こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
特別企画として、アメリカ投資全般についてお伝えしています。
今日は「バイアティカルセトルメント(Viatical Settlements)」と「ライフセトルメント(Life Settlements)」についてみていきましょう。
これらの仕組みは少し複雑ですが、日本でもあまり知られていないだろう仕組みです。
倫理的な議論も起こる一方で、
「生命保険をかけていたけれども、必要ない。」
「掛け捨てにならないよう、それなりの老後資金として今受け取ろう」
そんな風に考える年配の方々にとっては、それなりに活用する意義があります。
バイアティカルセトルメント(Viatical Settlements)とライフセトルメント(Life Settlements)の違い
まず、両者の基本的な定義を見ていきましょう。
- バイアティカルセトルメント(Viatical Settlements)とは、末期疾患を持つ方が生命保険の契約を売却する仕組みです。対象となるのは、余命が24か月以内の方です。年齢は関係ありません。
- ライフセトルメント(Life Settlements)とは、主に65歳以上の健康状態が比較的良好な方が生命保険契約を売却する仕組みです。余命は2年以上、場合によっては10年以上の人が対象になります。
どちらの場合も、保険契約を第三者に売却し、契約者は死亡給付金の代わりに現金を受け取ることができます。
死亡給付金と現金化の仕組み
ここで、
「死亡給付金は通常、被保険者が亡くなった後に遺族が受け取るものではないのか?」
と思うところですが、その通りです。
生命保険の本来の目的は、被保険者が亡くなった際に指定された受取人(遺族や法人)が死亡給付金を受け取ることです。
けれどもバイアティカルセトルメント(Viatical Settlements)やライフセトルメント(Life Settlements)では、契約者が生存中に保険契約を売却し、受取人を買い手(投資家)に変更することになります。
これにより、契約者は今すぐ現金を得られる代わりに、死亡給付金は投資家の利益になる仕組みです。
投資家の仕組みと収益構造
そして
「投資家は一時金を支払い、保険契約のプレミアム(保険料)も負担しながら」
という部分が気になるところですが、投資家は
- 一時金として契約者に現金を支払い、
- その後、契約を維持するために必要な保険料も負担する。
ことになり、これが投資家の総投資金額に相当します。
例えば、
- 死亡給付金が $1,000,000
- 一時金として $600,000 を支払い、
- 毎年の保険料が $10,000 で、被保険者が5年生存する
と仮定すると、投資家の総投資金額は以下のようになります。
総投資金額=$600,000+($10,000×5) = $650,000
その後、被保険者が亡くなった際に投資家は死亡給付金 $1,000,000 を受け取り、 利益は
$1,000,000 − $650,000 = $350,000
となるわけです。
ということは、被保険者が長生きすると保険料の負担が増え利益が減少することになります。
ここが倫理的な議論の的になるわけです。
セカンダリーマーケットと評価の困難性
そして
「セカンダリーマーケットがないため、公正な評価が難しい」
という問題も気になりますね。
セカンダリーマーケットとは、資産が売買される流通市場のことです。
この市場が存在すれば多くの投資家が参加するため、需要と供給に基づいて価格が透明かつ公正に決まります。
けれどもバイアティカルセトルメント(Viatical Settlements)やライフセトルメント(Life Settlements)には、株式市場のような大規模なセカンダリーマーケットがほとんど存在しません。
そのため、
- 取引価格が主観的になりやすい
- 市場データが不足しているため、適正な価格評価が難しい
という課題が残るのです。
今では一部のファンドやブローカーが取引を仲介しますが、株式市場のような高い透明性は期待できない状況です。
。。。
かくして、バイアティカルセトルメント(Viatical Settlements)とライフセトルメント(Life Settlements)は経済的な支援の趣旨で構築されたとはいえ、前での
「早く死亡してくれた方が投資家の利益になるのでは?」
という倫理的な議論が残るものです。
その構造としてバイアティカルセトルメント(Viatical Settlements)やライフセトルメント(Life Settlements)は、
- 契約者が必要な資金を得るための手段として有効
- 投資家にとっても収益機会を提供
ということにはなりますが、投資家に十分な理解と慎重な判断が求められると思うのです。
明日に続けます。
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