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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日までDeed（ディード）について詳細をお伝えしてきました。
それなりに細かい専門的な知識にまで足を踏み入れていますが、不動産権の譲渡は不動産取引のクライマックスであり、ライセンスを持たない場合でもアメリカで不動産物件を購入する際に最低点知っておきたい知識です。
そこでここではカリフォルニア州で最も頻繁に使用されるDeed（ディード）、
Grant Deed（グラントディード）
Quitclaim Deed（クイットクレームディード）
の二つについて押さえておきましょう。
Grant Deed（グラントディード）
グラントディードはアメリカの不動産取引において、特有の役割を果たす重要なDeed（ディード）です。
Deed（ディード）の最大の特徴は、
「不動産の権利を売却者から購入者へ確実に移転する役割を持つ」
ことです。
例えば友人から本を購入する場面を想像してみてください。
友人がその本を手渡す瞬間、彼は「これでこの本は君のものだ」と言います。
このシンプルなアクションは実質的にグラントディードが不動産取引において果たす役割に似ています。
けれどもグラントディードの特徴は、単に権利の移転だけではありません。
Grant Deed（グラントディード）には、
- 売却者がタイトルを持っていること
- 重要な抵当や権利制約が存在しないこと
の暗黙の保証が含まれています。
これを車の取引を考えてみると
- 売り手がその車の正当な所有者であること
- 大きな隠れた故障がないことを保証すること
と似ています。
ただし他のディードとの違いは、「全ての欠陥やクレームに対する明示的な保証が含まれていない」点です。
つまり、グラントディードは正当な所有と大きな問題の不存在を保証はするものの、細かい問題に対する保証は提供しない性質のものです。
さらにグラントディードには取引の詳細な内容が記載されており、これはプレゼントのカードに「誰から誰へ」という情報とともに、その贈り物の内容や意味を書くのに似ています。
そして取引が完了するとこのディードは公的な記録として郡の役所に登記されるのです。
総じて言えば、グラントディードはアメリカ不動産取引における安全と確実性を保証するための鍵となる文書であり、所有権の移転だけでなくその取引の正確さと透明性を確保していることになります。
ちなみにWarranty Deed（ワランティーディード）は売主が物件の完全な所有権を持っていることや、未来の権利請求に対しても保証することを要求する文書です。
これに対してグラントディードは上述したような特定の暗黙の保証を持っていますが、Warranty Deed（ワランティーディード）ほど広範な保証を持たないため、将来の不確実性から生じる損失や不利益に対するリスクが低いと考えられています。
この違いから、カリフォルニア州不動産取引でのほとんどにおいてグラントディードを選ぶことが多いのです。
Quitclaim Deed（クイットクレームディード）
もう一つのQuitclaim Deed（クイットクレームディード）はアメリカの不動産取引の文書の中でも特異な性質を持っています。
一言でいえば具体的な所有権の保証や詳細な権利の説明を伴わない、権利の放棄や移転を示す文書です。
Quitclaim Deedを理解するための例として、ある物を「持っているかもしれない」けれども「持っていないかもしれない」状態を想像してみてください。
例えば、ある家族が古い家を所有しているとき、家の中に隠された古い宝物があるという伝説があるとしましょう。
けれどもその宝物が本当に存在するのか、どこに隠されているのかは誰も知りません。
家族の一員が他の家族に「もし私がその宝物を見つけたら、それは君のものだ」と言うのがQuitclaim Deedの性質に似ています。
実際に宝物が存在するか見つかるかは保証されませんが、もし見つかれば、その所有権は移転されるということを示しています。
このQuitclaim Deed（クイットクレームディード）は他の不動産の契約書とは異なり、売却者が不動産に関連する特定の権利や利益を持っているとは限りません。
それどころか、売却者はその不動産に関連する権利や利益を有していないかもしれないのです。
何となくその存在意義があるのかないのか分からないQuitclaim Deed（クイットクレームディード）ですが、この文書が主に使われる場面としては
- 家族間での不動産の移転や権利関係の明確化
- 既存の権利やクレームの放棄を目的とした取引
などがあります。
かくしてQuitclaim Deed（クイットクレームディード）は、ある意味不動産取引の中で最もシンプルな形式の一つと言えます。
その一方で、購入者はこのディードによって何らかの権利や利益を得ることが保証されているわけではないことを知っておく必要がありますので、Quitclaim Deed（クイットクレームディード）を使った取引を行う際には
- 取得する権利や利益の範囲
- 関連するリスク
等を十分に検証するようにしましょう。
