動産のような高額商品に対しては思い切って飛び込める人々はほとんどいませんでした。
けれども2012年あたりで一息ついて平均価格が上向き始めると、そこからは一気に
- 自宅用物件
- 投資用物件
それぞれ、或いはその両方を求める人々が一斉に買いに走り始めたのです。
けれども株価でも不動産価格でも先手必勝のタイミングはまず間違いなく
「大底の前」
です。
他者と同様に参入してトレンドに取ろうとしてもタイミングとしては二番煎じ三番煎じであり、得られたはずの利は先行者利益に遠く及ばないレベルになるどころか、アメリカ不動産の場合は激しい獲得競争に巻き込まれてしまうことになります。
だからこそ今のような価格調整が大切なのです。
そこで今回は商業物件契約にスポットを当て、本格的に活気づく前のくすぶりが見えている商業賃貸契約の中でもポイントとなる条項を拾い上げています。
商業賃貸契約書はその内容が住居用賃貸契約書とは大きく違い、これらの要点を事前に押さえておくことは大切です。
今日はそんな重要度の高い条項の中でも借主のお財布を直撃するEscalation Clause(エスカレーションクラウズ)について見ていきましょう。
Escalation Clause(エスカレーションクラウズ)

Escalation Clause(エスカレーションクラウズ)のEscalation(エスカレーション)という言葉は
「エスカレーター」
を思い出すとそのイメージが一発で理解できるのではないでしょうか。
エスカレーターはデパートを始め街中のどこででも目にするものですが、「徐々に登っていく」というあの動きを見てそのままでEscalation Clause(エスカレーションクラウズ)の言葉を捉えると良いと思います。
ここでいう「エスカレーション:上昇」とは
「家賃の上昇」
という意味であり、ズバリ
「将来の家賃上昇に関する約束事が明記されている条項」
がEscalation Clause(エスカレーションクラウズ)です。
アメリカで住居用物件を借りる時、大抵はその賃貸契約は「年間契約」になっているのが一般的です。
そこで通常は賃貸契約が切れる3カ月前を目安に「更新案内」を出すことになり、その案内に
「契約を更新する場合、次の1年間の毎月の家賃は$〇〇〇〇になります。」
「月極に変更することも可能ですが、その場合の家賃は月額$〇〇〇〇です。」
等、その毎年の更新時に次の家賃が明記されることになります。
これに対し、商業賃貸契約書の場合は月極という概念はほとんど存在しません。
あるとすれば
「共有ワークスペースを月極契約で借りて仕事をする」
という場合くらいで、通常は1年以上の契約になります。
商業パターンの賃貸契約では1年以上が基本となる理由は容易に想像できると思いますが、商業物件の場合は
「その場所でそれなりの期間商売を続ける」
という前提があり、実際に入居するテナントもまた
「1年で勝負をかける!」
という場合はほとんどありません。
昨日まではAlterations Clause(オルタレーションズクラウズ)についてお伝えしましたが、それこそ
「改築して専用の厨房をバッチリ整えました」
「店内レイアウトも結構なお金をかけて斬新なアイデアを取り入れました」
とそれ相応の時間とお金をかけておきながら
「でも、私は1年で退去しますので」
ということはあり得ないのです。
先の家賃上昇を決めておく

そこで商業物件賃貸の場合は
「長期賃貸が前提」
ということは納得がいきますが、ここで気をつけておかなければいけないのは物件オーナー本人です。
先の住居用賃貸契約を改めて引き合いに出すと、この場合は
「年間契約となり、家賃は固定の$〇〇〇〇です。」
とストレートに固定の金額が定められています。
これに対し、商業物件賃貸において長期に渡り入居してもらうのは貸す側としては
「先の数年間の家賃収入がほぼ確約出来て嬉しい」
という一方で、住居用賃貸契約と同じように
「契約期間中の家賃は固定の$〇〇〇〇です。」
というわけにはいきません。
少なくとも今の金融資本主義では「経済を成長させる」という前提があり、その前提で法人の在り方を考えると
「会社を成長させる」
という前提になります。
すなわち商売を行う以上は先の売り上げを立てると同時に、願わくはほぼ全ての商業物件借主は
「毎年の売り上げを増加させていきたい」
と考えているはずです。
また仮に賃貸物件の借主本人がそれほどの成長を願っていなかったとしても、
「世の経済は動き続け、経済成長は進んでいく」
という前提があります。
ここには経済サイクルの波があれども、たった今のインフレで顕著に見られるようにモノやサービスの価格が上昇し続けることは、少なくともアメリカ社会では当然のように続いていくのです。
けれども近年改めて認識されたように、先の経済は3年先でも誰も正確に見通すことは出来ません。
けれども
「3年後のモノやサービスの値段は今と同じではない」
ということだけは確かです。
そしてこのことは家賃にも全く同じことがいえ、すなわち
「3年後の家賃は同じではない」
これは当たり前ですから、仮に商業物件賃貸において
「契約期間中(複数年)の家賃は固定の$〇〇〇〇です。」
としてしまうと、物件オーナーは大きな損失を被ってしまうことになります。
その為、商業物件賃貸契約において予め
「家賃をこのくらい上昇させていきますよ」
と約束してあるのがEscalation Clause(エスカレーションクラウズ)なのです。
Escalation Clause(エスカレーションクラウズ)について、その詳細を見ていきましょう。
明日に続けます。
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