Encumbrances（エンカンブランス）とLiens（リーン）～ ②

こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。

昨日は

Encumbrances（エンカンブランス）

について言及しました。

あくまでも私(佐藤)が個人的に理解する日本語のニュアンスですが、Encumbrances（エンカンブランス）を強いて日本語でいうなれば

「物件（ひいては自分）にかかってくる負担」

という意味合いが最もしっくりきます。

そして負担になることを別の英単語で

Burden（バーデン）

といいますが、ことEncumbrances（エンカンブランス）に絡むBurden（バーデン）としては

Money Burdens（金銭的な負担）… トラストディード、モーゲージ、税金、裁判所判決の履行

Non-money Burdens（非金銭的な負担）… ゾーニング、イーズメント、ディード・リストリクション、リース

と、経済的に負担のかかる事柄と、経済的ではなく制約により負担がかかるパターンがあるのです。

そして上記の中でも経済的に負担のかかるMoney Burdens（金銭的な負担）のことを、英語で

Liens（リーンズ、担保権）

といいます。

例えば

「モーゲージを組んだことで、自分の持ち家が担保に入れられている」

これはモーゲージに起因するLiens（リーンズ、担保権）です。

モーゲージを組んだということは約束に基いて毎月の支払いが発生していますから、これは法人・個人にとっては経済的負担であり、

Money Encumbrances（金銭的な負担となるもの）

ということになります。

このようにアメリカ不動産の中ではEncumbrances（エンカンブランス）とLiens（リーンズ）という言葉には密接な関係があり、Encumbrances（エンカンブランス）の中でも経済的な負担はLiens（リーンズ）の類になります。

ただし、一口にLiens（リーンズ）といってもモーゲージは自分の意志で組んだものです。

そこでモーゲージの場合は

Voluntary Liens（ボランタリー・リーンズ、自主的に組まれた担保権）

に分類されることになり、その反対に自分が臨んだものではない（リーンズ）は

Involuntary Liens（インボランタリー・リーンズ、他律的に組まれた担保権）

です。

Involuntary Liens（インボランタリー・リーンズ）の例をみていきましょう。

Involuntary Liens（インボランタリー・リーンズ）

Involuntary Liens（インボランタリー・リーンズ）の典型例で、高い確率でアメリカ不動産エージェントの試験にも出てくるだろう用語に

Mechanic's Liens(メカニックス・リーンズ)

があります。

Mechanic(メカニックス)と聞くと、何かしら車等のモーターに関する乗り物に携わる人々を連想してしまいますが、アメリカ不動産でMechanic's Liens(メカニックス・リーンズ)と出てきた場合、それは

「物件の建築・増築・改築、もしくは物件に付属する製品に関連する作業に携わる業者」

のことを指しています。

そして業者が請け負った仕事を完了した時、通常は最後の支払いは作業の完了後に行われなければなりませんが

「契約に基づいて作業を完了したのに、物件オーナーからきちんと支払いがなされていない」

という場合、業者が物件に対してLiens（リーンズ、担保権）をかけるのです。

数あるLiens（リーンズ、担保権）の中でもMechanic(メカニックス)は唯一、

⇒ 確認がなされている（Verified）

⇒ （物件が登記されている）役所に記録されている（Recorded）

の双方が必要とされています。

またMechanic's Liens(メカニックス・リーンズ)の場合は他のLiens（リーンズ、担保権）と明確な違いがあります。

それは「Liens（リーンズ、担保権）」の有効日がMechanic's Liens(メカニックス・リーンズ)を登録した日よりも前に遡れること」

です。

実際、業者が作業を行うには一定の期間がかかり、

「一生懸命作業したのに、支払ってもらえない」

と分かるのは大方は作業が完了した後です。

すなわち大抵は作業が完了してから役所にLiens（リーンズ、担保権）を登録する場合がほとんどであり、事象そのものは過去に発生していますから、登録日の前の出来事に対して担保権を主張することができることになります。

そこで過去にさかのぼる場合はいつを発生日とするかといえば、

• 作業が開始された日
• 資材が設置された日

のいずれかになります。

そこで

Construction Loan（コンストラクション・ローン、建築プロジェクトへの融資）

を融資する金融機関が気をつけなければならないのは、融資に際し物件を担保にしたいのであれば「建築プロジェクトが開始される初日前に、役所に登録する必要がある」ことになります。

仮のこの融資に関する登録が建築プロジェクト開始以降になってしまった場合、その完成後にMechanic's Liens(メカニックス・リーンズ)が業者によりかけられ、かつ債務不履行が発生した際に差し押さえようとしても、Mechanic's Liens(メカニックス・リーンズ)の方が優先されてしまうわけです。