こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
モーゲージ金利に影響を与える因数についてお伝えしています。
個人的な推測にすぎませんが、たぶんロスチャイルド一族の初代、マイアー・アムシェル・ロートシルトが銀行家として活動を開始した頃の「金利に影響する因数」なるものは、現代と比べるとかなり単純だったのではないでしょうか。
そもそもが現代のモーゲージに相当するものが存在していたのかの正確な記録がありませんが、いずれにせよ現代のような複雑な要素はなかったはずです。
簡単に想像できるだけでも
- 融資額の規模(金額の大きさ)
- 融資市場の広さ(地理的な影響力の広がり)
を考えると、とても現代ほどの規模間で取引がなされていたことはないでしょうし、国境のないボーダレスの現在とは比較するとその広がりも全く違ったはずです。
一方で、複雑系の世界にある現代社会のモーゲージ金利は端的には
The Rate of Economic Growth(経済成長率)
Federal Reserve Monetary Policy(連邦準備制度の金融政策)
Inflation(インフレーション)
The Bond Market(債券市場)
Housing Market Conditions(不動産市場)
これら5つにその主な因数を見ることが出来ます。
風に舞う落ち葉に例えるとき、落ち葉の着地点を正確に予想するのは困難であり
こっちからの風に吹かれてユラユラ
あっちからの風に吹かれてユラユラ
しながら、かつ葉っぱそのものの形状も大きく影響して、最終的に葉っぱは誰も予想できない地点に着地することになります。
モーゲージ金利もまさにそういった様々な方向から吹く風に煽られて最終地点を定められるものであり、私たちにできることは
「ここからとあそこからの風が強い」
「そうすると、着地点はこのあたりかな」
そんな風におおよその検討をつけることだけです。
モーゲージ金利に影響する因数として、今日はInflation(インフレーション)について見ていきましょう。
Inflation(インフレーション)

Inflation(インフレーション)もまた、モーゲージ金利に大きく影響してくる因数の一つです。
今の米国は昨年から激しいインフレに見舞われていますが、このような時期には確かに金利が上昇していくことはリアルタイムで体感しているとおりです。
けれどもInflation(インフレーション)そのものは物価上昇を意味しますが、
物価が上昇する ⇒ 商品・サービスの値上げが起こってくる
値上げの風潮がある ⇒ じゃあモーゲージ金利も上げよう
という単純な関係ではなく、そこには「貨幣価値」が深く関係しています。
アメリカの場合は「米ドルの価値」に関りがあり、例えば
「昨年は卵が$2で買えた」
「今年は卵が倍の$4になった」
という時、
「卵が高くなったな~。。」
と感じる一方で、それよりも本質としては
「卵に対しては米ドルの価値が去年から2分の1に減少したな。。」
この視点で捉えることが大切です。
すなわち$1紙幣の価値が半分になったわけで、以前は2枚の$1紙幣でよかったものが、今では4枚の$1紙幣を出さないと買えなくなったことになります。
このことは卵やその他の商品・サービスのみならず、モーゲージ金利についても全く同じことが言えます。
すなわちモーゲージ金利の場合、融資を実行した金融機関の視点でいえば儲けどころは「利子」です。
利子をもって儲けを出すからこそ融資事業として成り立つものであり、儲けが出ないのであれば融資を行う理由がありません。
その儲けを大きく左右するのがモーゲージ金利なのです。
また更にその奥をいえば、モーゲージ会社にとっては「元金」そのものもインフレーションの影響を大きく受けることになります。
元本は融資額そのものであり、毎月のモーゲージ返済により少しずつ元本の一部も返済されるものの、融資期間は元本残高は債務者の手元にあります。(モーゲージの場合は融資額はすでに売主に手に渡っていますが、債権者視点では債務者の手元に元本があるのと同じ)。
そうするとモーゲージ会社としては30年固定金利、或いは15年固定金利の中で少しずつ元本も返済してもらうわけですが、
「インフレが進むほど、返してもらう将来の元本の価値は低くなっていく」
のです。

例えば
30年固定金利5%
で融資を実行したとしましょう。
これに対しインフレが年間2%で進んでいくものとします。
この場合、契約上は5%だったとしても実質はモーゲージ会社の儲けは
3%(5% - 2%)
です。
すなわち
「インフレが進めば進むほど儲けは少なくなる」
という定めにありますから、インフレ基調にあるのなら
「将来の儲けを確保するべく、可能な限り金利は高く設定する必要がある」
という理屈になります。
加えて融資当初の元本の価値も将来は確実に減少しますから、いよいよ儲けの出る金利に落とし込まねばならないのです。
これらが理由で、インフレが大きく進むことが予想されるのであれば
「将来の損も見込んで、モーゲージ金利は高めに設定しておかなければならない」
という動機が働くことになります。
ここにインフレ基調が続く米国と、物価上昇が米国ほどではない日本の住宅ローン金利との違いが出る所以の一つがあります。
インフレ基調にある米国では、モーゲージ金利そのものが1%以下となる可能性はほとんどないのです。
モーゲージ金利に影響する因数について、明日に続けます。