昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨年の暮れに、持ち家と賃貸の格差について論じる記事がCNNに出ていました。
アメリカでは、持ち家が資産形成の大きな鍵を握っています。
インフレ基調の国では物件価値もインフレに間接的に比例して上昇していくため、デフレ基調の国と比較するとはるかに有利です。
2022年のデータによると、持ち家を持つ人の純資産の中央値は40万ドルに達し、一方で賃貸住まいの人のそれはなんと10,400ドルにとどまっています。
この約40倍という格差は、持ち家が単なる住まいとしての機能にとどまらず、経済的安定と長期的な資産形成の手段であることを明確に表していると思うのです。
実際のところ、この格差の背景にはアメリカ特有の経済的および政策的な要因が複雑に絡み合っています。
本項では、この持ち家と賃貸の格差の原因、影響、そしてその解決策について、多角的な視点で見ていきましょう。
持ち家が資産を形成する仕組み
持ち家が資産形成に有利となる理由の一つは、住宅ローン返済を通じて蓄積されるエクイティ(自己資本)です。
住宅を購入する際、多くの場合、月々の支払いはローンの返済に充てられます。
この返済額の一部は元本の返済となり、その結果、住宅に対する所有割合が徐々に増加します。
また、住宅価格が時間とともに上昇することで、所有者は自分の支払いのみならずキャピタルゲイン(資産価値の上昇分)からその利を享受することができるのです。
例えば実例として、とあるアメリカ人女性は長年家賃の上昇に苦しんだ末、ワシントン州タコマで住宅を購入しました。
彼女の場合は月々の支払いが家賃より高くなることを受け入れた上で、
「少なくとも自分に投資しているという感覚を持てる」
との理解から、自宅購入に至っています。
このことは事実で、賃貸物件に支払う家賃とは違い、持ち家は単なる支出ではなく未来の自分基金への投資と見なすことができます。
賃貸住まいの現実
その一方で、賃貸住まいの人々は住宅に対する投資の機会を持たないため、資産形成が困難になります。
家賃は持ち家におけるローン返済とは異なり、将来の資産にはつながりません。
いわゆる掛け捨てのようなもので、家賃では支払った分の一部が自分の資産になることはないのです。
また、賃貸住まいの人々は住宅以外の資産、例えば退職金口座や株式などの投資資産を保有している割合が低いことも統計上はっきりしています。
とある研究所の報告によると、持ち家を持つ人の約80%が住宅以外の投資資産を保有しているのに対し、賃貸住まいの人でその割合は48%にとどまるというのです。
この差は賃貸住まいの人々が経済的安定を得にくい理由の一つとして挙げられます。
その因果関係としては、
「そもそも資産構築を進める財源を持てないから、住宅購入もできない」
とも言えなくもないかもしれませんが、いずれにせよ資産形成の差は持ち家のあるなしに反映されることは間違いなさそうです。
持ち家と賃貸の格差を生む政策的要因
実際のところ、アメリカでは政府が持ち家を奨励する政策を多く採用しています。
例えば、住宅ローンの金利や住宅売却益に対する税制優遇措置があります。
これにより、持ち家の人々は経済的な利益を得やすくなっています。
けれども、このような政策は持ち家をすでに持つ人々には有利に働く一方で、新規の購入者や賃貸住まいの人々にとっては不利な状況を生むこともあります。
とある研究者によると、
「現在の政策は既存の持ち家所有者を優遇し、新たに住宅を購入しようとする人々や賃貸住まいの人々にとって障壁を高めている」
と指摘。
これは言い得て妙だと思うのです。
賃貸市場の変化と希望
一方で、最近の賃貸市場には家賃上昇の緩和を示唆する兆しがあります。
2024年には、過去50年で最多となる100万戸以上の集合住宅が市場に投入される予定です。
このような新しい供給の増加は、家賃の値上げを抑制する可能性があります。
例えばZillow.comによると、2024年11月には家賃の値下げが通常よりも多く見られたとのこと。
また、家賃に関する特典を提供する物件の割合も増加しており、予算に余裕のない賃貸住まいの人々にとって一定の救済策となる可能性があります。
そこで持ち家と賃貸の格差を縮小するためには、賃貸住まいの人々に対する支援がより必要なように思われます。
例えば、金融教育を強化し賃貸住まいの人々が資産形成のために投資や退職金口座を利用できるよう、金融教育を提供することもその一つ。
また、現在の住宅所有者向けの税制優遇を見直し、賃貸住まいの人々にも公平な支援を提供することも考えられます。
新しい集合住宅の建設を促進し、家賃の安定化を図る政策を採用することで、賃貸住まいの人々の負担を軽減できるかもしれません。
。。。
いずれにせよ、現在の持ち家と賃貸の間に存在する経済的格差はアメリカ社会における重要な課題の一つです。
持ち家が資産形成において圧倒的な優位性を持つ一方で、賃貸住まいの人々が直面する経済的な困難は無視できません。
この格差を縮小するためには、住宅政策の見直しや賃貸住まいの人々への支援策は必須です。
そして何よりも重要なのは、個々人が自分の経済状況やライフスタイルに合った住まい方を選択できる社会基盤の拡充です。
このあたりは政府政策ではやれることに限界があることも事実で、その上には個々人の金融リテラシーの向上が欠かせないことは論を待ちません。
私(佐藤)自身もできる限りアメリカ不動産を通して人様の資産形成をお手伝いしたいと願う一人ですが、その一方で他人(佐藤のこと)がやれることには限界があるのもまた事実。
それでも、本年一年を通し、少しでも多くの人々の資産形成の一役を担えたらと願うのです。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。