こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日まではカリフォルニア州で不動産物件を購入した後にかかる固定資産税や資産評価についてお伝えしました。
不動産物件はバランスシート内では「資産」に加えられますが、資産を所有する上では一定の固定費は必ず発生してくることになります。
固定資産税も固定費の一つであり、資産を所有する上では避けて通れない支出です。
このあたりの固定費を含めた支出を加味して
年間収入 - 年間支出
を差し引いた税引き前の残高がNOI(Net Operating Income、純収益)と呼ばれるわけで、不動産投資においてはNOIの数字をよく見立てながら運用を進める必要があることになります。
そしてNOIとして残った純収益の後に差し引かれるべきは2点、
- (融資を受けて投資している場合は)モーゲージ年間返済総額
- 所得税
であり、これらを全て差し引いて最後に残る手残りが本当の純利益ということになります。
そこでここでは、この純利益の家である不動産収入に対してかかる税金についても理解を深めておきましょう。
いわゆる
Income Tax(所得税)
の話になりますが、この不動産収入の手残りに対しても当然、Income Tax(所得税)がかかってきます。
実際はプロの不動産投資家たちはこのIncome Tax(所得税)がゼロになる方法を知り尽くしており、熟練のプロになるほど不動産収入に対してIncome Tax(所得税)は支払っていないものです。
ここだけを切り取って聞くと
「脱税はけしからん」
などと勘違いしてしまいそうですが、現実には彼らは
「米国政府が定めた税制に基づいて運用している」
という話であり、そもそも米国政府が
「少しでも手残りが多くなるように」
とお膳立てした方法で運用していることになります。
だからこそ「本当のオタックスヘイヴンはアメリカ国内にあり」と呼ばれるのは本当で、わざわざ租税回避地にお金を逃がす必要などないのです。
そこで実際には熟練のプロ程ほとんど支払っていないIncome Tax(所得税)ですが、ここでは不動産投資に絡めて一つの知識として項に上げておきたいと思います。
Federal Income Tax(連邦所得税)
まずはアメリカ合衆国全土に適用される課税がFederal Income Tax(連邦所得税)です。
アメリカ合衆国の市民や居住者、そして米国で所得を得ている非居住者はすべからく、その所得に応じてFederal Income Tax(連邦所得税)を支払う必要があります。
個人のみならず法人も同様に、その事業所得に基づいて連邦所得税を支払うことになります。
Federal Income Tax(連邦所得税)の税率は日本語でいうところの「累進課税」であり、所得が増えるにつれて税率も増加することになります。
このことを英語では
Progressive Tax(プログレッシブ タックス)
といい、この税率は毎年調整されることが多く、一般に7つの税率ブラケットが存在します。
例えば2022年Federal Income Tax(連邦所得税)の税率は下のように増加していきました。
個人(シングル)の場合:
10%: $0 - $9,950
12%: $9,951 - $40,525
22%: $40,526 - $86,375
24%: $86,376 - $164,925
32%: $164,926 - $209,425
35%: $209,426 - $523,600
37%: $523,601以上
既婚者(共同申告)の場合:
10%: $0 - $19,900
12%: $19,901 - $81,050
22%: $81,051 - $172,750
24%: $172,751 - $329,850
32%: $329,851 - $418,850
35%: $418,851 - $628,300
37%: $628,301以上
他にも「頭の家族」として申告する場合や「結婚して別々に申告する」場合など、さまざまな税率ブラケットが存在します。
そこで例えば年間の所得が$50,000だったとすると、独身の場合は22%、配偶者と共同申告の場合は12%だったわけで、共同申告の方が明らかにお得だということが分かります。
Marginal Tax Rate(マージナル タックス レート)
そしてProgressive Tax(プログレッシブ タックス)の中で出てくる概念がMarginal Tax Rate(マージナル タックス レート)です。
このあたりは少しややこしいのですが、例えば先の個人(シングル)の場合は
$0 - $9,950までの所得に対しては10%の税率が適用される。
$9,951 - $40,525までの所得に対しては12%の税率が適用される。
$40,526 - $86,375までの所得に対しては22%の税率が適用される。
と続いていきます。
そこでもし年収が$45,000である場合、その人のMarginal Tax Rate(マージナル タックス レート)は22%ですが、これは$45,000の金額が22%の税率に入るためです。
けれどもここで気をつけておきたいのは、この時に$45,000全額が22%で課税されるわけではなく、
最初の$9,950 ⇒ 10%の税率
次の$30,575 ⇒ 12%の税率
と進み、最後の$4,475($45,000 - $9,950 - $30,575)だけが22%で課税されることになります。
すなわちIncome Tax(所得税)に対する課税は一番低い税率から順番に、その年間収入が該当する範囲の税率まで上昇していくということになります。