こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
モーゲージ金利の低下により予想される影響についてお伝えしています。
パンデミック以降に物件の価値は大幅に上昇し、アメリカの住宅の平均販売価格は2020年第1四半期から28%以上も値上がりしています。
キャピタルゲインの観点では不動産投資はうまくいったといえますが、同じ不動産投資関連でも、反対にうまくいかなかった類があります。
それは不動産投資信託(REITs)です。
実はアメリカの不動産投資信託(REITs)は2022年初頭の金利上昇以降、低迷しています。
MSCI US REIT指数で測定されるREITのパフォーマンスと10年米国国債の利回りの逆相関を見るとよく分かりますが、金利が上がるとREITsは苦戦し、金利が下がるとREITsは回復する傾向があるのです。
REITsはしばしば物件購入資金を借り入れるため、金利が上昇するとパフォーマンスが悪化します。
多くのREITsはインフレ調整条項をリースに含んでいますが、これが機能するまでには時間がかかり、コスト増加を相殺できないこともあるのです。
さらに金利上昇はテナントに追加の負担をかけ、家賃支払い能力に悪影響を与え、結果として空室率を上げる可能性もあります。
とはいえ、REIT全般、そして特に多様化したREITは、ここからは再び魅力的になります。
その理由はここまで読んで分かると思いますが
「ここからモーゲージ金利が下がる可能性が高い」
からです。
投資信託の類に触れる話ですので個別名は伏せますが、とあるアメリカの小型REITは多様化したポートフォリオを持っています。
アメリカの44州とカナダで796の物件を所有し、53業種にわたる220のテナントを抱えている多様性あるポートフォリオです。
これには小規規模なディスカウントストアから50万平方フィートの製造・流通施設まで、数多くが含まれています。
そしてテナントには
Roskam Baking:101年の歴史を持ち、全国ブランド向けに冷凍ワッフル、プレッツェル、ピザ生地などを製造。
AHF Products:150年以上の歴史を持ち、ビジネスや家庭向けの床材とタイルを製造。
Ryerson:182年の歴史を持ち、70,000以上の金属製品を製造。
等、非常に手堅い面々がそろっています。
見ての通りでこれらの会社は最新のトレンドに迎合するような会社ではなく、長年に渡り安定した信頼できるビジネスです。
これらテナントがそろったポートフォリオの家賃収入のうち52%が工業/倉庫スペースから、18%がヘルスケアから、13%がレストランから、11%が小売から、6%がオフィススペースからです。
そしてうまいのが、このREITは特にクリニックエリアでのヘルスケア不動産への露出を減らしています。
ヘルスケアセクターは空室率が高く、リース期間が短いなどの問題が多いからです。
加えて驚きなのが、このREITの99.4%の物件が賃貸中で、平均リース期間は10年以上、85%のリースには毎年家賃が上がる条項が含まれています。
さらに同REITはテナントの94%から財務報告を受け取っており、問題が発生する前に状況を特定して解決に動ける体制にあります。
かつ同REITが所有する物件の多くが倉庫や流通用に使用されている点も魅力的です。
Eコマースは急成長しており、2029年までに年率9.5%で成長し、7兆ドル産業になると予想されています。
これらの商品はすべてどこかに保管される必要があり、倉庫需要は非常に手堅いからです。
金利の低下が運用基盤を盤石に

やや長々と書きましたが、要するに
「モーゲージ金利上昇で苦しめられていたビジネスは、モーゲージ金利の低下と共に息を吹き返す可能性が高い」
ということが言えます。
前述のREITはそれこそ不動産投資に全面的にかかわっているわけですが、盤石なテナントを揃えたポートフォリオだからこそ、パンデミック以降も息をし続けることができました。
ちなみに興味深いのは、同REITは今のところ専門家から高く評価されてはいません。
言い換えると、同REITには大きな可能性が秘められており、アナリストたちによる今の評価が低いということは、今後評価が上がる余地があることです。
例えば多くの専門家は、ここまでの高金利が同REITのキャッシュフローに悪影響を与えると懸念していますが、実際には同REITの調整後運用資金(AFFO)は過去2年間で大幅に増加しています。
2021年の2億1600万ドルから2023年には2億7800万ドルとなり、金利上昇の影響を受けずに成長しているのです。
そして同REITは配当支払いにも積極的で、昨年のAFFOのうち2億800万ドルを配当に充て、その割合は75%にとどまっています。
これは通常のREITの基準を大きく下回り、すなわち同REITは安全性が高いということです。
また2020年から配当を開始し、毎年配当を増やしており、現在の利回りは7.6%に達しています。
このままいえば、近い将来同REITの利回りは8%を超えることもあり得るのです。
財務状況も健全で資産が53億ドルに対し負債は21億ドルと、バランスシートは強固です。
そこでここからモーゲージ金利が低くなり始めると、いよいよ同REITは強くなる、という見立てもできると思います。
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