こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行の破綻とその影響について考察しています。
今回の両行の破綻とその原因を知った時、真っ先に思い出したのが
ワシントン・ミューチュアル銀行(Washinton Mutual Bank)
でした。
実は私(佐藤)も同時ワシントン・ミューチュアル銀行に口座をもっており、その充実したサービスやオンラインサービスには利便性を感じていました。
けれども他の大手金融機関と同様に、サブプライムローンを中心に住宅ローンの事業を拡大し、やがて住宅市場が低迷しはじめるとサブプライムローン事業の評価損が拡大。
同行の一般住宅ローン事業にも飛び火し、2006年には経営問題が表面化し始めた経緯があります。
その後に2008年9月11日にリーマン・ブラザーズが
Chapter 11(チャプター11:連邦倒産法第11章)
を適用して事実上の経営破綻をした日、途端にワシントン・ミューチュアル銀行の顧客は資金を引き揚げ始めたのです。
この時のことはよく覚えていますが、インターネット上で
「ワシントン・ミューチュアル銀行がまずい」
という話が一気に広まり、リーマンブラザーズ破綻後の10日間での預金の引き出しは167億ドルに上ったのでした。
私(佐藤)が記憶する限り、2000年以降、完全な情報化社会に移行した中で初めての
「インターネット上の噂で起こった、歴史上初めての取り付け騒ぎ」
だったと思います。
同様に取り付け騒ぎを原因とするものの、今回の破綻は2008年のリーマン・ブラザーズとは異なり、シリコンバレー銀行もシグネチャー銀行も投資銀行ではなく、また
フレディマック
ファニーメイ
のようなセカンダリーマーケットの仲介者でもありませんでした。
顧客の比重としてはシリコンバレー銀行はテック企業と、シグネチャー銀行は暗号資産系の企業と深く関わっています。
ここで大雑把ながら整理すると、銀行が破綻するには
債務超過
非流動性
という、大きく分けて2つの流れがあります。
債務超過とは
「銀行の資産の価値が負債を下回ること」
であり、リーマン・ブラザーズが正にそうでした。
非流動性とは日本語のニュアンスでは
「Maturity Mismatch(満期の不一致)」
を意味し、投資家用大辞典の大家、Investopediaの定義では次のように説明されています。
(意訳)
「
Maturity Mismatch(満期の不一致)とは一般に企業の貸借対照表に関わる状況を指す。
短期負債が短期資産を上回れば、企業は財務上の義務を果たすことができず、長期資産が短期負債で賄われていれば、同様に問題に直面する可能性が高い。
」
この点、シリコンバレー銀行もシグネチャー銀行も非流動性倒産であり、かつ両行の資産は不良債権の類ではないため、そこだけを見れば金融業界全体に影響を及ぼす力は決して高くないとは言えそうです。
けれども唯一の問題は、「短期債務を履行できないこと」です。
実際のところ、シリコンバレー銀行の資産が競売にかけられたとしても損害は限定的である可能性が高く、これらの銀行の破綻が2008年のような経済全体の崩壊の始まりになるとは考えにくい。
同時にFRBは昨年からの金融引き締めによりこの手の運営に支障をきたす銀行が存在することは分かっていたはずであり、想定内の出来事だったのではないでしょうか。
そして実際に今回の破綻もFRBにとっては大きな問題であり、経済の停滞が続くことになり得ます。
事実、今回の破綻やクレディ・スイスの買収の前に、FDICはシリコンバレー銀行を破綻させたのと同じ種類の満期保有型の債券から、
「銀行のバランスシート上に6200億ドルのUnrealized Loss(未実現損失)がある」
と発表していました。
これらの損失はまさに、昨年から始まった政策金利の急激な上昇によるものです。
これはインフレを抑えるために行われたものであり、現時点ではインフレは多少緩やかになったとはいえ、6%以上という高い水準にあります。
「行くも地獄戻るも地獄」
と言っても極端ではないかもしれず、FRBにとっても非常に難しい局面にあると言えます。
アメリカ不動産市場への影響は
そこで米国内においては今回の両行の破綻が
「アメリカ不動産市場に影響し得るか?」
となると、私(佐藤)自身は
「今のところ、全米全体としては影響はほとんどない」
「けれども、特定の地域では影響はあり得る」
と見ています。
起こり得る影響を無理やりに語るのであれば、
⇒ 本件で世の人々はより慎重になる
⇒ 先に起こり得る混乱が完全に払しょくされない限り需要は減る
ということはあり得るかもしれませんが、少なくとも私(佐藤)自身が関わる全米の取引では非常に活発な動きが変わらないのです。
そうするとこれら両行の破綻だけではアメリカ不動産市場全体への影響は考えにくいものの、それでも地域限定で影響があるとすれば、その最たる地域が
シアトル
サンフランシスコ
といった、それこそテック産業に支えられている地域ではないでしょうか。
ただしそれもまた両行の破綻による直接的な影響ということは考えにくく、要はこれらの市場は
高所得
株の成長
で長年支えられてきた、高騰した物件を購入できる層がかなり少なくなっており、両行の破綻が遠因として市場が冷え込ませる程度ではないでしょうか。
ここから更に、不透明な先の動きと不動産市場への影響を踏まえて読み取っていきましょう。
明日に続けます。
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