こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
強制退去、家賃回収関連でお伝えしています。
この手のトラブルは願わくば遭遇したくないものですが、ある意味、これらを経験していないようでは経験が浅い、と言えるかもしれません。
それでも、ここまでにお伝えしたような内容を予め把握しておけば、いざトラブルが発生した場合でもある程度落ち着いて対処できるのではないでしょうか。
そこで今回はこれに付随し、アメリカの州ごとに異なる「強制退去の法的プロセスの違い」についてお話しします。
テナントが家賃を滞納したり、契約に違反したりすることで、強制退去が必要になるケースは、どの州でも起こり得る問題です。
けれどもそのプロセスの難易度や所要期間は州によって大きく異なります。
ここでは強制退去が比較的簡単な州と、手続きが厳しい州の特徴を具体例を交えながらみていきましょう。
またどのようにして手続きをスムーズに進めるかのヒントも合わせてお伝えしてきます。
州ごとの強制退去プロセスの違い
アメリカでは、不動産に関する法律が州ごとに定められているため、強制退去のプロセスも統一的ではありません。
たとえば、カリフォルニア州はテナント保護が強く手続きが厳しい州として知られる一方、テキサス州は比較的オーナーに有利な法律が整備されています。
この違いは、以下の3つの主要な要素に影響を与えることになります。
- 退去通知の要件
テナントに退去を求める通知をどのように送るべきか、またその期間がどの程度であるべきか。
- 裁判所での手続き
裁判所での手続きが必要な場合、そのスピードや必要書類、審理の流れ。
- 実際の強制執行
裁判所が退去命令を下した後、保安官や執行官がテナントを退去させるプロセス。
これらの要素を踏まえ、具体例で比較してみましょう。
カリフォルニア州:テナント保護が強い州
カリフォルニア州では、強制退去のプロセスが非常に厳格です。
州全体でテナント保護規制が強化されており、オーナーがテナントを退去させるまでに多くのステップを踏む必要があります。
たとえば、以下のような特徴があります。
退去通知期間が長い
- 家賃滞納の場合、まず3日間の「支払いまたは退去通知」(Pay or Quit Notice)を送ります。
- 1年以上住んでいるテナントの場合は、退去通知の期間が30日から60日以上になることもあります。
裁判所での手続きが複雑
- 不法占拠訴訟(Unlawful Detainer)を提起する必要があります。
- テナントが反論する権利を持っており、これにより手続きが数週間から数か月延びることがあります。
実際の強制執行までに時間がかかる
- 裁判所が退去命令を出した後でも、保安官が執行するまでにさらに時間がかかる場合があります。
- 実際の退去執行には数週間から数か月を要することがあります。
こうした要件は、テナントを保護する一方で、オーナーにとっては負担が大きいプロセスとなります。
テキサス州:オーナーに有利な州
一方で、テキサス州はカリフォルニア州とは対照的に、強制退去プロセスが簡素でスピーディです。
オーナーにとっての負担が軽減されており、迅速な対応が可能です。
具体的には、以下の特徴があります。
退去通知期間が短い
- 家賃滞納の場合、3日間の「支払いまたは退去通知」が必要です。
- 一部の地域では、通知期間が1日程度で済むケースもあります。
裁判所でのプロセスが簡略化
- 裁判所に提訴した後、通常1週間以内に審理が行われます。
- テナントが反論しない場合、判決が即座に下されることが多いです。
強制執行が迅速
- 裁判所の退去命令が出ると、保安官が迅速に執行を行います。
- 通常、1週間以内にテナントを退去させることが可能です。
かくして、テキサス州では、オーナーがスムーズに物件を取り戻せる仕組みが整っています。

州ごとのプロセスを比較するポイント
このように、カリフォルニア州とテキサス州を比較するだけでも、手続きの違いが明らかです。
その他の州についても、それぞれの特徴を知ることで、オーナーとしての戦略を立てやすくなります。
たとえば
- ニューヨーク州: カリフォルニア州と同様、テナント保護が強い州。手続きには数か月を要することが一般的。
- フロリダ州: テキサス州に近いが、一部地域では退去通知期間が若干長い。
- アリゾナ州: 通知期間や裁判所でのプロセスが迅速。オーナーにとって管理がしやすい州。
等、それぞれの州で違いが出てきます。
強制退去プロセスをスムーズに進めるコツ
どの州であっても、強制退去のプロセスをスムーズに進めるためには、以下のポイントが大切なのは変わりません。
テナントとのコミュニケーションを重視
- 初期段階でテナントと話し合い、家賃の支払い計画を提案するなど、裁判を回避する努力をする。
法的要件を正確に把握
- 州ごとの通知期間や提出書類を確認し、間違いのない手続きを進める。
専門家の助言を受ける
- 弁護士や不動産コンサルタントに相談し、手続きの進め方をアドバイスしてもらう。
必要書類を事前に準備
- 賃貸契約書や支払い記録、通知のコピーなど、裁判所に提出するための資料を整えておく。
。。。
州ごとに異なる強制退去のプロセスは、オーナーにとってやっかいなものです。
特にカリフォルニア州のように手続きが厳しい州では、計画的に対応することが重要ですし、テキサス州のように手続きが簡略な州でも適切な準備が必要です。
いずれにせよ、オーナーとしての冷静な判断と正確な手続きがどの州でも共通して言えるのは間違いありません。
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