こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
米国の住宅市場はかつてないほどのコスト負担率に直面しています。
「コスト負担率」とは、家計の収入に対して住宅費用が占める割合のことで、30%以上であれば「負担が大きい(コストバーデン)」、50%以上であれば「極めて負担が大きい(シビアバーデン)」と定義されています。
そして2023年、米国では4,290万世帯が住宅コスト負担率30%以上に達し、過去最高を記録しました。
これはパンデミック以前から続く住宅コスト上昇の加速により、さらに85万世帯が新たにコスト負担を抱える結果となったものです。
特に深刻なのは、50%以上の住宅コストを支出している「極めて負担が大きい」世帯が2,150万世帯に達した点です。
この数字はすべての住宅世帯の約16%を占め、パンデミック以前の数字から急激に増加しています。
このことは住宅市場における経済的不安定性を如実に表しており、所得層を問わず、多くの家庭が住宅コストの増加に対応できていないことを示唆しています。
特に、中所得層以下の家庭で顕著な影響が見られるのです。
所有者と借家人の負担率
住宅所有者(Homeowners)
2023年には住宅所有者のうち24%がコスト負担を抱え、その数は2,030万世帯に上ります。
これは2019年以降360万世帯の増加を示しており、中でも年収30,000ドル未満の低所得層が最も影響を受けています。
低所得層では住宅関連費用が平均26%増加しており、これは保険料や固定資産税の上昇が主要因とされています。
また、高齢者の退職に伴う収入減も負担率の増加に寄与しています。一方で、住宅所有者の中央値収入が16%増加しているにもかかわらず、住宅関連費用の上昇率には追いついていません。
借家人(Renters)
借家人の負担率も過去最高を更新し、全体の50%に当たる2,260万世帯が30%以上の負担を抱えています。
年収30,000ドル未満の賃貸世帯ではその割合がさらに高く、83%がコスト負担を経験している状況です。
これには家賃の急騰が影響しています。
2019年以降、家賃は29%増加し、2023年には月間中央値が1,403ドルに達しました。
賃貸世帯の中央値収入は同期間で19%の増加にとどまっており、家計の負担が増大していることが分かります。
所得層別の住宅コスト負担率
低所得層の住宅所有者
年収30,000ドル未満の住宅所有者では、負担率が74%に達しました。
この層では2019年以降、住宅関連費用が26%増加しており、これは他の収入層(10~13%の増加)を大きく上回る数字です。
これにより、住宅所有者全体の負担率の増加が押し上げられており、特に低所得層が住宅市場の変化に対応するのが困難であることが浮き彫りになっています。
中所得層の借家人
年収30,000~44,999ドルの借家人では、なんと負担率が70%にまで達しました。
これは前年比で1.9ポイントの増加で、2019年以降では3.5ポイント増加しています。
また、年収45,000~74,999ドルの層でも負担率が45%に達し、パンデミック以前と比較して7.7ポイント増加しています。
この層の借家人は、もはや「中間層」として安定しているとは言えない状況にあるわけです。
人種間格差と負担率
住宅コスト負担には人種間格差も顕著に表れています。
住宅所有者の負担率
- 黒人世帯:31%
- ヒスパニック世帯:29%
- アジア系世帯:26%
- 白人世帯:22%
借家人の負担率
- 黒人世帯:57%
- ヒスパニック世帯:53%
- 白人世帯:46%
特に黒人やヒスパニック系の世帯で負担率が高いことは、長年にわたる所得格差や、住宅市場での不平等な条件が影響していると考えられます。
住宅コスト上昇の背景と影響

パンデミック後の住宅コスト上昇
住宅所有者の月間コストは2019年以降18%増加し、2023年には1,327ドルの中央値に達しました。
モーゲージを持たない住宅所有者の費用も、保険料や固定資産税の増加により28%上昇しています。
ここまでくると、政府の役割に今後の負担は大きく左右されることになります。
住宅コストの急上昇は、所得層や人種による格差をさらに広げる可能性があるからです。
そこで求めらえる対応としては
- 住宅費用支援の強化:低所得層や中所得層への住宅補助金や税制優遇措置を拡充する必要
- 住宅供給の増加:新築住宅の建設を促進し、供給不足による価格高騰を抑えること
あたりでしょうか。
。。。
かくして、2023年のデータは米国住宅市場における新たな課題を浮き彫りにしました。
住宅コストの負担率が記録的水準に達し、特に低所得層、中所得層、そして人種的マイノリティに深刻な影響を与えています。
政策的な支援と市場の安定化を同時に進めることで、住宅市場の安定と家計の負担軽減を図ることが2025年の最優先事項かもしれません。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。