こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日まではアメリカ不動産権の譲渡形態であるDeed(ディード)についてお伝えしました。
Deed(ディード)の種類そのものについては実に様々な形態がありますが、ここでは不動産資格の試験に出てくる程度のレベルに留めておきます。
いずれにせよ日本でいうところの権利書とは明らかな違いがあることが分かると思いますが、私(佐藤)がこのDeed(ディード)という譲渡形態を気に入っているのは
⇒ 権利書が手元にある必要はないこと
⇒ 不正が働きにくいこと
です。
Deed(ディード)が登記された後に郵送で自分の手元に原本が届くものの、仮にその原本を無くしたとしても全く問題はありません。
なぜならアメリカ不動産取引において、取引仲介となるエスクロー会社が重要視するのは「役所に登記された記録」であり、物件オーナーの手元にあるDeed(ディード)の原本ではないからです。
「え、じゃあDeed(ディード)の原本は売却時になくてもいいの?」
というと、答えは
「No, you don't.(必要なし)」
です。
ドライな言い方をすれば、そもそもが性悪説が根本にあるアメリカ社会では
「これ、私の手元にあるのがDeed(ディード)の原本です」
と主張したところで、最初から信用されていないともいえます。
もちろん偽造しようとたくらむワルはほんの少数かもしれませんが、物件オーナーの手元にあるDeed(ディード)の真偽を確かめるまでもなく最初から原本は相手にせず、役所に登記された記録を中心に取引は進むのです。
だからこそ、
「
公証署名が完了したDeed(ディード)が登記された段階で『Constructive Notice(法定通知/推定通知)』となり、その所有が万人に知らされたものと見なされる
」
という、登記行為を示すConstructive Notice(法定通知/推定通知)が大切になります。
そこでここから知識をもう少し深めて、今度は不動産の譲渡形態ではなく所有形態を示す
Title Vesting(タイトル・べスティング)
についてみていきましょう。
ここでの単語の意味は
Title(タイトル)… 不動産権
Vesting(ベスト)… 権限の付与、洋服のベストと同じ言葉
で、日本語的にいえば「不動産権の持ち方(所有形態)」です。
そのTitle Vesting(タイトル・べスティング)には大きく分けて
Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)
Concurrent Estates(コンカレント・エステーツ)
の二種類があります。
Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)
アメリカの不動産に関する所有権にはいくつかの形態がありますが、その中でも「Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)」という形態は特に興味深いものの一つです。
「Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)」とは、一つの不動産に対し一人だけが所有権を持つ形式を指します。
この場合はその土地や建物の所有、管理、販売などに関するすべての権限がその一人のものとなります。
その土地や建物に対して他の共有者やパートナーはいないため、その一人がすべての決定を下すことができるのです。
例え話を使ってこの概念をもう少し具体的に理解しやすくするために、以下のようなストーリーで理解してみましょう。
ある時、Aさんはアメリカの田舎に美しい広大な土地を発見し、その土地を購入しようと決意しました。
その土地は大自然に囲まれ、静かで平和な場所でした。
Aさんはここでのんびりとした時間を過ごすための小屋を建て、週末の休暇地として利用しようと考えます。
そこで土地を購入する際にAさんは「Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)」の形式で所有権を取得しました。
Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)によりその土地の全ての権利はAさんだけのものとなります。
よってAさんは好きなように土地を利用することができ、もし将来に土地を売却することになった場合でもAさんだけの判断でそれが可能となるのです。
そんなある日、Aさんの友人のBさんがその土地を訪れ
「一緒にここに果樹園を作ってみないか?」
と提案してきました。
しかしBさんがその土地の共有者ではないため最終的な決定はAさんだけが下すことができます。
Aさんがその提案に賛成すれば果樹園を始めることができるし、反対すればそのままの状態を保つことができるのです。
。。。
そんな風に、Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)という不動産権の形態は唯一無二の権限を自分に一人に与えてくれることになります。
文字通り、土地と建物の全てを自分だけの所有物にしたいのであれば、選ぶべき不動産権の持ち方(所有形態)は
Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)
である、ということになります。
ここから
Ownership in Severalty(オーナーシップ・イン・セヴァラルティ)
以外の所有形態を見ていきましょう。
明日に続けます。